ダカール・ラリー2020
販売会社メカニックインタビュー
''世界一過酷''と言われるモータースポーツ、ダカール・ラリー。
日野自動車は、1991年に日本の商用車メーカーとして初めて参戦以来、連続29回完走を達成しています。そのレース車両の整備を担当した、全国の日野自動車販売会社で働いている整備士から選抜されたメカニックの皆さん。
レースを終えたばかりの今の気持ちから、日野自動車を就職先に選んだ理由、仕事のやりがい、整備士を目指している学生に対するメッセージを伺いました。
インタビュームービー
レースメカニック プロフィール
整備も世界一過酷!?

2019年4月の選考会を経て、日野チームスガワラ(※)に加わったメカニックの皆さん。
''世界一過酷''と言われるダカール・ラリーへの挑戦を終えた今のキモチとは?
※日野自動車と日本レーシングマネージメントで構成されるダカール・ラリー共同参戦チーム。
― 達成感とちょっとの寂しさ
(渡邊啓)
― 仲間と戦った充実した数日間
(星島)
― 気がつけば、チームはひとつに
(永田)
― キツイ毎日が報われた日
(渡邉恭)
渡邊(啓):ゴールした時は涙をぐっとこらえました。1回泣いちゃうと涙腺崩壊しちゃうので。達成感はもちろんありますけど、あっという間に終わってしまい、ちょっと寂しい気持ちもあります。1年間この4人でずっとやってきましたからね……。あと、なぜか自分だけ初日に寝袋が届かなかったハプニングがありました(笑)。
星 島:ゴールした時は、達成感より安堵感の方が大きかったですね。10日目で2号車がリタイアした後は ''こういったところを見逃してはいけない''とか、自分たちの作業についての見方が一気に変わっていきました。啓介(群馬日野自動車・渡邊メカニック)と一緒に情報共有しながら整備に集中した日々は、自分の人生の中でもすごく充実した数日間だったと思います。

点検整備についてドライバーと打合せを行う日野チームスガワラのメカニックたち
永 田:最初は、自分が一番年上だからこの4人をまとめなきゃという気持ちがありましたが、みんなそれぞれの得意分野でリーダーになり、自然とまとまっていきました。年下だけど先輩みたいなメンバーもいるし、そういったところは今までになく新鮮でしたね。現地の食事にはみんな苦労していましたが、自分は何でも食べられたので順応性抜群でした(笑)。
渡邉(恭):製作から携わった車両をレースで走らせることができて、すごく楽しかったです。やはり世界一過酷なラリーと言われるだけあって、''整備も世界一過酷''でしたね。前半は、ほとんど夜通しで、シャワーも浴びられない中、ずっと整備をしていました。11連覇(※)できたので、ひと安心しています。
※トラック部門排気量10リットル未満クラスで優勝し、チーム史上最多の11連覇を達成。

2台揃って整備を行う日野チームスガワラ
ボクらがダカール・ラリーに挑んだワケ

日野自動車販売会社の整備士にとって、ダカール・ラリー挑戦は大きな目標のひとつ。
その挑戦は何がきっかけだったのでしょうか?
― チャンスは自分からつかみにいくもの
(渡邊啓)
― 父親に買ってもらった日野レンジャー
(星島)
― 10年越しの挑戦への思い、再燃
(永田)
― 先輩が近づけてくれたダカール・ラリー
(渡邉恭)
渡邊(啓):入社式の時に観たレース映像でダカール・ラリーを知ったんです。ただその時は、縁のない世界かなと(笑)。HS-1(※)の取得やサービス技術コンクールでの優勝を経験したことで、「ダカール・ラリーに挑戦しないか?」と声がかかりました。''チャンスは自分からつかみにいくもの''という思いがあり、すぐに「やります!」と返事をしました。
※日野サービススタッフ技術資格1級の略称。サービス(整備)スタッフのスキルアップを目的とした日野自動車販売会社の社内資格制度。
星 島:子供の頃、父親にダカール車(日野レンジャー)のプルバックカーを買ってもらって、ダカール・ラリーに興味を持ちました。そこからモータースポーツを観たり、クロスカントリーで走るようになって。トラックが好きで岡山日野自動車に就職し、チャンスが巡ってきたので挑戦しました。実際にレース車両を触った時は、感動してしばらく動けませんでした。

永 田:10年くらい前には出場に必要な資格は持っていて、挑戦したい気持ちもありましたが、異動などでタイミングが合わなかったんです。当時は東北海道日野自動車からの出場者がまだいなかったし、本当に挑戦できるかどうかも分からず……とモヤモヤしていたところ、2014年に上司が出場したのをきっかけに、''自分も行きたい!''という思いが再燃しました。

渡邉(恭):小さい頃からF1などモータースポーツに興味があって、大人になってからは自分の車をいじるのが好きに。ダカール・ラリーのことは東京日野自動車に入社する前から知っていましたが、現実味がなく''行けないんだろうな''と思っていたんです。でも先輩が出場したり、周りからの後押しがきっかけとなって挑戦しました。

日野のトラックって、カッコいい!

