<取り組み紹介>自家用有償トータルサポートで目指す、持続可能な地域交通の実現

新たな領域2024年9月27日

昨今の少子高齢化や人口減少により、特に地方部においては公共交通の維持が困難になるなど、人の移動を取り巻く環境は厳しいものになっています。これに伴い、市町村自治体やNPO団体などが運営主体となり、バスやタクシーなどが運行されていない地域において、自家用車を使用して有償で旅客運送できる制度である自家用有償旅客運送(以下、自家用有償)を導入するケースが増えています。しかし、運営主体においては交通事業に関するノウハウや後継者不足などといった課題に直面しています。
この課題解決に向け日野は、持続可能な地域公共交通を支える新たな取り組みとして、全国初となる 自家用有償旅客運送向けの遠隔による運行管理受託サービスを2023年7月1日に開始するとともに、2024年7月1日より 本サービスの拡充に向けた実証実験も行っています。

今回は、自家用有償における働き方の改善や交通空白地の解消を目指し日野が提供する運行管理受託サービスの取り組みや、連携パートナーとの協業について紹介します。

※ 日野調べ


1.地域主体型交通の運行管理を一括マネジメント(鳥取県鳥取市)


――――運行主体の負荷軽減と持続性の向上を支援

鳥取県鳥取市は、各地区が地域の交通を維持するため、鳥取市の補助支援のもと地域の協議会やNPO団体が運営主体となる自家用有償(共助交通)の取り組みを行っています。
しかし、各地域の運行主体による運行管理は、高齢化や人手不足により、運用や体制の水準も異なっていました。また、鳥取市としても、実際の運行管理に対する状況の把握が十分とは言えず、各地域での運営の継続性に課題を抱えています。
その課題解決に向けた取り組みとして、日野は、鳥取市内の6つの運行主体による共助交通の運行管理を一括でマネジメントしています。一連の運行管理業務を一元化することで、各運行主体における運用や体制の水準を統一し、業務の効率化を図ります。
また、各運行主体との話し合いの中で「共助交通の合理化や効率化に関する助言」についても強く希望があり、日々の運行をもとに、共助交通をより安心・安全でご利用いただくためのドライバー講習や運営主体への助言といった支援も行います。

NPO法人 OMU 理事長 高橋様

ふるさとバスは2009年より運行を開始し、今年で15年目を迎えています。鳥取市内では初の住民共助型での交通として立ち上げ、ノウハウがない中で市職員の皆さんと苦労しながら運営を継続してきました。交通を運営するにあたっては、さまざまな法律や規則で定められた業務を行う必要がありましたが、市内に先例がない中、手探りで実施しています。このような状況で日野さんに運行管理を担っていただき、確実に法定業務を実施してくれ、日々の運営の相談相手になっていただけることは、運営する立場として大きな安心に繋がっています。6団体の運行管理を一括して請け負っていただくことで、他の団体の運営状況も今まで以上に共有でき、今後新しく市内で交通を立ち上げたい地域があれば、こうした取り組みはその一助になると思っています。

鳥取市 交通政策課 課長 宮谷様

市内複数の地区で、地域の交通を維持するため、NPO 団体やまちづくり協議会などの地域団体が運行主体となり、共助交通の運行が行われています。本市は、共助交通の運営サポートとして、運行経費の補助や運行にあたっての助言などを実施していますが、どの運行主体も高齢化や地域の担い手不足から、運転手確保や運行管理に関する事務負担が課題となっており、将来に渡りどう地域の交通を維持していくか検討する必要がありました。
このような状況の中、運行管理のノウハウを持ったプロの事業者が、6団体の運行管理を一括してマネジメントし、適切な運行にあたって助言をいただけることは、運行管理の水準を確保できるだけでなく、運行主体の負担軽減、安心にもつながっています。これからも地域・事業者・行政が連携して、地域に根差した共助交通の維持・充実に取り組んでいきたいと思います。

2. デマンド型乗合交通の運行協力体制を構築(兵庫県朝来市)

