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「垣根を越えて、チームワークで夢を追う」
“人をつくる”長久保賢次・技術担当役員

人材育成こそがラリー活動の持つ意義

長久保はダカール・ラリー参戦車の開発という技術的な部分をまとめる一方で、日野自動車がこのラリーに参戦し続ける意義を広く浸透させることにも、心血を注いでいる。

「もちろん、日野自動車という存在やその製品を世界に広めたいという気持ちもありますが、一番大事なのは人づくり。ラリーを通じてさまざまなことを経験してもらうことで、人材を育成する。これこそがダカール・ラリーに参戦する意義だと思っています。これは、現地でマシンを整備または修理するメカニックの方々はもちろんのこと、設計に携わる技術陣にとっても同じ。どういう設計をしたら安全に走れるとか、壊れないとか。その結果を、後の市販製品づくりにフィードバックさせるというミッションにもクイックに対応していきたいと考えている」

これまでも、ラリー活動に携わってきた技術陣が大きな誇りを持ち、普段の仕事に活かしてきたという歴史はあるが、「会社全体としての効果が見えづらい環境だったのではないか?」と感じている長久保。だからこそ、参戦の意義を声高らかにアピールして、「全社の財産として共有していきたい」と考えている。

新型車両を入念に整備するメカニックメンバー
設計に携わる技術陣等、日野社内から選抜された「新生チームダカール」メンバー

垣根を、乗り越えろ!

そういう背景もあって日野自動車は、全社一体化と結束力の強化を図り、参戦の意義とその効果をより明確にするため、「新生チームダカール」として各部門の精鋭を約70名も招集。マシンづくりおよび「日野チームスガワラ」のサポートに取り組んでいく。チームの現状を長久保は、「みんな遠慮がちだからまだまだとはいえ、個々の熱量が次第に増えてきている」と話す。

「今後、自分が携わる部分がもっと増えてくれば、みんなもっといろんなことが自発的にやりたくなって、提案してくれるだろうと思っています。そうなるのを待っています」

そのために長久保は、チームの雰囲気づくりにとにかく気を遣っている。これは長久保が、チーフエンジニアを務めていた時代からこだわってきたこと。真骨頂である。

「今回の『新生チームダカール』では、いろんなメンバーに加入してもらいました。若い人から大ベテランまで、中には役職を持っている人もいますが、部署だとか役職だとか年齢だとか、そういう垣根を乗り越えて、一緒に切磋琢磨しながらよいマシンをつくってもらいたいと考えています。そしてここで勉強したことを、本来の組織に戻った後には多くの仲間に広めてもらい、その部署における起爆剤となるような存在になってもらいたい」

いま長久保は、「新生チームダカール」において、若い技術者にも積極的に声をかけ続けている。自分の立場が立場だけに、相手がなかなか自由に意見を発せられないかもしれないことは百も承知。それでも、この付き合いを続けていくことで、本音で語れる“同志”になれると信じている。ダカール・ラリーは、卓越したチーム力がなければまず勝てない。名手・長久保は、マシンづくりをまとめながらチームを育て上げる。

車両開発・整備に一致団結する、参戦&新生チームダカールメンバー