普段は日野自動車販売会社の整備士として働く皆さん。
数ある乗用車ディーラーではなく、商用車ディーラーである日野自動車を就職先に選んだのはなぜでしょうか?
― 面白さが詰まったダイナミックな整備
(渡邊啓)
― 憧れの車を触りたい、直してみたい
(星島)
― 商用車ディーラーで自分を高める
(永田)
― トヨタグループという安心感
(渡邉恭)
渡邊(啓):自分のなかでは''トラックといえば日野自動車''というイメージ。日野車が一番カッコいいと思うんですよね。トラックはオーバーホールだったり、トランスミッションのメンテナンスだったり、乗用車にはないダイナミックな整備ができたりするのが面白い。そういったいろいろな整備ができるということで、日野自動車しか考えてなかったです。

星 島:子供の頃から''トラックといえば日野レンジャー''だったので、憧れの車を触ってみたい、直してみたいというのが日野自動車を選んだきっかけ。それにオートマ車よりもマニュアル車の方が好きなので、必然的に商用車ディーラー志望に。周りの反応も「日野自動車ならトヨタグループだし、安心だね」という感じで、専門学校の先生からも勧められました。

永 田:通っていた専門学校に特別講師として菅原義正さん(※)が来て、グラウンドでレース車両を走らせてくれたんです。そこでダカール・ラリーに興味がわき、就職先は日野自動車一択でした。エンジンをオーバーホールすることにも憧れていたので、整備士として技術を上げるためには商用車ディーラーと決めていました。
※日野チームスガワラ前代表。ダカール・ラリー連続完走20回および連続出場記録36回を誇る(両記録ともギネスの世界記録に認定)。
渡邉(恭):専門学校の先生から''オーバーホールまでしてきちんと直すのは、乗用車ディーラーではなく商用車ディーラーだ''と聞いて、車をいじることが好きだったのもあり日野自動車に興味を持ちました。あとトヨタグループの会社であることや、日曜日が休みであること、福利厚生も選ぶ理由になりましたね。(※)
※休日や福利厚生は、販売会社によって異なります。
ボクらの成長を、会社も応援

ダカール・ラリー出場の選考条件にも含まれる「HS-1」(※)などの社内資格をはじめ、日野自動車販売会社では人財育成カリキュラムやバックアップ体制が充実しています。
※日野サービススタッフ技術資格1級の略称。サービス(整備)スタッフのスキルアップを目的とした日野自動車販売会社の社内資格制度。
― 勉強会で短期集中!対策は本番さながら
(渡邊啓)
― HS-1取得に近づけた出前研修
(星島)
― 会社のバックアップは費用面からも
(永田)
― ディーラーとメーカー、
必要な知識は両者から(渡邉恭)
渡邊(啓):HS-1取得に向けて、座学と実技の勉強会を会社でやってもらったんです。試験の1~2週間前に受験者が集まって、実技には実際の車両を使って。独学では分からないところを直接教えてもらったり、みんなで意見を出し合ったりしながら本番に近い形で習得しました。
星 島:サービスマスターコース(※)の講師を何度か会社に招いて出前研修を開いてもらい、座学も実技も実践で使えるような知識をみっちりと学びました。大・中・小型の実車を使って、実務では分からないような作業や点検方法などを勉強できたので、受講して本当に良かったです。
※日野自動車販売会社向け人財育成プログラム。

永 田:HS-1の資格を取るには、まずは大型自動車免許や牽引免許が必要です。取得にかかる費用は会社にバックアップしてもらって、すごく助かりましたね。(※)乗用車ディーラーでは必要のない免許ですが、持っていれば商用車を整備する上で役立ちます。
※福利厚生制度は販売会社によって異なります。
渡邉(恭):メーカーが行っているサービスマスターコースという、高度な整備技術が習得できる研修に10カ月くらい参加させてもらいました。それに加え、会社の勉強会でもいろいろ教えてもらい、実務だけじゃ足りない部分をこういう形で学べたことが、HS-1取得につながったと思います。

教えて!仕事のやりがい、面白さ

仕事は決してラクではないけれど、それを上回る''やりがい''がたくさんあります。
皆さんは何をやりがいに、毎日の仕事に打ち込んでいるのでしょうか?
― ''ありがとう''がエンジンに
(渡邊啓)
― みんなで悩んで、見つけて、修理していく
(星島)
― 確実に、時間通りに、手渡せる喜び
(永田)
― ''働く車''を直す誇り
(渡邉恭)
渡邊(啓):出張して故障車を路上整備した後、お客様から「ありがとう!助かったよ」と言われた時に一番やりがいを感じます。部品が重いので身体への負担はありますが、今は専用のツールを使うと少しの力で脱着ができるので、昔と比べたら大変さは減りました。慣れるとコツもつかめるし、作業中は先輩が目を離さないようにしているので、不安になることはないですよ。
星 島:トラック・バスは人を乗せて運ぶもの。もしここで手を抜いたら車のブレーキが利かなくなって……など、ミスひとつ許されないのが一番大変なところですが、それを1人ではなく、みんなで悩んで助け合いながら直していくことにやりがいを感じます。次の車検の時、何のトラブルもなく戻ってくると''あー、やってて良かった''と思いますね。
永 田:エンジンを組み終えた車両が問題なく走った時や、故障で困っているお客様に時間通りに直して手渡せた瞬間は、すごくやりがいを感じますね。重量物を扱うので体力を使うし大変な時もありますが、負担を減らす便利なツールもあるので、後輩にはなるべく取り入れてもらっています。

