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TCFD 提言に基づく情報開示

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD; Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、気候変動に関わる金融市場の不安定化リスクの低減を目的に、G20の要請で金融安定理事会により2015年に設立されたタスクフォースで、気候変動がもたらすリスクおよび機会について企業等が把握、開示することを推奨する提言を2017年6月に発表しました。
TCFD提言では、気候変動に関する「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の各項目に関しての情報開示が求められています。日野は、TCFDのガイドラインに基づき、シナリオ分析を行い、事業活動に与えるリスクと機会を抽出し、気候変動におけるリスクと機会への取り組みを以下の通り開示すると共に、今後も継続的に開示内容の充実を図ってまいります。

ガバナンス

日野は、気候変動を含む環境課題解決を経営の最重要課題の一つに位置付けています。
部門横断的組織として、社長を委員長とする「日野環境委員会」を年4回開催し、中長期の環境方針と短期の実行計画について審議・報告を行い、企業経営へ反映しております。また「日野環境委員会」の内容・結果は、取締役会、経営会議等に報告しています。

<日野の環境経営体系>

日野地球環境憲章

事業活動を通じた地球環境保全に関する基本的な考え方を策定し、関係会社を含め共有しています。

日野環境チャレンジ2050

長期の環境ビジョンとして「環境負荷最小化への取り組み」を宣言しました。
深刻化する地球温暖化、水不足、資源枯渇、自然破壊などの様々な地球環境問題に対し、日野グループが成し遂げるべき6つのチャレンジを掲げました。

日野環境マイルストーン2030

長期ビジョン「日野環境チャレンジ2050」の実現に向け、重点取組課題として掲げた6つのチャレンジにおける中期目標として2030年までの中間マイルストーンを設定し、取り組んでいます。

2025年環境取り組みプラン

上記の長期ビジョン・中期目標を具現化するための5ヵ年毎のアクションプランを策定し、毎年のPDCAを回しながら、環境課題解決に取り組んでいます。

戦略

日野は、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)などが公表した外部シナリオを考慮し、気温上昇が「4℃(注1)」、「2℃未満(注2)」の2つのシナリオを検討し、影響分析を実施しました。

(注1)4℃シナリオ:産業革命前と比べて4℃前後上昇するシナリオ
(注2)2℃未満シナリオ:産業革命前に比べて21世紀末に世界平均気温の上昇幅が2℃未満に抑えられるシナリオ

その結果、「4℃シナリオ」では異常気象が常態化し、干ばつや洪水など日野の事業活動に影響を及ぼす物理リスクが増大すると想定しております。
一方、「2℃未満シナリオ」においては先進国を中心とした積極的な対策(例:燃費・排ガス規制、車両電動化規制の強化等)により脱炭素社会が進展し、車両電動化を中心とした環境対応車の拡大を想定しております。「2℃未満シナリオ」では主に移行リスクおよび機会への対応が必要と考えています。

【4℃シナリオの世界観】
【4℃シナリオの世界観】
【2℃未満シナリオの世界観】
【2℃未満シナリオの世界観】

上記シナリオにおける日野事業へのリスクおよび機会を特定し、インパクトを分析すると共に対応策を検討した内容は以下のとおりです。

【物理リスク】気候変動による災害など物理的影響に関連するリスク

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分類 主なリスク 主な機会 対策 上:影響度
下:時間軸

物理的

自然災害の増大等のリスク・機会

・大規模災害・渇水による事業継続リスク
(事業所被災、サプライチェーン分断等)
・大規模災害への対応コスト増
・異常気象を想定した更なるBCP強化
(事業所間連携強化、過去災害を踏まえた対策検討 等)
・災害対応車両の供給、被災車両の復旧

長期

【移行リスク・機会】脱炭素社会への移行に伴い発生するリスクと機会

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分類 項目 主なリスク 主な機会 対策 上:影響度
下:時間軸

移行

脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会

政策・
法規制
・燃費・排出ガス・電動化規制対応の開発コスト増加による台当たり収益性低下
・市場の電動化低ニーズによる投資回収遅れ
・燃費向上、規制対応製品の投入による販売機会獲得 ・各国規制/インフラ動向に応じた電動車戦略
・市場動向を踏まえた選択と集中
・同業・異業の仲間づくり

短~中期
・(車両電動化への移行に伴う)内燃機関車両の比率縮小による販売減少 ・環境対応車投入による販売機会獲得
*電動車、カーボンニュートラル燃料車
注)カーボンニュートラル燃料活用の内燃機関車両
・各国エネルギーコスト・政策に応じた最適製品開発
(多様なパワートレインへの対応)
例:電動車、カーボンニュートラル燃料車、水素エンジン車等

