「4人で力を合わせて頑張りたい」販売会社メカニックインタビュー

2014年9月23日
No. PD15-09

ダカールラリー2015に参戦する販売会社メカニックは、7月に日野自動車本社で行われた選考会の結果、函館日野の林博永さん、東京日野の菅原瞬介さん、横浜日野の福野広弥さん、広島日野の益田崇史さんが選ばれました。4人はラリーモンゴリア後の8月下旬からチームに合流して、現在は日野自動車の羽村工場で車両製作に携わっています。ダカールニュースで4人の奮闘ぶりをお伝えするために忙しい作業の合間を縫ってインタビューを行い、7月の選考会や現在の車両製作の様子、そして来年1月のラリー本番に向けた意気込みなどを語っていただきました。

4人で力を合わせて頑張りたい

― 選考会では緊張しましたか?

「しました。試験を受けるのは今回が最初で最後だと思っていたので、『絶対に合格しなければならない』というプレッシャーがありました。」

福野「自分もすごく緊張していたので、実技の時はできるだけ声を出して、体を動かして、緊張を紛らせるようにしました。」

益田「試験の内容はある程度想像していましたが、実際その場に行ったらパニックになると思ったので、実技の前に一緒に受けるメンバーといろいろ話し合って、その時にできることを精一杯やったつもりです。」

菅原「体をガシガシ動かしていれば緊張も紛れるのですが、ハーネスに端子を取り付ける作業の時は手がガクガク震えちゃって、一旦作業を止めて工具を机の上に置きました。」

― 菅原義正さんや照仁さんとお会いして、どのような印象を受けましたか?

益田「写真などは何度も見ていたのですが、実際にお会いすると緊張しました。話をしていてもすごい方だなぁ、すごい世界で生きている方だなぁと感じましたし、自分はこの人についていかないといけない、頑張らなきゃいけないと思いました。」

「初めて会った時は、自分が菅原さんのような有名人と一緒の場所にいていいのかなという感じはありました。昼食の時に、ちょうど向かい側に義正さんが座っていて、話しかけられて・・・緊張して自分でも何をしゃべっていたのか覚えていません。」

広島日野 益田さん
広島日野 益田さん

菅原「自分は照仁さんの向かい側に座っていたのですが、照仁さんの方から前回の車は足回りがこうで、エンジンがこうでとかいろいろ話してくれました。義正さんはダカールの神様みたいな存在なので、こちらからは話しかけられませんでした。実は前もって何を話そうかな、どうやって自分をアピールしようかな(笑)とか考えていたんですけど、逆に義正さんのほうから話しかけていただいて、助かりました。」

福野「食事の前にトイレに行ったら義正さんが隣に来て(笑)、ふいに『レース中はずっとトイレに行けないんだから、君も我慢できるように鍛えておきなさい』と言われて、思わず『はい!』って答えました。結構気さくな方なんだなぁと思いました。」

― チームのメカニックに選ばれて、職場の方はどのような反応をしていましたか?

益田「上司だった人がダカールに行ったことがある人で、『よかったね、頑張ってこい!』と言ってくれました。ただ、職場では自分がいなくなって他から応援に来てもらっているので、その分は職場に帰ったらフォローしたい。それから、ラリー本番から帰ってきたら研修があって、広島日野ではダカールに行った人がラリーについて発表をすることになっているので、そこでいろいろなことを伝えたい。自分の経験をたくさん持ち帰るのが、職場へのお土産だと思います。」

函館日野 林さん
函館日野 林さん

福野「同じ支店の人たちは、『おめでとう』と言ってあたたかく送り出してくれました。ただ、声に出して言う人はいないのですが、忙しい時期に自分がいなくて迷惑をかけているのかなと思うこともあります。ですので、職場に戻った時は、その分を挽回できるように頑張りたいと思っています。」

菅原「行くと決まった時は大騒ぎ!上司を含めて気持ちよく送り出してくれましたし、他の部署や支店からもお祝いのメールが来ました。会社からは工具を進呈していただきました。これは東京日野の未来のダカールメカニックに代々受け継がれるものなので、大切に使っていきたいと思います。こちら(羽村工場)に来る前の8月上旬には拠点のみんなが壮行会を開いてくれて、レース前の11月には東京日野全社での激励会を企画してくれているようです。自分と面識がない人も含めて、会社が一丸となって自分のために動いてバックアップしてくれる、その気持ちがすごく嬉しいです。」

「決まった時には、上司がとても喜んでくれました。函館日野からダカールのメカニックに応募するのは初めてだったので、試験の内容がわからず職場の人が他の販売会社に聞いてくれて、面接の練習もしてくれたので、とても感謝しています。ただ、自分のまわりにはダカールに出たいというメカニックがあまりいないので、他の人にも『参加したい』と思ってもらえるように、まずは自分が結果を出したい。」

― 今は車両製作に携わっていますが、普段の仕事と比較していかがですか?