渡邉(恭):乗用車と違って、トラック・バスは''働く車''です。道端で止まってしまって、仕事で使えないかも……と焦っているお客様のところへ出張整備で駆けつけることがあります。自分たちが『直して当たり前』と思ってやっていることでも、「ありがとう!」ってすごく喜んでもらえると、やりがいを感じますね。

拝啓、未来の整備士たちへ

仕事の現場で活躍し、世界の舞台を経験した皆さんから、整備士を目指す学生たちに贈るメッセージ。
― 今は夢がなくても、大丈夫
(渡邊啓)
― 不安を安心へと変えてくれる仲間がいる
(星島)
― 整備士資格がなくてもダカール・ラリーを
一緒に目指そう(永田)
― やりたいことを支えてくれる場所がある
(渡邉恭)
渡邊(啓):学校の先生はよく''夢を持て''と言っていたんですが、自分にはなかったんですよ。ダカール・ラリーは入社してから見つけた夢。だから無理に夢を持つ必要はないかな。ただ目標は常に持ってほしいですね。目標を持って仕事をしていれば、いつか夢は見つかると思うので。その時に頑張れば良いんじゃないでしょうか。

星 島:過酷なレース中でも思春期の男の子たちみたいに仲間と楽しめる、そういう舞台を用意できるのは日野自動車ならではと実感しました。仕事で何か困っても、先輩後輩関係なく周りの人が助けてくれる環境なので、商用車ディーラーだからといって不安にならずに入社してくれたら嬉しいですね。

永 田:自分が尊敬している師匠は、高卒で入社してから整備士資格3級、2級を取得してダカール・ラリーに出場しました。高校の普通科から入社する人も多く、工業系でなくても整備士としてバリバリ働いています。仕事を早めに切り上げて講習に通わせてもらう(※)とか、会社のバックアップも万全なので、頑張ればダカール・ラリーに挑戦することもできますよ。
※研修等の内容は販売会社によって異なります。

渡邉(恭):働いていく上で覚えなきゃいけないことはたくさんありますが、研修をはじめ全面的に会社がサポートしてくれる(※)ので、安心して働けます。自分のやりたいことを支えてくれる環境も整っているので、ダカール・ラリーへの挑戦のように、目標をひとつでもふたつでも見つけて頑張ってもらえたらと思いますね。
※研修等の内容は販売会社によって異なります。

これからボクらが歩む道

今回のレースで得た貴重な経験は、会社に戻ってからも活かされていきます。
皆さんがこれから歩んでいく道とは。
― レースで気づかされた仲間のチカラ
(渡邊啓)
― 世界で通用する仕事を誇りに、
後輩へとつなげていく(永田)
― 経験を次の世代につなぐ
(渡邉恭)
― 1人では何もできない、
だからみんなの声が必要(星島)
渡邊(啓):チームで動き、全員で苦難を乗り越えたダカール・ラリー。それは会社でも同じで、整備の現場の考えだけでなく、フロント(※)や事務を含め全員で動かないと目標は達成できないと改めて気づかされました。そしてダカール・ラリーを目指す人たちには''こんなに楽しいところがあるんだよ!''と伝えたいです。
※主にお客様対応をメインとするサービス(整備)スタッフのこと。
永 田:ダカール・ラリーでやっていたことは、時間を守って作業をするとか普段の仕事でやっていることと基本的には変わらなかった。これからは、今やっている整備という仕事はすごく重要で、しっかりやっていればレースでも通用するということを後輩たちに伝えていきたいですね。そして、自信や目標をもってダカール・ラリーにも挑戦してもらいたいかな。
渡邉(恭):レース中でも普段の仕事でも、やることはほぼ変わらないけど、環境の違いでありえないことが起きたりするのを再確認できました。自分が所属する部署は東京日野自動車の拠点スタッフと接する機会が多いので、後輩たちに今回の経験を伝えて、整備士の士気を高めていきたいですね。
星 島:この1年の経験を胸に刻んで、ひとつも無駄にしないよう仕事に活かしたいです。部署内でそれぞれ担当が違っていても、1人で考えて作業はできないし、1人で物事は決められない。みんなの意見を取り入れられるような人間関係を築きながら、これからの日野自動車での人生を歩んでいきたいと思っています。
