<インタビュー>大型観光バス日野セレガ、約20年ぶりにデザインを刷新 ~デザインに込めた想い~

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商品・技術2026年6月26日

日野自動車は、2026年5月20日に大型観光バス「日野セレガ」を改良して発売しました。最新の安全装備の搭載や静粛性と乗り心地を改善し、ドライバーと乗客に安心で快適な移動を提供します。
さらに、約20年ぶりにボディーデザインの刷新を行いました。「Glamorous Flow」をコンセプトに掲げ、フロントには風を受け流す抑揚ある艶やかな「ラウンディッシュデザイン」を、リヤには風を流す「ダイナミックシャープエッジデザイン」を採用。空力性能の向上を図りながら、機能美を高次元で両立したデザインを実現しました。

今回は、「日野セレガ」のデザイン刷新の背景とデザインに込めた想いについて、デザインセンターの3人にインタビューしました。

責任者 沼岡 一徳(ぬまおか かずのり)
フロント周りを担当

遠藤 直哉(えんどう なおや)
リヤ周りを担当

岡田 和葉(おかだ かずは)
フロントのアイデアを担当

1.日野セレガ約20年ぶりにデザインを刷新、その決断の背景

――――今回のデザイン刷新はいつから構想していましたか

沼岡:プロジェクトが正式にスタートしたのは2023年の春です。しかし、デザインの検討はすでに数年前から始まっていました。最初は"次期大型観光モビリティを作る"という、より大きなくくりからスタートしました。日野セレガを作るというより、新しい観光モビリティを作るという発想です。そこから徐々に製品化に向けて進めてきましたが、会社全体の開発スケジュールの変更やコロナ禍に伴う市場変動などがあり、中断も経験しました。
そして今回、環境負荷低減や安全性能に対する期待がより高まり、プロジェクトがスタートしました。
遠藤:中断になった時は、製品化できるレベルまでデータを作り込んでいたのに、世に出ないのかという無念さがありました。しかし、今思えば、その時の経験が今回の日野セレガの開発に生きたと感じています。改めてデザインに取り組んだからこそ、より良いものができたという自負があります。

――――ロングセラー商品の日野セレガの先代モデル、デザイン刷新に関して迷いはありましたか?

沼岡:20年前に日野セレガの先代モデルが登場した時、観光バスのイメージをドラスティックに変えたインパクトは、私たちの世代には鮮烈な記憶として残っています。それだけに、そこから新しい世代へと踏み出すことの難しさは感じていました。
岡田:小学生の頃に初めて日野セレガの先代モデルを見て、一目で感動した覚えがあります。自分もファンとして、デザインを変えることへの責任の重さを感じていました。ただ、当時の自分が感じた感動を、今の子どもたちにも味わってほしいという思いがあって、プロジェクトに参加しました。
遠藤:幼い頃、誕生日に日野セレガの先代モデルのミニカーと雑誌を買ってもらったことを今でも覚えています。日野セレガの先代モデルが従来の「四角い箱」というバスのイメージを一新した時の衝撃は忘れられません。その感動が日野自動車に入社するきっかけのひとつです。その日野セレガのデザインを手がけることになるとは、感慨深いものがありました。

――――ユーザーのニーズはどのように変わり、何を反映したのでしょうか

沼岡:20年の間に、バスに求められるものも変化しています。特に、移動の質へのこだわりは向上しています。コロナ禍以降の開発スタートという背景を踏まえ、ユーザーの価値観調査を行いました。「人々が出かけることへの魅力を再発見」という仮説を立て、コンセプトの策定に取り組みました。
岡田:ユーザーといっても、乗客・ドライバー・事業者と立場はさまざまです。それぞれの立場に最適な価値提供を目指しました。
遠藤:例えば、乗客の視点を体験するため長距離バスに乗車するほか、実際に国内外のバスショーも視察しました。また、事業者様のカラーを再現し、形が変わっても意図が適切に反映されているかも確認しました。それらで得られた知見や経験を内外装デザイン・コーディネートプランに生かしています。

2. 何を残し、何を変えたのか

――――日野セレガの先代モデルのデザインで守りたかった部分はどこでしょうか

沼岡:日野セレガの名前の由来は「セクシー&エレガント」であり、今回のコンセプトである「Glamorous Flow」にも、その精神は受け継がれています。フロントのエンブレム下にある黒い部分から、大きくくびれるような造形が日野セレガの大きな特徴です。この凛としたシェイプはリヤまで続いており、今回もこだわりました。
岡田:フロントのデザインをするにあたって、日野セレガの先代モデルならではのフロントから側面へ3次元的に回り込むアクセントピラーや、動的で抑揚のあるルーフシルエットは日野のバスを代表するデザインアイコンと考えています。これらの要素はブランドとして非常に価値があり、大切に守りながら10年、20年先も戦える新しさをどう加えるか、バランスを意識しながら取り組みました。