短~中期
・カーボンプライシング導入による収益減少(納税額増加)
・部品コストの増加(炭素税の仕入価格への転嫁)
・CO2削減進展による納税額縮小、および省エネ推進によるエネルギー費削減
(日野環境マイルストーン2030の推進)
・炭素排出削減目標の設定
・CO2削減効果の見える化
・削減不足分について取引検討

短~中期
・グリーンエネルギー使用コストの増加 ・カーボンニュートラル実現に向けた省エネ化・再生可能エネルギー導入
・省エネ活動の推進によるエネルギーコスト低減

短~中期
評判 ・気候変動対応の情報開示不足からステークホルダーに選ばれなくなるリスク ・再生可能エネルギー導入等によるコスト低減と企業イメージ向上 ・再生可能エネルギーの導入拡大
・省エネ活動の更なる推進
・気候変動課題への取り組みの適切な開示
・各種国際環境イニシアチブへの参画

長期
走行
エネルギー
・燃料多様性への開発コスト増
(軽油、電力、水素、新たな内燃機関燃料)
・コスト高による新エネルギー普及遅れ
・燃費向上、環境対応車投入による販売機会獲得
・既存の内燃機関技術の活用
・各国エネルギーコスト・政策に応じた最適製品開発
(多様なパワートレインへの対応)
例:電動車、カーボンニュートラル燃料車、水素エンジン車等

長期
技術 ・電動化部品のコスト増加と必要数確保
・環境対応車の開発遅れによる販売減少
・継続的な原価低減(含む、開発の効率化)
・お客様ニーズに合わせた環境対応車の開発

短~中期
製品と
サービス

長期
・異業種からの市場参入による販売減少 ・環境課題解決の新ビジネスによる収益増加
(CUBE-LINX、Next Logistics Japan)
・新規ビジネスの事業化
長期

シナリオ分析およびリスクと機会を特定した結果は、日野の経営戦略へ反映してまいります。
気候変動に関するリスクや機会は日々大きく変化しております。今後も変化するリスクや機会に柔軟に対応を見直していくとともに、さらなる開示内容の充実に取り組んでまいります。

リスク管理

日野は全社レベルのリスク管理体制として、リスクマネジメント委員会(年2回開催)を設置し、環境を含むリスクの洗い出し・評価・選別・管理を行い、その結果を取締役会、経営会議等へ報告しています。同委員会では全社共通の指標にてリスクアセスメントを定期的に実施しています。
その中で気候変動に関連するリスクについては、上記のシナリオ分析に基づき、日野環境委員会に属する各部会で分析や評価、優先順位付けを行い、長期や短期の対応策を決定し、進捗管理を行います。重要リスクについては定期的に日野環境委員会に報告しています。

指標と目標

日野の環境活動は、長期ビジョン「日野環境チャレンジ2050」にて掲げた6つの重点的なチャレンジ項目を指標とし、全てのチャレンジにおいて環境負荷を最小化することを目標として掲げています。
その実現に向け、「日野環境マイルストーン2030」にてそれぞれのチャレンジ項目における2030年までに達成する中期目標を設定しました。更に5年ごとの「環境取り組みプラン」を策定し、毎年の実行目標へ落とし込み、活動を推進しています。
特にCO2排出量においては「温室効果ガス(GHG)報告ガイドライン」に基づき、報告値および入手可能なデータを用いてScope1、Scope2に加えてScope3(注3)の排出量を算出しています。今後もライフサイクルCO2排出量の管理を強化するとともに、CO2削減活動に取り組んでいきます。

(注3)
Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)  

日野環境チャレンジ2050 6つのチャレンジ目標(グローバル目標)

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日野環境チャレンジ2050 日野環境マイルストーン2030 2025年環境取り組みプラン

ライフサイクルCO2ゼロ
チャレンジ

2013年度比▲25% 2013年度比▲12%
 

新車CO2ゼロ
チャレンジ

2013年度比▲40% 2013年度比▲15%

工場CO2ゼロ
チャレンジ

2013年度比▲40% 2013年度比▲30%

水環境インパクト
最小化チャレンジ

量:地域水リスクを考慮した節水・循環利用
質:水環境保全につながる厳しい自主基準での管理
使う水は少なく、還す水はきれいに
(水使用の無駄を省いた削減)

廃棄物ゼロチャレンジ

2018年度比▲30% 2018年度比▲12%

生物多様性インパクト
最小化チャレンジ

「自然と共生」する工場づくり 「自然と共生」するモデル工場づくり

温室効果ガス/CO2排出量

(単位:万t)

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  2021年度 2022年度 2023年度
Scope1(直接排出) 15.1 13.8 12.1
Scope2(エネルギー起源間接排出) 23.1 11.8 8.9
Scope3(その他間接排出) 4,928 4,827

対象範囲:日野自動車および連結子会社
Scope3(その他間接排出)2021年度実績は開示準備中

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