自然と地域と共生する工場へ ~古河工場「ビオトープKOGA」誕生までの歩み~

その他2026年8月10日
日野自動車の古河工場は、2026年6月30日に地域生物多様性増進法に基づく「自然共生サイト」の認定を受け、2026年7月29日にさいたま新都心合同庁舎で認定証を授与されました。
「自然共生サイト」は民間企業や自治体、団体などの取り組みによって生物多様性の保全が図られている区域を、主務大臣(環境大臣、農林水産大臣、国土交通大臣)が認定する制度です。古河工場は、敷地内のビオトープを活用した生き物の保全活動や適切な管理、地域の児童たちへの環境学習の取り組みが評価され、認定を受けました。
古河工場は茨城県古河市に位置し、大型・中型トラック製造の中核を担っている工場です。また、「自然と地域と共生する工場」をテーマに、2017年から地域に自生する樹種を中心とした本物の森づくりに取り組み、2024年にはビオトープ※1が誕生しました。ものづくりの拠点でありながら、豊かな自然とともに歩み続ける古河工場のこれまでの取り組みをご紹介します。
※1 動物や植物が恒常的に生活できるように造成または復元された生息空間で、ギリシャ語で生き物(bio)と場所(top)を意味する合成語

令和8年度第1回自然共生サイト認定証授与式
左から、安全衛生環境部 部長 八木亮親さん、関東環境局 局長 庄子真憲さん、ものづくり支援部 片野史朗さん、脇田代天さん
1. ビオトープKOGA誕生
――――古河工場が育む「緑と水の共生」
古河工場のある茨城県古河市は、渡良瀬川や利根川などの豊かな水辺に恵まれた街です。平坦な地形に広がる豊かな自然環境と産業が調和するまちづくりを目指すこの地で、古河工場は「自然と地域と共生する工場」をテーマに掲げ、地域に自生する植物・樹種による森づくりや、多様な生物の生息、生育環境の保全に取り組んでいます。
――――105㎡の小さな池誕生
工場の北側緑地では、「Plant planters planting plants for the planet」(工場で働く人々による地球のための植樹)を合言葉に、2017年より従業員自らの手で植樹活動を続けてきました。地域に自生する樹種を中心に、これまでに約1万本(2026年8月現在)を植樹しています。年を重ねるごとに木々は育ち、さまざまな生き物が住み着くことで、豊かな自然環境が少しずつ形づくられていきました。
2021年、古河工場は自然と共生する工場の国内モデル工場として、日野自動車独自の認定制度「フォレスト認定※2」の取得を目指すことになりました。認定条件は「緑と水の活用」です。北側緑地には豊かな緑が育っていましたが、水辺はありませんでした。こうして、池を造る計画がスタートしました。池の水も自然由来にこだわり、池から一番近い工場の屋根の雨水を貯水タンクに蓄え、地下配管を通じて池へ流し込む仕組みを整備しました。タンク1基の容量は約8〜9tで、4基分の雨水で池が満水(約30〜35t)になります。この仕組みにより、池の水源は完全に雨水だけでまかなわれ、造成から約2ヶ月で満水になりました。
ビオトープの構想から完成まで約3年の歳月をかけ、2024年12月、工場の北側緑地にこれまでなかった緑と水が融合するビオトープ空間が誕生しました。この面積105㎡の小さな池を「みんなの池」、このエリア全体を「ビオトープKOGA」と名付けました。
※2 自然と共生する工場を社内認定する制度

従業員による植樹

デザインセンター考案によるロゴマーク

――――調整池という"もう一つの命の場所"
「みんなの池」の生き物を育んでいるのが、工場南側にある調整池です。調整池は、工場建設時に整備され、近くの仁連川とつながっています。大雨の際に河川の氾濫を防ぐ防災の役割も担うこの調整池には、川を通じて生き物が自然に行き来し、魚をはじめ多様な生き物が繁殖しています。ここで採集した生き物を、毎年6月の生物放流式で、地域の子供たちと一緒に「みんなの池」に放流しています。過去には、外来種であるウシガエルとアメリカザリガニが大量に生息するという問題も起きました。その際も、地域の子どもたちと協力しながら水生植物の植栽など生息環境の改善に取り組んだ結果、外来種の数を大きく減らすことに成功しました。

