<インタビュー>現場従業員の声を反映した新ワーキングウエア 社風変革を実感

その他2025年5月15日

日野自動車は、生産関連職場の作業者などが着用するワーキングウエアを19年ぶりにリニューアルし、5月から従業員の着用を始めました。新たなワーキングウエアは着用機会が多い生産現場で働く従業員のアイデアを尊重し制作しました。

現場の意見を重視するこの制作過程は、日野が推進している企業改革を象徴しています。リニューアルプロジェクトのリーダー・第1人事部の細井夏絵さんと同部(当時)の松井佑太さんが制作過程へのこだわりを語りました。

新しいワーキングウエアを着る松井さん

1. より働きやすくするワーキングウエア

新しいワーキングウエアは「人財尊重」の考えを基本とした「労働環境の改善」をコンセプトに制作されました。人と製品を傷つけない設計であることはもちろん、従業員が快適に働けるよう機能的であること、みんなが「着たい」と思える、時代性を考慮したスタイリッシュなデザインであることを目指しました。

――――リニューアルのきっかけは。

約3年前、工場の職場からの要望を人事部が受け本格的にスタートしました。みんなが着たいと思える、かつ、快適に働ける新しいワーキングウエアに変えたいという要望は以前からありました。
2022年のエンジン認証不正問題の公表を機に日野が「3つの改革」を推進し労働環境の改善をより重視するようになったことが後押しし、リニューアルが決まりました。(細井)

2. 現場が主体の検討プロセス

――――リニューアルに向けては、さまざまな拠点・職場から選ばれた約25人がワーキンググループに参加し、約1年半をかけて企画・検討を進めてきました。制作過程において意識したことは。

最もこだわったのは、生産関連職場の意見を尊重し企画することです。
そのために、ワーキンググループの主なメンバーは役職者以外かつ製造現場に近い従業員を各職場の代表として選出しました。

デザイン案を絞り込む検討過程では、上意下達ではなくワーキンググループのメンバーで意思決定しました。さらに、生産現場で働くメンバーが試作品を実際に着用して業務を行ったうえで意見を出し、細かい仕様を決めました。最終選考では全社からの投票でデザインを決定しました。(松井)

――――検討の過程で特に印象に残った出来事は。

議論の様子です。ワーキンググループには若手社員が多数おり、遠慮して発言があまりないのではと思っていましたが、実際は時間が足りないほど多くの意見が飛び交い、年次や職種の垣根なく議論できました。
また、各職場の業務内容により要望に違いがあります。意見が合致しないこともありましたが、反発しあうのではなくそれぞれの意見を尊重し、全社に向けた服を作るという視点のもと全員で折衷案を考えました。
このような展開は今までの日野では予想できませんでした。企業風土の変化を感じました。(松井)

試着したメンバーが「品質や安全に不都合がないか」など自分の業務をイメージしながら検討していた姿も印象的でした。(細井)

ワーキンググループの様子

3. 「作業者の意見が受け入れられた」

ワーキンググループのメンバーは検討の過程を次のように振り返りました。

新田工場 トランスミッション製造部 小野寺靖さん

意見をたくさん出し合い、多くの人が納得するいいものができたと思います。ユニフォームメーカーの方が工場に足を運び、作業者に話を直接聞いてくれたこともあり、第一線で働く人の意見が受け入れられたと感じました。
私は数カ月間、試着して業務を行いました。私たちの仕事はしゃがむことが多いですが、ストレッチ性があり動きやすいので違和感なく動けました。スタイリッシュな見た目は同僚から好評で、「いつ導入されるの?」と多くの人の期待を感じました。

羽村工場 ものづくり支援部 岩本紗蘭さん

ワーキンググループでは、プロジェクトリーダーが明るく引っ張ってくれたので、和気あいあいとしていて意見を出しやすかったです。現場で働く従業員は、ボタン1つ、ファスナー1つでもクルマを傷つけてしまうおそれがあると考えます。そのような細かい仕様に現場で働く人の意見を反映したことは、会社として風土改革の大きなチャレンジをしていると感じました。ボトムアップ型の今回は、私自身もやりがいを持ちながら関わることができました。

日野の代表取締役社長であり人事機能を統括するCHROの小木曽は次のとおり感想を述べました。

CHRO 小木曽聡

今回、日野で働く仲間が協力し合って自主的に実施できたことの意味が大きいと考えています。工場で働く人からオフィスで働く人まで、みんなが一緒になって、身近で大切なワーキングウエアについて検討を続け、素晴らしいものに仕上げてくれました。このような活動が、HINOウェイをもっと深化させていくことにつながっていくのだと思います。
会社としても引き続き、こういったことをどんどんサポート・奨励していきます。

4. 新しいワーキングウエアの特長

機能面では、スポーツウエアの知見を持つパタンナーが監修した3Dパターンを採用し、動きやすさ・働きやすさを向上させました。

デザインは「人間中心設計の機能美」をテーマに、HINOブランドを表す「HINOレッド」を取り入れスタイリッシュなかっこよさを目指しました。

肩まわりから上肢の運動を考慮し
動きやすさを追求したパターン

座る・しゃがむ、脚を曲げる・広げるなど
動きやすい快適仕様

HINOレッド

安全面では、暗い場所での視認性を高めるため反射材を導入しました。反射材の取り付け位置は、ワーキンググループのメンバーが職場での作業姿勢を考慮し提言しました。
また、濃色になったことで汚れが目立ちにくくなります。

暗い場所で光る反射材

日野は現場を重視し、人に寄り添う経営改革を進めてきました。また、人づくりへの積極投資の一環としてワーキングウエアのリニューアルをはじめとする職場環境の改善をしました。今後もこれらの取り組みを継続し、人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献できるよう、努めてまいります。

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