「最善を尽くしてチームをサポートしたい」日野チームスガワラサポートメンバーインタビュー

2016年11月8日
No. PD17-09

(左から)日本レーシングマネージメント 田中さん、高嶋さん、日野自動車 技術研究所 島崎さん
(左から)日本レーシングマネージメント 田中さん、高嶋さん、日野自動車 技術研究所 島崎さん

今回のダカールラリーニュースでは、日野チームスガワラの3人のサポートメンバーに、サポートの役割やメンバーになったきっかけ、そして来年1月のダカールラリーに向けた意気込みなどを語っていただきました。チームを陰で支える彼らにも、ぜひ応援をよろしくお願いします!

―サポートメンバーのみなさんは、チームでどのような役割を担っているのでしょうか?

田中「まず、現地でスタート前に車両を整備するのですが、日本から持ってきた備品が壊れたり不足したりするので、必要なものを買い出しに行きます。どこに売っているのかわからないので、インターネットで調べたり、町の人に聞いたりして探すのですが、やはり言葉の壁があるので大変ですね。欲しいものが相手に伝わらないと、どこに行けばいいのかわからないので、事前に片言でも勉強して、辞書なども使って、何とか伝わるように頑張っています。」

島崎「僕も、前回初めて現地に行ってみて、言葉の壁はすごく感じました。中にはやさしい人もいて、こちらが単語しかわからないと、道順などを単語単位で説明してくれるのでわかりやすいのですが、全員がそうしてくれるわけではなくて、こちらの話を全然聞いてくれない人もいました。」

チームでどのような役割を担っているのでしょうか?

―ラリーがスタートしてからは?

田中「ラリーが始まると、サポートカーのドライバーとして、毎日メカニックのみなさんをビバークまで運びます。」

島崎「現地は左ハンドルで、標識も日本とは違うので前もって勉強していくのですが、それでも最初は慣れていないので注意が必要でした。それから、移動中の給油ポイントがそれほど多くあるわけではないので、燃費を計算して次はどこで給油するかを考えながら運転します。ビバークにはなるべく満タンで到着したいのですが、それは他のチームも同じで、ビバークに一番近いスタンドは混雑するので、そのようなことも考慮しながら給油ポイントを決めます。」

田中「メカニックの皆さんは朝まで作業をしていて、移動中しか睡眠を取ることができないので、運転には気を使います。」

ラリーがスタートしてからは?

島崎「メカニックを乗せているし、チームの荷物も積んでいるので、ラフな運転はできません。日野のサポートカーはこれまでノートラブルですが、他チームは結構トラブルがありました。例えば峠道でブレーキから煙を出していたり、多い日には3~4台が止まっているのを見たことがありました。」

田中「あまり表面に出ないのでわからないのですが、実はサポートカーの事故も多いんです。」

島崎「競技車と同じ様にサポートカー用のコマ図があって、そこに制限速度が書いてあるのですが、サポートカーにもGPSが付いていて主催者に管理されているので、制限速度を超えるとチーム全体のペナルティになってしまいます。 ビバークに早く着きたいのはどのチームも同じなので、皆が制限速度ギリギリで走ることになります。」

―もう一つのラリーのような感じですね。

島崎「あせってストレスを感じることもありますが、そこは抑えなければなりません。二輪、四輪も含めて他のチームも移動していますし、一般の車も走っているので、無理して急ぐと事故になってしまいます。煽られたり、前が詰まっていたりしていても、じっと自分の位置をキープしてひたすら安全に走り続けます。」

田中「メカニックのみなさんが寝ているので、一人で何も言わずに黙々と運転しなければなりません。また、サポートカーの運転には冷静さが大切です。野生動物などが突然飛び出してくる事もあるので、焦ることがないように常に集中しています。」

もう一つのラリーのような感じですね

―ビバークに着いてからは、どのようなことをするのでしょうか?

島崎「まず、場所取りをします。予めチームごとの場所は決まっているのですが、主催者と交渉して空いていればもっとよい場所に変えてもらいます。例えばトラック部門はスタートが遅いので、大通りに面していると先にスタートする二輪や四輪の音で目が覚めてしまいます。ドライバーやナビゲーターには少しでも長く睡眠を取ってほしいので、なるべく静かな場所を選ぶようにしています。」

田中「主催者テントの周辺にレストランのテントやトイレなどが設置されるのですが、ビバークはとても広いのでメンバーの移動が楽になるように、なるべく主催者に近い場所を取るようにしています。主催者が提供してくれる食事は肉類が中心なのですが、ドライバーとナビゲーターは長時間の振動で体が揺られて、内臓が疲れて弱っているので、僕らが消化のよい食事を用意します。前回は、島崎さんがご飯を炊いていました。」

ビバークに着いてから

島崎「毎日、日本から持って行った電気釜と発電機、それに主催者からもらったミネラルウォーターで炊いていました。おかずはレトルトのカレーや中華丼などをIH調理器で温めて、炊き立てのアツアツのご飯にかけて食べてもらいました。ラリーの後半になると選手は疲れがでてきますので、そんな時は選手の気持ちを考えながら接していました。」

―ゴールが近づいてくると、セレモニーに向けた準備などもあるのでしょうか?

