<お客様インタビュー> 水資源機構さま
川上ダム 大型ダンプトラック自動運転実証実験

自動化が建設現場のあり方を変えていく

商品・技術2020年12月4日

日野は、省人化や効率化を通じてさまざまな社会課題の解決に貢献すべく、車両の自動化を進めています。その活用シーンの一つとなる建設現場においても、車両自動化による作業の省力化・平易化、省人化、生産性の向上だけでなく、より高い安全性の確保などが期待されています。
これらの早期の実現を目指し、建設現場における自動化・遠隔化を活用した、ロボティクスコンストラクションに取り組む大林組とタッグを組み、2020年11月より三重県伊賀市川上ダムの建設現場にて大型ダンプトラックの自動運転実証実験を実施しています。

今回は、川上ダムの建設、運用、管理までを一挙に担う水資源機構さまへ、建設現場における最新技術の活用についてお話をうかがいました。

<お話をうかがったのはこの方>
水資源機構川上ダム建設所 所長 渕上吾郎さん

1.地域に愛されるダムを目指して

――――川上ダムは、2017年に本格的に工事をスタートしましたが、地域からの期待やダムとしての役割とは

川上ダムは三重県の伊賀市、淀川水系の木津川の上流に位置します。木津川下流の洪水被害の軽減、いわゆる治水と、木津川の河川流量確保、伊賀市の水道用水の確保の3つを主な目的としています。昨今、全国各地で洪水被害が発生していることもあり、地域住民からも早く完成させて欲しいとの声が寄せられています。完成した後にもしっかり地域の方のお役に立ち、誇りに思っていただけるような、愛されるダムにしていきたいと思っています。

――――ダム建設において最も重視されているポイントとは

ダム建設は公共事業の一つであり、地域の安全確保はもちろんのこと、周辺環境保全や建設工程の管理に至るまであらゆる面で高い品質を保つことが大切だと考えています。例えば、安全確保においては、搬入ルート上に速度規制区間を設けたり、交通誘導員を配置したり、リアルタイムで車速や位置情報などが一元管理できるようなシステムも配備しています。また、周辺環境においては、騒音、振動、粉塵は住民の方たちはとても気になる点だと思います。川上ダムでは、建設の主要なポイントにおいて、それらを計測しリアルタイムで数値を示したり、工事の進捗がわかるライブ映像をWEBで公開するなど、さまざまな見える化を実施しています。
そういった取り組みの一つ一つが地域の方の安全と安心、ダム建設への理解にもつながると考えています。

2. 最新技術へのトライと変化する建設現場

――――川上ダムの建設では、積極的に自動化や遠隔化などの最新技術を導入されています

現在、公共事業をはじめとする建設現場において、生産性向上を目指した最新技術の活用が各地で推進されています。特に、自動化や遠隔化は興味が深いところです。この川上ダムでのトライも、ダム事業をされている方も注目していると思います。それほど、建設現場にとっては影響が大きいことです。
ダムの建設現場は“一品物”と言われるほど、現場によって条件が全く異なります。例えば、川上ダムでは、居住エリアから近いことから騒音や振動、景観に対しての配慮や、現場周辺の豊かな自然環境の保全など、周辺環境へ与える影響を最小化すべく配慮考慮しながら施工計画を立てていますが、自動化や遠隔化が進むことで、根底の考え方が大きく変わってきます。
これまでは、地形や環境に対してどう効率良く建機やダンプを配置できるか、運用できるかを起点に、工程や工法、安全管理や衛生管理などを計画してきました。しかし、これからは自動化を前提とした計画、さらには、建設環境づくりに大きく方向転換していくでしょう。これはとても画期的なことです。
今、川上ダムでのトライは、基本的には作業員の安全性を高めることを目的にしていますが、同時にそれは効率化を図ることにもなります。つまりは、工期の短縮化、早期完成となり、地域の皆さまへ一日でも早くダムの役割を果たせることにつながるのです。

――――自動運転ダンプの導入によるダム建設現場への変化については、どのように考えでしょうか

自動化によるメリットは大きいと思っています。これまでは、規定の運搬量を確保するために、台数に余裕を持ったダンプの手配や稼働時間の延長、積載量の最大化など、日々の状況の変化に応じた運用が必要になっていました。しかし、自動運転ダンプを活用することで、24時間オペレーションによる運搬量の均一化と安定化を図ることが可能となります。また、建設現場構内などの人の往来が限定的な環境においては、車両の小型化によって建機を休めずに効率的に連携できるだけなく、安全で安定したオペレーションが実現できると考えています。更なる技術開発で、いかに現場の「質」を上げていくかがポイントになってくると思います。

3.自動運転ダンプの果たす役割と今後への期待

――――今回の実証実験では、夜間の建設資材運搬業務にターゲットを絞っていますが

今回の実証実験で実施している夜間の運搬作業は、ある意味、自動化を目指しやすいと思っています。作業領域や時間、作業内容などが限定された中での運用であるため、その条件に特化した最適なダンプを用意することができます。例えば、どの現場にも対応できるようにということを考えすぎると、必要な機能は幾重にもなり、ダンプそのものが高価になってしまうでしょう。おのずと現場への導入のハードルが上がってしまいます。それでは、本来、叶えるべき現場の課題解決ができなくなります。ですから、自動化で担う役割を明確にした上で、ニーズに合わせて簡素化、最適化していくことが重要だと考えています。

――――実際に車両に試乗されたとのことで、いかがでしょうか

安全性を第一に考えた車両づくりがされていることに加え、動作のスムーズさに感心しました。また、新たな可能性も感じました。現場内の道路も、将来的には自動運転車両専用の道路のみになるということもあるでしょう。作業者が機械に接近することもなくなるかも知れません。もしかしたら、ダンプも車両としてだけでなく、目的に合わせて異なる機能を搭載したものが開発されるかも知れません。このように、さまざまな可能性を見据えて積極的にトライするからこそ、得られる知見や課題も多いと思います。これまで経験したこととは違う次元に進んでいくだろうと一技術者としてもワクワクしています。

――――実証実験を経て、今後に期待されていることは

今回、日野さんがトライしているダンプの自動運転においても、おそらく、建設現場に限らず、他の分野にも展開することになるでしょう。それは、人々の暮らしの安全・安心に活かされたりフィードバックされたりしながら次のフィールドへと進んでいく。その出発点の一つとして川上ダムが活かされていることに嬉しさを感じています。

眺めは圧巻!川上ダム建設現場が見学できる展望台

川上ダムでは、地域の方やダムファンが気軽に建設現場を見学できるように展望台を設置しています。これまでの工事工程の報告や周辺環境について映像や展示パネル、広報誌「川上ダム通信」などの展示コーナーが併設。さらに、川上ダム建設事務所ではオリジナルダムカードを配付中です!ARアプリにかざすと映像が見られる楽しい仕掛けも。ぜひ、この機会にゲットしてみてはいかがでしょうか。

展示スペース

広報誌「川上ダム通信」

ダムカード

日野は、今回の実証結果を活かし、荷積み・運搬・荷降ろしまで一貫したオペレーションをはじめ、自動運転車の運用でお客様の困りごとや社会課題の解決を目指すべく、さまざまなパートナーとノウハウを蓄積し、開発に取り組んでまいります。

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