ア行
アシスタンスクラス
基本的に競技車両とは別のアシスタンスルートを走行し、ビバークを巡りながらサポート活動を行う部隊。競技参加者の他は、アシスタンスに登録したメカニックのサポート以外は受けることができないため、チーム体制においてアシスタンスは重要な役割を担っている。なお、以前はエア・メカニックが飛行機を使ってビバークを巡っていたが、2002年より休息日以外のエア・メカニックが禁止となり、現在では廃止されている。
アシスタンスカー&トラック
アシスタンスカーはメカニックやマネージャーなど主に人員の輸送を担当し、アシスタンストラックは大量のスペアパーツやタイヤなどの輸送を担当する。さらに、トラックには発電機やエアコンプレッサーなどが積まれており、ビバークでは砂漠の工場として活躍する。数台のトラックで囲まれたワークスチームのビバークでは光々とライトが照らされ、さながら一夜城の雰囲気である。
アシスタンスルート
競技車が使用するラリールートとは別に、アシスタンス専用として主催者が定めたルートをいう。アシスタンスルートのほとんどは舗装路で結ばれているが、迂回しながらビバークを目指すこともあり、競技車より走行距離が長くなるステージも多い。また、僻地などでは一部、競技車のSSと同じルートを通らなくてはいけない箇所もあり、その際はすべての競技車両がスタートしてから、アシスタンス車両の走行が認められる。この場合、できるだけ早くビバークに到着しようとするアシスタンスカー同士のバトルが繰り広げられる。
ウェイポイント
チェックポイント以外に通過が義務付けられているポイント。危険回避などを目的とした主催者の意図的なコントロールを目的としており、ポイントが近づくとGPSモニターが起動し、目的地の方角と距離が出現する。ポイントには、ウェイポイントマスク(WPM)とウェイポイントセーフティ(WPS)の2種類あり、WPMはポイントまで半径800mに近づくと起動し半径200mに入ると通過、より危険な箇所を避けさせるWPSは半径3kmに近づくと起動し半径90mに入ると通過したことになる。日当り40~50程度のウェイポイントを全て通過しなければならない。
ASO
ダカールラリーの主催者アモリー・スポーツ・オーガニゼーション(Amaury Sport Organisation)の略称。1993年に当時の主催者代表であったジルベール・サビーヌはダカールラリーの権利をアモリーグループに売却するが、当初のパリダカの主催者TSO(Thierry Sabine Organisation)の名称を残したまま活動を続けた。しかし2002年に行われた組織変更でダカールラリーはASO内のモータースポーツ部が担当することになり、2003年よりASOの名のもとに行われている。
SS
スペシャル・ステージの略で、セレクティブ・セクターとも呼ばれる。純粋に速さを競う競技区間で、日々のSSタイムの合計が総合成績の基準となり、これに時間換算されたペナルティが加算され、総合成績となる。もちろん総合成績のタイムが少ない方が順位は上である。
FIA
フェデレーション・インターナショナル・オートモービル(国際自動車連盟)。フランスのパリに本部を置く、自動車連盟の最高機関で、F1やWRCといった競技もFIAの管轄下で行われている。今日では、トラックによる大規模なラリー競技は他にはないため、トラック部門の競技車両規則のみASOが企画・運営を行っている。
カ行
カミオン
CAMION。フランス語でトラックの意。フランス人は町中のトラックもカミオンと呼ぶ。
クイックアシスタンス
SS中に起こった競技車両のトラブルに対応するため、競技クラスにエントリーしサポートを行う車両のこと。トップ争いを繰り広げるワークスチームには機動性の高い四輪車と、様々なスペアパーツを積んだトラックが後方からのサポートを行っている。なお、アシスタンスクラスの車両は、SS中のサポートは認められていないが、競技車両と同じリエゾンを走行する場合はサポートをすることができる。
グラベル
英語で砂利道の意。モータースポーツ用語としては舗装のされていない道のことを指す。
コモンレールシステム
エンジンの構成部品の一つで燃料噴射システムの種類を指す。高圧にされた燃料をコモンレールの中に蓄え、燃料噴射装置(インジェクター)に均一に供給するシステム。燃料の噴射圧力やタイミング、回数などを電子制御によりきめ細かくコントロールできるため、ディーゼルエンジンの燃焼効率を向上させることができる。ダカールラリーでは日野チームスガワラが初めて採用した(当社調べ)。
サ行
CTIS
セントラル・タイヤ・インフレーター・システムの略でタイヤ空気圧調整システム。走行中に車内からの操作でタイヤ空気圧の調整が行える装置。砂丘や土漠などの路面状況にあわせてこまめに調整することで、スタックやパンクといったトラブルを未然に回避することが可能となる。
GPS
グローバル・ポジショニング・システムの略でカーナビと同じ測位システム。衛星からの情報を受信し、正確な現在位置や方位などが確認できる。ダカールラリーではイコールコンディションを目的に、主催者が指定したGPSの使用が義務づけられている。ポイントの通過の記録や速度が記録され、違反した場合はペナルティが課される。もちろんカーナビのような地形表示機能はなく、ナビゲーションにおいては補助的役割しか果たさない。
スタック
砂の抵抗でタイヤを砂にとられて身動きできなくなるアクシデント。要は砂やドロなどに埋まってしまうこと。砂漠を走るダカールラリーでは日常茶飯事の出来事だが、CTISの普及やマシン性能の向上により、以前よりもスタック車両を目にすることは少なくなってきている。
ステージ
