PROJECT
プロジェクトストーリー①

HINO DUTRO Z EV

これからに必要な、
これまでにないクルマを“みんな”で

e-コマースが発展して便利になる一方、高齢化が進み、働き方も多様化される中で、物流業界はドライバー不足に直面しています。そんな課題を解決するために開発されたのが、日野自動車で初となる国産の量産EV(電動車)「日野デュトロ Z EV」です。運転席から荷室への移動をスムーズにし、超低床でワンステップでの積み下ろしを可能にするなど、ドライバーの方の作業性を抜本的に改善。あらゆる人が扱いやすい「優しいトラック」を実現させ、同時に電動化によってカーボンニュートラルへも導きます。
そのように、物流事業者様の困りごととカーボンニュートラルを高次元で解決する日野デュトロ Z EVの開発は、お手本となるものがなく、すべての工程が手探り状態のプロジェクトでした。そこで現れた多くの困難は、あるコンセプトを核としてチームワークを発揮することで乗り越えられたといいます。そんな挑戦を各部署で活躍した5名の社員の会話から紐解きます。

K.T
プロダクト推進部
1993年入社
Y.A
車両計画生技部
2005年入社
K.S
第2国内営業部
2014年入社
M.O
シャシ開発部
2014年入社
N.U
電動パワートレーンシステム開発部
2018年入社
STORY 01
社会とお客様のお役に立ちたい
K.T
日野デュトロ Z EVの開発は、2019年に当時BREV開発推進室が発足したところからスタートしています。我々が目指したのはグローバルな課題であるカーボンニュートラルの実現に近づけることとともに、お客様の困りごとを解決できるトラックを開発することです。メンバー全員、この想いを一つにしてこれまで進んできました。
M.O
日野自動車初の量産EVとして、単に電動化をするだけでなくて、お客様がどのようにトラックを使用されているかなどを見て、どうすれば課題を解決できるのかを考えながらつくったことが大きな特徴ですよね。
K.S
私は、もともと世の中に大きな影響を与えられるような仕事がしたいと考えて入社しました。ですから、営業として本プロジェクトに参加できることになった時は嬉しかったですよ。環境にいいEVでありながら、低床で乗り降りしやすく、普通免許で運転可能なところがドライバー不足解消にもつながる。ワクワクとした感情になったことを覚えています。
N.U
私は中途で入社をした後、日野デュトロ Z EVの前身となるクルマの開発から携わり、システム制御の設計をしてきました。その頃から「EVを量産したい」という夢を持ってみんなで進んでおり、中には量産がはじまる前に定年退職になられた方たちもいたんです。そのため、プロジェクトとして実現できると決まった時は、その方たちの分も頑張りたいという気持ちになりましたね。
Y.A
それは、気合いが入りますね。一方で、量産化に対して感じていた難しさなどはなかったのでしょうか?
N.U
量産がはじまる前に行っていたEVの開発はあくまでも個別のお客様向けだったので、しっかりと摺り合わせができていれば問題ありませんでした。ですが、不特定多数のお客様に使用される量産車となると、様々な外部影響に対する強さ「ロバスト性」を上げる必要があり、そこは難しいと感じました。
STORY 02
同じ方向を向くことの大切さ
K.T
今、N.Uさんが言ったことに加えて、「普通免許で運転ができる」「遠隔でデータを見ることができる」といったことも新しい取り組みでしたし、何より“お手本がない”ことが一番難しいポイントだったのではないかと思っています。
M.O
確かにそうですね。規模がかなり大きいプロジェクトですから、私もみなさんと同じようにワクワクする気持ちで取り組みました。しかし、運転席から後ろの荷室にそのまま行ける「ウォークスルー」構造と、かつワンステップで荷室へ乗り降りできる「超低床」構造のクルマははじめての設計だったのでとても苦労しました。これまでのトラックにはあまりなかった仕様でしたから。ですが、今回は「お客様の困りごとを解決する」という明確なコンセプトが決まっていたので、困難があったとしてもモチベーションはずっと高く保てていました。
K.T
開発の部分で苦労は多かったと思いますが、M.Oさんが言うように今回は最初にコンセプトを決め、それをみんなと共有、共感できていたことがすごくプラスに働いたと考えています。
Y.A
私は、いかに安全で効率よく組み立てられるのか、車両組立工程計画の実施を担当しました。発売までの時間も限られていたので、はじめての仕様が多くある中で色々な決断を早くしなければならない場面が多々あったのですが、いつも以上にみんなで集まって共有をしながら進めることができました。その甲斐もあって、かつてないスピードで完成させることができ、自分自身も大きく成長させることができたと思います。
N.U
