技術者インタビュー Vol.02
「世界へ羽ばたく『カッコいい』保全マンを育てる」
小出は、日野工場の設備の保全をつかさどる保全現場の監督者として、若い後進たちの指導に当たっている。保全とは、壊れた設備を修理するだけでは無く、壊れない様にすること。多くの若者たちが彼の指導の下、保全を学び、各工場へと巣立っていく。彼は、2017年秋の褒章で、黄綬褒章*を受章した。この受章こそが彼の実直で真摯な人柄を物語っているといえよう。1990年、「仲間の仕事を少しでも楽にできたら」と自ら設計製造した自動組立装置は、人にやさしい作業改善の一例として科学技術長官賞を受賞。その後も創意工夫功労者表彰、卓越した技能者表彰など、数々の栄誉に輝き、昨年の黄綬褒章受章の下地となったのである。
小出は東京生まれ。日野市で小学生から高校生まで育った地元の人間。幼少のころから車が好きだったという。自分の街の有名企業でしかもクルマ関連の仕事ができる、という理由で日野自動車に入社した。もともと、機械好きだった彼は、高校でも機械科を専攻、そして入社後、機械修理部に配属されたことは、「大きな縁を感じている」と語る。入社以来メンテナンスの仕事に携わり、難しく考えないでひらめきを大切にと、自分の仕事に自信を持って取り組んできた。世の中の流れ、技術革新に追いついていくためには日々勉強と、ポジティブに仕事と向き合ってきた。中でも大切にしているのは、「アイデア」である。普段から身の回りの物をよく見て、ヒントを得て、ひらめいたらすぐにメモをとる。そんな日常の積み重ねが数々の技術向上の改善成果を上げる原動力となっている。「ありがとう」「助かったよ」と生産現場の仲間から声がかかることは、彼にとって大きな喜びであり、そんな周りから頼られ期待される仕事についていることが何よりもうれしいという。
これまでの数々の受賞について、小出は、「何か賞をいただくたびに、職場で次の新しいステップアップへ挑むチャンスをいただける。それが受賞してうれしいこと」と語る。その新たなステージでの切磋琢磨にこれまでにない達成感を感じるようだ。彼は、2004年から保全現場の監督者となり、後進の指導に当たってきたが、若者たちに教える時のキーワードとして「カッコいい保全マンの9つの力」ということを説いている。9つの力とは、実力、能力、実行力、創造力、努力、活力、 包容力、精神力、体力。これらを少しずつ修得し、磨き、バランスの取れた頼れる人間となること、それが「カッコいい」ということだと教えている。彼のもとで学び巣立っていった一期生が今年、講師として保全現場に手伝いに来ている。こうした教え子の成長を目の当たりにすることも楽しみの一つだ。そして、教え子たちが世界へと飛び出していき、彼が培ってきた「最大限の努力と技術を惜しまない」という想いを世界中に届けたいと願う。
最後に世界のお客様への思いと今後の目標を聞いた。「世界中で日野車をご愛用いただいているお客様とは、日野車を通じて私自身とつながっている。世界中のお客様やチーム日野の仲間のみなさんと共に、毎日笑顔で頑張りたい」といい、「今は日本で仕事を行っていますが、私も将来は世界へ飛び出したいと考えています。縁があり、出会えた時には、よろしくお願いします」とほほ笑む。世界中の人々の笑顔と満足のために、小出の熱いチャレンジは続く。
<注記>
*黄綬褒章は、長年、人の模範となる働きをした人々に贈られる褒章。農業、商業、工業等の業務に精励し、技術や事績を有する方を対象に、国が表彰している。

小出 義雄
日野自動車 日野工場製造部
工場管理室 教育グループ
上級技範
車好きだった幼少期の
貴重なスナップ
黄綬褒章の受章式の様子(上)と
授与された賞状と勲章