HINO

「チャレンジングスピリッツこそが伝統」
虎視眈々と攻めの態勢を整える菅原照仁

勝つことだけでなく、得ることにもこだわる

「自分がダカール・ラリーに関わるようになったころというのは、ちょうど時代的にもいろいろ厳しくて、メカニックとして最初にダカール・ラリーの現場に行った1998年のチームメンバーは、乗員3名とメカニック2名のわずか5名体制。翌年はさらに減って、乗員3名にメカニック1名(かつて認められていたビバーク地を飛行機で巡るエア・メカニック)という少人数でした。それを思うと、長い年月をかけてここまで大所帯となったことに、感慨深いものがあります。同時に、これまでしぶとく活動を続けてきてくれた父に感謝しています」

照仁は、レース参戦に向けたスポンサー活動に奔走した1997年から現在までの長い歴史と、そこにある親子の物語を振り返り、目を潤ませた。一方で、新代表として「日野チームスガワラ」を受け継ぎ、こちらも新体制となった日野自動車社内のメンバーと合わせた総勢100名を超える仲間たちとともにダカール・ラリーにおける新たな闘いに挑む身としては、未来を見据えて気を引き締める。

「多くの方々から協力を得て活動するからには、意義がないといけないと考えています。レースですから、勝つことはもちろん大事。だけど、それがすべてではありません。この活動に関わるすべての人が、厳しいレースの世界を通じて多くの経験を積み、それを今後の自分やチームや会社の財産とすること。そこに、大きな意味があると思うんです」

総合優勝できなければクビ、という覚悟

そしてそんな“大義”を掲げるからこそ、照仁はみずからに大きなプレッシャーをかけている。

「今年から『日野チームスガワラ』と日野自動車社内ともに新体制となり、一丸となって新たな挑戦をスタートさせます。明らかな結果として見えるレース成績という点では、トラック部門での総合優勝を狙うというのが共通目標。2020年にすぐこれを狙うというわけではなく、3年後までに総合優勝争いができるチームにするということを、全員が目指すひとつのゴールとします。チーム代表としては、これが達成できなければクビだぞというくらいの覚悟を持って臨んでいきます」

「成績がすべてではない」と言いながら、照仁が成績にもこだわるのは、レースのプロフェッショナルとしてのプライドに加えて、明確な目標の提示とそこに対する挑戦が、個人とチームを強くすることを知っているから。これまでの実績を、クラス10連覇という連勝の歴史と見てしまえば、その地位を脅かすライバルがほとんどいない絶対王者という立ち位置になり、これがモチベーション低下につながるかもしれない。
しかし「日野チームスガワラ」と日野自動車が狙うのは、あくまでもトラック部門の総合優勝。これが達成されるまで、挑戦者であり続ける。そして挑戦に対する熱意は、照仁を含む多くの人間が義正から継ぐ大きな伝統でもある。

1号車:日野レンジャー(HINO 500シリーズ):左 2号車:北米専用車(HINO 600シリーズ):右