開発期間はコロナ禍だったんですよね。そのため、オンラインで現物をきちんと確認できるような仕組みをつくったり、新たな取り組みが生まれたことも大きな収穫だったと思います。本当に全員が協力してあらゆることにチャレンジできたプロジェクトでした。
K.T
開始時は人的なリソースも非常に少なく、正直大変なことが多かったです。しかし、みなさんをはじめとしたメンバーの協力があり、経営陣もしっかり応援してくれていたので、迷わずに進むことができました。
STORY 03
一人ひとりが、チームのために
K.S
みなさんはこのプロジェクトで、どんなことが一番思い出深かったですか?
Y.A
私は、ブレーキシステムの変更ですね。それまでは特に大きなやり直しはなく、「順調だな」と思っていたところで、ブレーキシステムのメーカーさんから諸事情で撤退すると言われてしまい…。普通なら諦めてしまいそうなところでしたが、みんなが同じ方向を向いて自発的にやるべきことをやってくれたので、最小限の遅れで食い止めることができました。
K.T
全体を統括していた私も、あの時は大幅に日程が遅れてしまうのではと諦めかけていたのですが、みなさんの動きは素晴らしく、短期間で挽回できました。全員でクルマをつくっている雰囲気が強まり、チームとしてより強固にまとまれた瞬間だったと思います。
N.U
チームの力はかなり強まりましたよね。私は、これまでにないクルマだったため、評価の基準をつくるところがとにかく大変でした。品質に関わる部分でしたし、プレッシャーも感じましたが、積極的に他部門の方と会話をするなど協力できたことで切り拓くことができました。
M.O
それもチームの力ですよね。私も低床というコンセプトを実現させるのに、試作担当の方や生産工場の方と本当によく会話をさせてもらいました。やはり試験車製作段階では予期せぬ問題が発生しますが、どこに原因があるんだ、どう対策すればいいんだ、と一緒になって取り組めたことで無事に解決することができました。
K.S
つくるフェーズでは様々な困難があったんですね。一方で、できあがってからは販売のほうも苦労は多かったです。初の量産EVでしたので、すべてのお客様に対して100点というわけではありません。EVならではの販売、アフターサービス対応課題が多くありましたが、お客様、販売会社、リース会社と何度も会話をし、「あたらしい」形をつくるのには大変時間がかかりました。ですが、粘り強くメリットを説明することで、大手のお客様から500台程のご注文をいただけた時は、嬉しかったですよ。
K.T
みなさんが言うように、「ないものをつくった」ということが総じて大変でしたよね。でも、結論としては、「お客様のために」という方向が一致し、チーム全員が協力すれば、どんなに難しいことも乗り越えられることを実感しました。そして、このプロジェクトで本当にたくさんの人が成長できたと思います。
STORY 04
お客様の声から、また次の挑戦を
N.U
私はEVの電子制御を担当しましたが、今回のプロジェクトで得たことは余すことなく次につなげていきたいと思っています。EVの制御ソフトだけでなく、燃料電池車の制御ソフトも含めて共通化、他車への共通使用ができれば、もっと速いスピードで世の中に新しいクルマを提供できるはずですから。そのためにも、この先もみんなでお客様先へ伺って意見を聴くなどしていきたいですね。
M.O
日野はお客様のお声を直接聴けるところが、すごくいいですよね。今回も低床に対して「乗り降りが楽になった」という実際のお声を聴けて嬉しく思いました。そうやって日野デュトロ Z EVを改良しつつ、また新しいクルマづくりにも挑戦してみたいです。
K.S
お二人が言うように、クルマを売るためにはクルマに対する意見が必要ですから、現場の最前線にいる営業としてお客様、市場の声を収集し続け、開発の役に立てるようにしていきたいですね。また、商用車はお客様がビジネスに使うクルマですから、もっとコスト面でも貢献可能な改良ができればなと考えています。
Y.A
いいですね。私は現在、EVの中で最もコストがかかっているバッテリーパックを担当しているのですが、このコストを下げることをミッションに掲げています。品質がいいのは当たり前で、安くていいものをつくり続けることこそが我々の使命だと考え、日々こだわりを持って仕事をしていきたいです。
K.T
みなさん、ありがとうございます。今後も日野デュトロ Z EVをどんどんいいクルマにして、カーボンニュートラル実現までつなげていきたいですね。そして、今回は特に強く意識をした「お客様目線」をどんな時も忘れないでいてほしいです。私たちのイノベーションは、そこからはじまると言っても過言ではありません。常にそう考えながら、新たな挑戦をし続けたいですね。
Y.A
これから入社される方も、ぜひ熱い想いを持って色々なことに挑戦してほしいですよね。きっとそこには、かけがえのない成長があるはずですから。