日野チームスガワラが「クラス6連覇&連続24回完走」を報告

2015年3月19日
No. PD15-35

ダカールラリー2015のトラック部門で「排気量10リッター未満クラス6連覇」と、初参戦以来の「24回連続完走」という快挙を成し遂げた日野チームスガワラが、3月13日に日野自動車の本社で報告会を開催し、総勢200人の来場者と喜びを分かち合いました。

日野チームスガワラ

報告会には、チーム代表兼1号車ドライバーの菅原義正さん、2号車ドライバーの菅原照仁さん、ナビゲーターの羽村勝美さん、若林葉子さん、杉浦博之さん、メカニックリーダーの鈴木誠一さん、メカニックサブリーダーの末永健司さん(日野自動車 車両生技部)、メカニックの林博永さん(函館日野自動車)、菅原瞬介さん(東京日野自動車)、福野広弥さん(横浜日野自動車)、益田崇史さん(広島日野自動車)、エンジニアの名越勝之さん(日野自動車 エンジン設計部)、そして日野自動車の市橋保彦社長が出席しました。

まず、市橋社長が初めてゴールセレモニーを訪れて感じたことを語り、続いて菅原照仁さんが2015年大会のコースの特徴や日野チームスガワラの戦いぶりを報告した後、メカニックの菅原瞬介さんがラリーで体験したことなどを語り、最後に73歳にしてなお「世界一過酷なラリー」に挑戦を続け今回も見事完走を果たした菅原義正さんが、改めてダカールラリーにかける想いを述べました。早くも次の大会に向けて参戦の意欲を示す「ダカールの鉄人」に、来場者は惜しみない拍手とエールを送りました。

日野自動車 市橋社長

「ダカールラリーへの挑戦」という大切な財産を、皆様と守り育てたい。

日野自動車 市橋社長

今年も無事にクラス優勝と連続完走という目標を達成できたのは、80社を超える協賛会社の皆様とともに、ダカールラリーという夢と情熱のゴールに向けて「チーム日野」として一丸となって力を合わせた結果だと、私は信じております。

今回、私は初めてダカールラリーのゴールセレモニーを訪れましたが、その中で感じたことが2つあります。1つ目は、感謝の気持ちを持つことの大切さです。今回はゴールセレモニー当日も競技があったため、会場に日野レンジャーが到着した時には泥だらけだったそうですが、セレモニーが始まるまでのわずかな時間に、メカニックたちがバケツリレーで水を運んで車をきれいに磨いたそうです。菅原さんは「今まで無事に走ってきてくれた車への御礼と、応援してくれたスポンサーの皆さんのステッカーが写真やテレビにきれいに映れば喜んでもらえる」と仰っていました。他のチームの車は泥らだけでしたので、私たちの日野レンジャーがひときわ輝いて見えました。

2つ目は、夢を追い続けることの素晴らしさです。ラリーの厳しい環境のなかで、メカニックたちは最後まであきらめずに頑張り抜いて車をゴールさせました。その原動力は、まさにダカールラリーに参戦することが彼らにとって夢そのものだったことです。入社以来この舞台をずっと夢見て技術を磨いてきた方や、中にはダカールラリーに憧れて日野に入社を決めた方もいるそうです。また、夢を追い続ける自分たちを応援してくれる家族や同僚のためにも、ここまで頑張ることができたと語ってくれました。私は華やかなラリーの舞台の裏にある、夢を追い続ける人と応援する人の心温まるドラマに深い感動をおぼえました。

目標に向かって力を合わせ、心を一つにしてそれを成し遂げる「ダカールラリーへの挑戦」という大切な財産を、これからも皆様とともに守り、育てていきたいと思います。

2号車ドライバー 菅原照仁さん

クラス優勝に甘んじていると、いつかライバルにやられる。だからその上を目指す。

2号車ドライバー 菅原照仁さん

開催地がアフリカから南米に移って7年目になりますが、今回は南米で最初の大会と同じように、ブエノスアイレスから始まって、そこに戻って終わるというコース設定になりました。現地では年々盛り上がっている様子がうかがえ、「パブリックビューポイント」と呼ばれる無料で観戦できるエリアがたくさんあるほか、砂丘の真ん中に行ってそこを走る車を観戦するようなツアーもさかんにやっています。南米の人々は楽しみながらラリーを見ていますし、南米の参戦者も増えています。

前回、父の1号車にA09Cという新しいエンジンを搭載して「これはいけるぞ」という感触をつかんだので、今回は自分の2号車にも搭載しました。以前のエンジンよりも排気量が1リッター大きくなり、馬力も向上して戦闘力が上がりました。新しいエンジンでも10リッター未満なのですが、13リッターもある総合上位陣の車との差が縮まってきました。もうひとつ、今回は新しいサスペンションも導入しました。従来はマルチリーフ式という古いタイプを使っていたのですが、テーパーリーフ式という現代的なサスペンションに変更して、トラックというよりもレース用のバギーに近い車になりました。