「普段いじっている車と全然違うので、すごく面白いです。大変なことは大変ですが、今までとやりかたも違うし、いい経験になると思います。」

菅原「大変です。ラリー車は純正のパーツ以外に自分で作って取り付けるものもあるのですが、それが果たして本番を乗り切れるのかと毎日が不安で、いつもJRM(日本レーシングマネージメント)のスタッフに聞きながら勉強中です。普段の整備では、既に信頼性を確保されたパーツを使っているので、そんなことを考えたこともありませんでした。」

福野「四苦八苦しています。自分の中では『いい具合にレイアウトできたな』と思っても、鈴木さん(メカニックリーダー)から『エンジンがこう揺れるから』『こっちにも動くから』『砂がかかるから』と指摘されて、結構ダメ出しをくらいます。多方向から考えながらものを作らなければいけないし、それを設置する場所も考えなければいけないし・・・でも、面白いです。時間を忘れます(笑)。」

益田 「ものをつくるのは苦労しています。今までにやったことがないことをやるので、わからないことはいっぱいあるのですが、いろいろと教えてもらってすごくいい勉強になっています。しんどいけれど、やりがいがあります。」

― 自分が作った車が3ヶ月後にはダカールラリー本番を走ることになりますが、不安などはありますか?

益田「普通の道路を走るわけではないので、正直に言ってどうなるかはわからないのですが、スタートして何日間かはすごく不安だと思うけれど、慣れてくれば車のことがわかってくると思います。不安はありますが、南米に行っても毎日やるべきことをきちんとやりたい。」

福野「想像がつかないです。過去のラリーの映像を見て『つらそうだな』とは感じるのですが、実際に行ったら想像を超えるつらさ、過酷さがあると思います。でも、4人で頑張って乗り越えていきたい。」

東京日野 菅原さん
東京日野 菅原さん

菅原「車が走っている映像はあるけれど、メカニックの映像はないので・・・写真は見ましたが、実際にどういうふうに車が壊れて、それをメカニックがどのように直すのかは、想像ができないです。ただ、今のうちから車のことを少しでも多く吸収して、現地に行くまでにあの車のプロフェッショナルになっていれば、本番は楽しめると思います。」

「不安はありますが、4人で力を合わせれば何とかなると思います。他の3人がすごく優秀なので、いろいろと助けてもらうと思うんですけど・・・でも、自分は普段スプリング交換を頻繁にやっているので、そういうことでチームの役に立てると思います。あと、故障診断も。」

― 他の皆さんは、「自分はこれは自信がある」「これだけは負けない!」という点はありますか?

菅原「作業スピードだけは、昔から自信があります。期限の決まった作業、例えば『何時までに、絶対に終わらせなければならない』という作業だったら、誰にも負けません。」

福野「他の3人が優秀すぎるので・・・テキパキ動くことでしょうか?今は慣れない作業ばかりなので、自分の強みを発揮できないのですが、もっと勉強していろいろなことを覚えれば、作業スピードは早くなると思うので、そこは自信を持ってやりたい。」

益田「普段の仕事では出張に行くことも多く、結構難しい作業をこなさなければならない時もあるのですが、車のことがわかっていれば何とかなります。出張先では、その場にあるもので車を直して走らせるので、ダカールラリーでも限られた工具や部品で、車を走らせることについては自信があります。」

― 少し気が早いですが、無事にゴールできたらその時は何を感じると思いますか?

益田「想像はつかないのですが、みんなで力を合わせてそれを成し遂げたら、とても誇りに思うと思います。チームの一人として携わってこれたことを、皆にアピールしたい。日本に帰ってきた後も、ダカールに行ったということは自分にとって自信になりますし、その先も頑張っていけると思います。」

福野「現地で準備期間も含めて1ヵ月半、ラリー本番は2週間、いろいろな経験をしてクラス優勝ができたら、自分の人生の中でも上位に入る自慢のできることだと思うし、誇りに思えることだと思います。でも、まだ想像がつかない・・・」

横浜日野 福野さん
横浜日野 福野さん

菅原「自分は勝負の世界に身を置くのが好きで、勝ち負けにこだわるということもあるので、もしクラス優勝だけでなく総合でも上位に食い込めたら、その瞬間はたぶん泣くと思います(笑)。」

「全然想像がつかないのですが、日本に帰ってきて職場に戻った時に、上司はとても喜んでくれると思います。」

― 最後に、ダカールラリー本番に向けた意気込みを聞かせてください。

福野「JRMや日野本社の人たちと仲間として力を合わせて、意見を出し合ってチームワークを高めていきたい。まだ意見がかみ合わないところもあるので、本番に向けてうまくかみ合うようにしていきたい。」

益田「ここに来ているメカニックは皆すごい腕を持っていて経験も豊富なので、チームとしてひとつになって意見を出し合って、本番に向けて普段の生活の中でもコミュニケーションをとっていきたい。」

「今は、末永さん(メカニックサブリーダー)が結構しんどいと思うので、僕ら4人がもっと協力して末永さんの負担を軽くしなければと思います。メカニック全員で力を合わせて、頑張っていきたいです。」

菅原「ここ(羽村工場)に来る前は、自分でいいイメージしか持っていませんでした。実は『こうやってやろう』みたいな野望もあったのですが、それがきれいに打ち砕かれました(苦笑)。怒られたことも失敗したこともありましたが、自分にとって必要な1ヶ月だったと思いますし、それらの反省を今後に活かしていきたい。本番までには何の不安も無いようにしたいし、しなければいけない。それには、チームワークにも車にも不安を残しちゃいけないので、1つ1つクリアにしていきたい。」

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