HINO

「垣根を越えて、チームワークで夢を追う」
“人をつくる”長久保賢次・技術担当役員

新生チームダカールのトップは、まさかの“・・・・”!?

「良きリーダー」の定義は多様だが、これを「チームの調和を図り、熱意で全体を牽引する一方で冷静な眼を持つ」とするなら、長久保賢次が持つリーダーとしての資質は完璧である。

長久保は、「新生チームダカール」として活動する日野自動車において、今春から製品開発領域長として技術担当役員を務める人物だ。19年4月、社内においてダカール・ラリーに対する取り組みが刷新。ボンネットタイプの新型参戦車を導入することもあり、これまで以上に技術陣が表に立って、全社一体となった活動として盛り上げていこうという方針が明確になった。この際に技術関連の代表として指名されたのが長久保だ。

※新生チームダカール:日野自動車社内に技術担当役員と専任のチーフエンジニアを設置し、その下に各分野の精鋭約70名のメンバーが集結したチーム

「光栄にも全体をまとめるポジションに抜擢されて、いまは細かい不安がありながらもやる気がみなぎっています」

こう語る長久保の起用が、適任という社内判断に基づくものであることは言うまでもない。しかし、実のところ彼はこれまで、ダカール・ラリーに関連する業務に携わってきた経験が皆無。そう、長久保は言わば“ダカールの素人”なのである。

「新生チームダカール」について語る、長久保技術担当役員

ずっと興味を抱いていたダカール・ラリーの世界

「僕はバスのシャシー設計から技術の世界に入って、近年はトラックのチーフエンジニアなどを担当してきました。ひとつのクルマを全体的にまとめ上げるという開発については、比較的得意だと自負しています。その一方で、ひとつの技術に秀でているものがあるかというと、そこまでプロフェッショナルな要素が自分にあるとは言い切れないので、少し不安はありました」

ダカール・ラリーの技術担当役員を任されたときの心境を、長久保は率直に語る。しかし、頭をよぎったのは不安ばかりではない。いや、むしろ不安など些細なものに過ぎず、長久保のハートには熱い想いが次々に湧いてきた。

「ラリーマシンに求められることの中で、とくに重要なのはパワーに加えて走行安定性だと思っています。つまり、クルマの総合的な性能が問われるわけで、これをバランスよく高めるのは自分が得意としているところ。チームを引っ張っていける部分も多いと感じています。入社してからこれまで、ダカール・ラリーのマシンに関して、設計図面を描いたり評価をしたりという直接的な立場になったことはありません。ただ、かつてはダカール・ラリー参戦車のベースとなっている日野レンジャーのチーフエンジニアをしていましたし、そもそも若いころはクルマのF1や自分でも乗っていたバイクのレースを観るのが大好きでしたから、社内のダカール・ラリーに対する活動やレースの経過を、ずっと興味深く見ていました」

1号車:日野レンジャー(HINO 500シリーズ):左 2号車:北米専用車(HINO 600シリーズ):右