ラリーにおける一日の行程のことで、エタップともいう。ダカールラリーのほとんどのステージはリエゾンとSSによって構成されており、最も一般的な例はビバークをスタートし、リエゾンでSSのスタート地点に向かい、SS終了後、リエゾンでビバークに向かうというもの。集落が少ない地域では一日の行程すべてがSSとなる場合もある。
タ行
チェックポイント(CP)
参加車が主催者の指定したルートを走行しているかをチェックするポイント。一つのSSにあたり3~4箇所設置され、場合によってはリエゾンにも設定される。チェックポイントには主催者のスタッフが待ち受け、選手がスタート時に受け取ったカードにスタンプを押してもらう。チェックポイントの不通過は重大なペナルティ対象となるため、チェックポイントを的確に見つけていくナビゲーション能力が重要となってくる。
ディネ
フランス語でディナーのこと。ダカールラリーでのディナータイムは競技者達の安らぎの時間。ワインを片手にプレート一杯に盛られた食事に舌鼓をうちつつ、仲間達とその日の出来事を振り返る選手達で、簡易の食堂はすぐに一杯になる。メニューは酢の物の前菜、肉類のメインディッシュ、パン、熱々のスープ、チーズにデザート、さらにワイン、ビール、コーラなどのドリンク類がついた炊き出しだ。
ナ行
ニュートラルゾーン
1ステージのSSが分割された構成となっている場合、SSとSSの間の区間を指す。ニュートラルゾーンの走行中はタイム計測をせずにリエゾンと同じ条件化で走行するが、与えられた持ち時間が少ないため立ち止まってサポートを受けることはできない。
ハ行
パルクフェルメ
主催者の管理下で競技車両を一時的に保管すること、またはその場所。パルクフェルメに保管された車両には、選手、メカニックともに一切触れることができず、競技車両規則に違反していないか抜き打ちのチェックが行われる。
ピスト
フランス語でわだちの意。英語ではTRACK。わだちから外れて道なき道を行く場合はオフピストという。
ビバーク
ラリー参加者が集うキャンプ地のこと。ダカールラリーの1日の行程はビバークに始まり、ビバークに終わる。ビバークには競技者やメカニック、チームスタッフのほか、主催者やメディカル、プレス関係者などなど、総勢4000人近い関係者が集い、一夜にしてダカールラリー村が出現する。関係者に食事を提供するケータリングチームが同行するのはもちろんのこと、ゴミ収集専門のスタッフもいるほどだ。競技参加者以外の主催者役員やプレス関係者は航空機、ヘリコプターでビバーク間を移動しているため、ビバークはおおむね飛行場やその付近に設置される。
ブッシュ
英語で低い茂みの意。南米の乾燥地帯に生い茂るブッシュは硬くトゲがあることが多い。半砂漠状態の荒野によく生えているブッシュはキャメルグラスという
フェシュフェシュ
パウダー状の細かい砂が堆積した地面を指す英語。南米大陸ではいたるところに出現し、前走者が撒き散らした砂埃の中では視程はほぼゼロメートルになる。フェシュフェシュをまとったまま車両が水溜りに突っ込むと、細かい砂が水と共に車両の細かい場所へ入り込んで固まり、故障の原因にもなりうる。
ブリーフィング
主催者が参加者に向けて情報を伝える場で、翌日のステージの注意事項や変更点、スケジュールなどが毎晩のブリーフィングで選手に伝えられる。通常、ビバークでは毎晩9時に行われ、インフォメーションはフランス語とスペイン語と英語。
ペナルティ
競技規則において様々なペナルティが定められており、時間換算されたペナルティが競技時間(SSの純粋なタイム)に加算される。重いものは罰金や失格となる。例えばチェックポイントの不通過は数時間のペナルティが課せられる。
ポディウム
英語で表彰台の意。ダカールラリーで最も盛り上がるフィナーレイベントで入賞者のほかに、完走した選手も表彰台にあがり讃えられる。ポディウムを迎えるまでは正式には完走したことにはならず、移動途中に止まってした場合はリタイアとなる。全選手がポディウムを通過するには十数時間かかるものの、熱狂的な南米のファンはポディウムの傍らで、選手とともに感動をわかちあい続ける。
マ行
マラソンステージ
連続する2ステージの間のビバーク地で、アシスタンス車両のサポートが受けられないステージ。物量作戦が可能なワークスチームとプライベーターとの格差をなくすためにとられた手法だが、競技部門に参加しているチームメイトの車両からのサポートは受けることができるため、よりワークスチームが有利になっている。そのため、2005年大会にはスーパーマラソンステージが実施され、ビバークに着いた車両は即座にパルクフェルメに保管された。
ラ行
リエゾン
移動区間のこと。安全上の問題で、すべての場所でタイムトライアルが可能ではないため、ビバークからSSスタート地点まで、またはSSゴールからビバークなどがリエゾンとなる。比較的ゆるやかなタイム設定がなされているが、指定された時間内に到着しないとペナルティの対象となる。
ループステージ
1つのビバークを拠点として行われるステージのこと。ループステージの場合、スタート後に同じビバークに戻ってくるので、チェックポイント不通過のペナルティは必然的に多くなる。アシスタンスにとっては移動がないため、つかの間の休養となる。
ロードブック
一日の行程が記されたルート指示書で、コマ図と呼ばれる簡略な標記で綴られている。競技参加者は主催者によって指定されたルートを走行することが義務づけられており、ロードブックを参考にルートをトレースしていかなくてはならない。といってもロードブックによる指示は区間距離と目標物のみのため、的確にルートをトレースしていくには、ある程度の経験が必要となる。ダカールラリーの場合、ナビゲーション能力も重要なウエイトを占めている。