2号車ドライバー 菅原照仁さん

今回は、1度だけトラブルがありました。2日目に、小石がラジエーターと冷却ファンとのすき間に入り込んで当たってしまったのです。小石が車両の前方ではなく後方から入るというのは、通常では起こり得ない非常に珍しいケースです。水は漏れましたが、幸いしばらくは走れる状態だったので、補給しながらキャンプ地にたどり着きました。この日は40分くらい遅れてしまいましたが、新品のラジエーターに交換して、その後はパンクもなくノートラブルでした。

南米では、アタカマ砂漠がメインのフィールドになり、山のような砂丘が特徴で我々はこういう場所を得意としているのですが、他のチームも実力を上げてきていて、ますます戦いが激しくなっています。アンデス山脈を抜けるコースでは高度が4700mにもなり、パウダー状の細かい砂が巻き上がって自分のブレーキで前が見えなくなるほどです。一番厳しかったのは、3500mの高度からスタートして4500mくらいまでヘルメットをかぶったまま走り続けるコースです。高さとしては地球の限界の地点でレースをしているような状態で、次は月に行ってしまうのではないか?(笑)と思うほどです。このように、富士山よりも高い場所で競技を行うという、わざわざ車にも乗員にも厳しいルートが設定されているところが、「世界一過酷」と呼ばれる所以だと思います。

新車を導入して、全体としては手ごたえのある走りができたのですが、今後煮詰めていかなければいけないところもたくさんあり、まだまだポテンシャルを秘めていて伸びしろがあると感じています。今回は、目標として排気量10リッター未満クラスの優勝はもちろん、トラック部門の総合10位以上も目指していたのですが、結果は16位と達成できなかったのはくやしいです。今後も、「クラス優勝に甘んじていると、いつかライバルにやられるぞ。だから、その上を目指すぞ」という気持ちでやらなきゃダメだと思っています。

メカニック 菅原瞬介さん

「今、自分は何ができるのか」を、自分自身で考えながら整備することを学んだ。

メカニック 菅原瞬介さん

初めてメカニックとして参戦して、睡眠時間の少なさや整備する環境の過酷さにも負けず、全身全霊を込めて整備をしてまいりました。幸い、大きなトラブルもなく終えることができたのですが、ラリーの後半は精神的にも体力的にもきつく、昼間の暑さと夜の寒さ、時には高山病との戦いもありました。

実は、ダカールラリーに出るまでは、皆さんの応援が心の支えや励みになることはあっても、それが実際に自分の「力」になるとまでは思っていませんでした。ところが、疲れ果てて手も足も動かない時に、チームのホームページに書き込まれた、自分を支えてくれた家族や同僚からの「頑張れ!」というメッセージがふと頭の中に浮かんで、不思議とまた手や足が動くようになりました。皆さんからの応援が本当に「力」になった、とても感動した瞬間でした。

メカニック 菅原瞬介さん

販売会社のメカニックは、普段の仕事でこのような経験をすることはありませんし、ラリーという特殊な現場に行くこともありません。しかし、ラリーで車をゴールまで無事に走らせるということと、荷物を心待ちにしているお客様のために、車を無事に目的地までたどり着かせるということは、メカニックとして同じ使命を果たしていると感じました。そのために「今、自分は何ができるのか」を自分自身で考えながら整備するということを、日野チームスガワラの一員となって学ぶことができました。このラリーで経験したことを活かし、感動を伝えて、これからもお客様の車を安心、安全に走らせていきたいと思います。

ダカールラリーという素晴らしい舞台に立たせていただき、一生の財産となりました。このラリーに携わるすべての皆様、本当に有難うございました。

チーム代表兼1号車ドライバー 菅原義正さん

「ダカールは人生の学校だ」と言っていますが、僕はまだ「在校生」のまま(笑)

チーム代表兼1号車ドライバー 菅原義正さん

先日、長年お世話になっているお医者さんに診ていただのですが、検査の結果どこも悪くありませんでした。ですから、来年のことは全く心配いりませんので、安心してください(笑)

チーム代表兼1号車ドライバー 菅原義正さん

先ほど、メカニックの菅原くんが話したとおり、若い人たちがこのラリーを通じていろいろ勉強して、チャレンジをするということは、本当に大事なことです。僕は彼らに「目に見えるのをただ受け流すだけではなく、それを心の目でもしっかりと見るように」と言っています。自分が今見ているものを、しっかりと心で受け止めている人は、10年経って大きく違ってきます。若い人には、「ダカールは人生の学校だ」とよく言っているんですが、僕が一番成績が悪くてまだ卒業させてもらえず、「在校生」のままでいます(笑)

ダカールラリーの主催者からは、日野のチームが一番「ジェントル」だと言われています。他に、有名なメーカーもたくさん出ているのですが、その中で日野が一番お行儀がいいそうです。ラリーでは、ただ勝つことだけではなく、そういう文化も作り上げていきたいと思っています。一方で、日野レンジャーは車もエンジンも小さいのに、果敢にライバルの大きいトラックに挑んでいく「リトルモンスター」と言われています。次回はさらに車を軽量化するなどして、もっと世界に日野の存在感を示したいと思います。

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