南側 調整池
2. 環境学習の場として
「ビオトープKOGA」を次世代へと継承し、地域とともに学び、成長する工場であり続けるために、地域の方々を招き、地元有識者と協働して季節の特性に応じた学習イベントを企画、開催しています。こうした活動の積み重ねにより、「ビオトープKOGA」は生き物が暮らす場所だけでなく、地域の方々が自然や命の大切さを学ぶ場となっています。
――――春 桜の植樹で、旅立ちを祝う【3月】
工場の近くにある名崎小学校の6年生の卒業を記念し、地域の桜「ベニサシマ」の苗木を植樹しています。子どもたちは一人ひとり苗木にそっと触れ、想いを込めながら丁寧に土に植えていきます。
――――初夏 新たな命を「みんなの池」へ【6月】
名崎小学校の2年生を対象に生物放流式を開催しています。コップの中に入ったヨシノボリやテナガエビ、メダカなど地域の生き物を、子どもたちは緊張しながらも丁寧に、「みんなの池」に放流していきます。
――――夏 夜の森で、命と出会う【7月】
地域の親子を対象に、夜の昆虫観察会を開催しています。夕暮れ時は「ビオトープKOGA」周辺を散策しながら、トンボ、バッタ、チョウ、カマキリ、テントウムシなどを観察します。そして、夜になるとライトアップで光に飛んでくるカブトムシやカナブンを夢中になって探す親子の姿が工場の緑地帯に広がります。最後は、昆虫に詳しい講師から捕まえた昆虫の生態について学ぶ時間を設けています。観察だけではなく、昆虫の特徴も学んでいきます。
3. 1年半の変化 豊かな生態系へ
ビオトープが誕生して以降、ギンヤンマなどのトンボの飛来や、放流されたミナミメダカが次々と繁殖するようになり、トウキョウダルマガエルの鳴き声も池の至る所から聞こえてくるなど、生物多様性がより豊かになりました。ビオトープには水の生き物だけでなく、チョウや鳥など、あらゆる生き物が水を求めて集まります。緑と水が融合したこの空間は、多様な生き物たちが行き交う場所として育ち続けています。

ゴマダラチョウ

キジ
――――部署の垣根を超えて広がった輪
「ビオトープKOGA」を支えているのは、ものづくり支援部 安全環境古河グループを中心に、自然や生き物が好きな有志メンバーが集まった「自然共生ワーキンググループ」です。立ち上げ当初10名だったメンバーは、現在では41名にまで拡大しています。部署や立場の垣根を越えた連携のもと、仲間たちの熱意と知恵がひとつとなり、「ビオトープKOGA」は着実に形になっていきました。メンバーは、それぞれの業務と両立しながら、ビオトープ周辺の植栽した花への水やりや草むしり、落ち葉拾いといった環境整備のほか、地域の子どもたちへの環境学習のサポートなども積極的に取り組んでいます。メンバーのうち数名は、自然環境や生態系の保全に関する専門資格である「ビオトープ管理士」を取得しました。今後もより良いビオトープのあり方を模索しながら、仲間とともに日々の管理と改善に励んでいきます。

自然共生ワーキンググループのメンバー
4. 運営担当者たちの想い
「ビオトープKOGA」は、自然と生き物を大切に想う気持ちを持った人たちの手によって生まれました。この場所に込めた想い、活動を続ける中で感じたこと、そして今後について語ってもらいました。
ものづくり支援部 安全環境古河グループ 片野史朗さん
ものづくり支援部 安全環境古河グループ
左から、瀬沼勇三さん、脇田代天さん、片野史朗さん、グループ長 菊池祐輔さん
古河工場は竣工当時から、「将来にわたっても、自然と地域と共存し続ける工場」をコンセプトの一つに掲げてきました。私自身、2017年に初めてこの取り組みに携わった際、地球環境の保全や持続可能な社会の実現に貢献する重要な使命だと感じました。9年間にわたる活動を通じて、国からの自然共生サイト認定や地域との交流活動の定着など、これまで積み重ねてきた取り組みが少しずつ実を結んだことを、とても嬉しく思います。何より、こうした活動を支えてくださる従業員の皆さんに、心から感謝しています。
古河工場工場長 針生貴裕さん
古河工場は地域に根差す企業であり続けるために、地域とのつながりを大切にしながら、操業をしていくことはとても重要だと考えています。このたび、国から自然共生サイト認定をいただきました。これは、我々が続けてきた自然環境や地域への貢献活動が評価された証であると同時に、持続可能な社会実現へ向けた新たなミッションの始まりでもあると考えています。これからも、自然と地域への貢献活動をさらに発展させ、地域とともに歩み続ける工場を目指していきます。
5. 広がる自然共生の輪
9年間の積み重ねが「自然共生サイト」に認定された今、新田工場でもビオトープの造成が始まるなど、自然共生の取り組みは社内全体に広がりつつあります。「ビオトープKOGA」は、地域とつながり、命を育む場所として、これからも未来へ受け継がれていくことを目指し、取り組みを続けていきます。今後の「自然と地域と共生する工場」の取り組みに、引き続きご注目ください。