田中「セレモニーの前に、いつどこで洗車をするのか考えます。毎年ゴールの場所が異なりますし、セレモニーの時間も直前まで発表されないので難しいところです。今年のラリーでは、僕たちがゴール前の移動区間の途中で待っていて、日野レンジャーに農道の脇に5分くらい立ち寄ってもらって、そこで一気に洗車をしました。洗車が終わったらサポートメンバーもゴールに向かうのですが、今回はセレモニー会場と駐車場がかなり離れた場所にあって、一部のメンバーがセレモニーに間に合わず、参加することができませんでした。毎回、日野レンジャーはピカピカな状態でゴールしていますが、実はその裏には僕たちの苦労があるんです。」

―ところで、みなさんはどのようないきさつで、サポートメンバーになったのでしょうか?

高嶋「地元で大学を卒業して就職が決まっていたのですが、本当は海外に行きたいと思っていて、『まずは東京に行ってみよう』と考えて上京しました(笑)。仕事を探していると、『ここなら海外に行けるかもしれない』と菅原さんの会社を紹介されて、昨年入社しました。車両製作などの技術があったわけではないので、一から教えてもらっています。」

田中「僕は、地元で自動車メーカーの関連会社に勤めていたのですが、学生の頃からモータースポーツが好きで、自分でもメカニックや車両製作をやってみたいと思って仕事を探していたら、偶然菅原さんの会社に出会って、思いきって前の会社を辞めて入社しました。」

どのようないきさつで、サポートメンバーに?

島崎「去年の10月にチームの壮行会に参加した帰りに、上司から『サポートカーのドライバーの候補になっている。もし選ばれたらラリーに行くか?』と聞かれました。突然でびっくりしましたが、小学生の時にテレビでラリーを走る日野レンジャーを見て、それが日野に入った理由でもあったので、『もし行けるなら、行ってみたい』と答えました。」

―サポートカーのドライバーに選ばれて、初めてラリーに行くことに不安はありましたか?

島崎「正直に言うと、日本を出発してからアルゼンチンに到着するまでは不安でした。でも、現地に届いた日野レンジャーを目の当たりにして、『この車を完走させて、クラス優勝もしなければならない』と思うと、不安はなくなりました。メンバー全員が同じ気持ちでいるのを肌で感じて、『自分だけ不安でいてもしょうがない。初めてのラリーだけれど自分が出来る限りのことをやって、みんなで同じゴールに向かっていくんだ!』と思うようになりました。」

不安はありましたか?

―実際にラリーに行ってみて、いかがでしたか?

島崎「ラリーの様子はダカールニュースで読んでいましたが、文字と写真ではわからない、その場の温度とか風の強さとか、日差しとかを実際に行って感じられたことがよかったです。ゴールセレモニーでポディウム(表彰台)に登ったら、そこから本当にたくさんのお客さんがいるのが見えて、自分がチームの一員として見られている気持ちというのは、実際に行かない限りはわからない。これを味わってしまうと、毎年行ってもいいかなと思ってしまうくらいです(笑)」

田中「僕もゴールセレモニーで、メンバーのみんなと握手をして喜びを分かち合う時が、ラリーをやっていてよかったと思う瞬間です。途中でつらいと思うこともあるけれど、この瞬間のために最後まで頑張ることができます。ラリーに逃げ場はないので、やるしかないんです。」

―次回のラリーに向けた、意気込みを聞かせてください。

田中「やるからには、やはり上位に入賞して、いい結果を出したい。前回のラリーで2号車が一時4位まで上がった時、メンバーのみんながすごく嬉しそうにしていて、僕も嬉しかった。順位がいいと『やっていてよかった』と思いますし、サポートメンバーとして最善を尽くして、チーム全員が『やってやるぞ!』と思う瞬間ができれば嬉しいです。」

島崎「サポートカーのドライバーとして『安全運転』、それから余裕がなくなると笑顔もなくなると言われるので『笑顔』の2つがテーマです。次のラリーに向けてもうひとつテーマを探しているところですが、もっときめ細かいサポートができればと思っています。選手やメカニックの気が張っている中で、少しでも気が休まるような雰囲気が作れればいいなと。」

意気込みを聞かせてください

高嶋「上位に行くためにはチームの雰囲気が大事なので、ピリピリしている時にいい意味で空気を変える『ムードメーカー』になれればと思います。自分にとって初めてのラリーなので、楽しみもあり不安もありますが、憧れていた海外に行けるチャンスをいただいたので、自分ができる限りのことをして、田中さんと島崎さんのサポートをサポートしたい。」

田中「ラリーの映像には車やドライバーがとてもカッコよく映っていて、みなさんもそれに注目していると思うのですが、その陰で、チームを支えているサポート隊の存在も感じながら見てもらえると、僕らとしても嬉しいですね。」

日野チームスガワラのサポートカー
日野チームスガワラのサポートカー

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