――――タクシー事業との共存・共栄をサポート

兵庫県朝来市では、コミュニティバスである「アコバス※1」を運行していましたが、利用者の減少や運行時間の不便さといった理由から、市内の各地域においてデマンド型乗合交通「あさGO※2」の試験運行を経て本格運行へ移行する流れとなっています。
移行に先駆けて、生野地区では2024年10月から開始される本格運行に向け、同年4月から試験運行を実施しており、運営主体である朝来市より運行の委託を受けているのが生野タクシーです。
生野タクシーは、1名でタクシー事業を担っており、今回の移行に伴い自家用有償専任の住民ドライバーを雇用しています。しかし、タクシー事業と同時にデマンド型乗合交通の運行管理を1名で行うことは、リソースの不足だけではなく、住民ドライバーに対するオペレーションに課題を抱えていました。
そこで、生野タクシーのデマンド型乗合交通における運行管理を日野が行うことで、タクシー事業とデマンド型乗合交通の運行を両立できるようサポートしています。また、日野が相談相手となることで不安を軽減し、より安心・安全な運行に寄与するとともに、継続的な運行支援により地域の交通サービスを強化していきます。

※1 朝来市で運行されているコミュニティバスのサービス名称

※2 自宅から朝来市内にあらかじめ設定された地点への運行を行う


朝来市 総合政策課 副課長 足立様

2024年4月より、デマンド型乗合交通「あさGO」を市内全域に順次導入します。生野エリアの運行開始にあたっては、住民ドライバーが参画することで地域のタクシー事業者様に所属しながらリソースを確保する方針でした。一方で、「タクシー事業者様がタクシー事業と住民ドライバーの両方を管理することはリソース不足にならないだろうか?」との不安もあり、タクシー事業者様の本業と自家用有償によるデマンド型乗合交通のバランスをどのようにとるかといった課題がありました。日野さんに運行管理を支援いただくことで双方の事業を成り立たせることができました。

3. 大臣認定講習における登録講師の出張対応(トライアル提供中)

――――自家用有償への従事を後押し

自家用有償は、普通自動車第二種運転免許を所持していること、または普通自動車第一種運転免許の所持および国土交通大臣が認定する講習を修了していることでドライバーとして従事することが可能です。
しかし、大臣認定講習は全国の教習所等で実施されているものの、予約枠が限られていることや近隣に受講場所が少ないこと、日程が合わないといった理由から講習自体を受けられず、ドライバーとしての従事が遅れてしまうことがあります。 このような状況に対し、日野は、NPO法人全国移動サービスネットワークと連携し、登録講師が出張して各地域のニーズに合わせた認定講習をトライアルとして実施しています。講習は座学と実技(接遇・運転)を行い、その後、修了証を授与します。日野の講師は運行管理サービスの実務を経験した人財も担当しており、点呼業務やドライバー様からのご要望など、得られたノウハウを本講習で活かすよう努めています。
2024年4月には石川県小松市、同年9月には岡山県総社市で認定講習を実施しました。「自家用有償旅客運送トータルサポート」は、運行管理業務だけではなく自家用有償の運行導入前後に必要な支援も行っています。

NPO法人全国移動サービスネットワーク 理事 山本様

全国で交通空白地有償運送向けの認定講習の実施機関は約80カ所程度ありますが、近隣に受講場所が無いといった相談を当法人にいただくこともあり、その数は十分とは言えない状況です。日野様は運行管理を通じて自家用有償運行の現場に精通しており、新たにドライバーとして従事する方々に実態に即した講習を提供していただけるものと期待しております。

4. 交通空白解消に向けた新たな連携

――――自家用有償トータルサポートでより多くの地域のサポートを目指す

これまで、利用しやすい自家用有償を目指し、制度の一部改善や改正等が行われてきました。そうした中、2024年7月17日には、国土交通省「交通空白」解消本部が設立されました。これは、全国各地でタクシー、乗合タクシー、日本版ライドシェアや公共ライドシェア(自家用有償)等を地域住民や来訪者が利用できない「交通空白」の解消を支援するものです。
2024年9月4日には、国土交通省「交通空白」解消本部のもと、自治体・交通事業者等とさまざまな技術・サービスを持つ企業群と幅広い連携を図る「交通空白解消・官民連携プラットフォーム(仮称)」( 国土交通省)を年内のできるだけ早い時期に設置することを発表し、課題×技術のマッチングや地域課題解決・パイロットプロジェクト(仮称)、空白解消に向けた意見交換の実施などが予定されています。
これを受けて、日野は、2024年9月30日より全国の自治体向けのウェビナーを実施する予定です。ここでは、自家用有償の制度から日野の自家用有償トータルサポートまで詳しく説明します。

今後も、自家用有償においては、日野が主体的に提供する運行管理サービスだけでなく、連携パートナーとの協業によるワンストップ提供を目指し、地域の皆様と実証実験等を行いながら、地域公共交通を支える持続可能なソリューションを検討していきます。

以上

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