先代モデル

新モデル

――――大きく変更した点についてはいかがでしょうか。

沼岡:今回、最も大きく変更したのはフロントとリヤです。
スーパーハイデッカのみ、フロントガラスに続く屋根の部分を黒く塗装しました。フロントガラスが大きく見えて、アクセントピラーを強調しつつ伸びやかに大きく表現できるように変更しました。
岡田:初期の案では、屋根の黒い部分が最終案よりも広かったですが、お客様カラーに塗られることも考慮して現在の形になりました。
フロントのLEDヘッドランプは大型トラックと同一の高機能のものに変更しました。
同じ部品を使いながら、大型トラックが力強い表情であるのに対し、日野セレガはセクシー&エレガントで柔らかい表情を表現しました。見た目を変えただけではなく、空力性能を向上させる役割も狙っています。

フロントからサイドにかけて伸びるアクセントピラー

初期段階のアイデアスケッチ

遠藤:リヤについては従来のリヤスポイラーをなくし、リヤ上部全体を門型のフィン形状にして、車体全体の整流効果を狙いました。
リヤコンビランプも縦長基調のLEDタイプに一新し、夜間でも遠くから日野セレガとひと目でわかるようにしています。一方、門型スポイラーとバンパーの間にくびれを残すことで、機能性と先進性と日野セレガらしさを高次元で表現できたと思っています。
加えて、ロゴもよりスタイリッシュでモダンな造形と調和するよう一新しました。従来は左側面のみだったロゴを両側面に配置し、どこから見ても日野セレガだとわかりやすいようにしました。

先代モデル

新モデル

沼岡:インテリアコーディネートも刷新しました。以前のドライバーシートはブラウン系でインテリアは寒色系を採用していましたが、上質で落ち着きのあるブラウン系に整理しました。手すりはゴールドから明るめのシルバー系に変更し、夜間でも視認性が上がるよう工夫しました。形が変わらない分、色で使いやすさを表現することが難しい部分でもありました。
コーディネートプランは4グレードから3グレードに見直しを行いました。もともとは高価格帯にコーディネートのバリエーションが集中していて、お手頃な価格帯は少ない状況でした。今回は、中間グレードのコーディネートバリエーションを拡充し、事業者の方に適した仕様を選びやすいよう意識しました。
シート周りは環境に配慮したマテリアルを採用し、サステナビリティに貢献しています。

先代モデル

新モデル

3. 機能とデザインの間で繰り返す試行錯誤

――――機能とデザインの両立についてどのような苦労がありましたか

遠藤:空力性能の向上は、デザインと機能の両立で大きな課題でした。
リヤの門型のフィンをどこまで空力に最適化するか、初期段階から関係部署と議論を重ねました。解析を繰り返しながら、最適な角度や長さを決めていきました。空力を突き詰めつつ、日野セレガらしいグラマラスな表情の追求が今回の最大の難所でした。
また、くびれを表現するところも難しかったです。クレイモデル(工業用の粘土)をクレイモデラーに削ってもらい、今度はそれを3Dスキャンしてデジタルに取り込んでモデリングしていくのですが、なかなか満足のいくくびれにならず、このプロセスを繰り返し行って品質と性能を上げていきました。

リヤのクレイモデルを確認している様子

リヤのクレイモデル

4. 「日野セレガ」の新モデルに込めた想い

――――お客様に「日野セレガ」の新モデルをどのように感じてほしいですか

岡田:商用車はどうしてもデザインより機能が優先されがちですが、日野ブランドが培ってきたデザインへのこだわりも今回感じていただけると思います。乗客もドライバーも事業者も、三者それぞれに価値を感じていただける車になっていると思います。
沼岡:まずは一目見てかっこいい、乗ってみたいと感じてほしいです。移動の高揚感と期待感を持っていただきたいというのが一番の願いです。ドライバーの方々には誇りや安心感を、乗客の方々にはリラックスできる特別な空間を感じていただければと思います。
遠藤:乗客の方には遠くから見てもデザインが変わったことと、かっこいいなと感じてもらいたいです。ドライバーの方には機能だけでなくインテリア、カラーコーディネートも含めた変化を感じていただきたいです。そして事業者の方々には、空力性能を向上したこの日野セレガの新モデルが、街の景色を変えることを実感していただけると嬉しいです。

――――今後、「日野セレガ」の新モデルはどのような存在になってほしいですか

岡田:子どもの頃に日野セレガの先代モデルを見て感動した経験が、日野自動車に入社するきっかけのひとつになりました。日野セレガの新モデルを見た子どもたちが、同じように感動してくれたら嬉しいです。そしてそれが日野自動車への憧れにつながっていければと思います。
遠藤:わたしも日野セレガの新モデルは次の世代の憧れの存在になってほしいです。今回、開発するにあたって何がかっこよくしているのか徹底的に考えた時に、「くびれ」に日野セレガらしさがあると気づきました。次の開発をするときも、日野セレガらしい良さは残しながら、継承していければと思っています。
沼岡:私たちの世代は、日野セレガの先代モデルを子どもの頃に見た記憶が、現在の仕事に取り組む原動力になっています。今回の日野セレガの新モデルが、誰かにとっての憧れの車になってくれることを願っています。

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