HINO

長久保賢次と榎本満
リーダーは静かに戦いの日々を待つ

マシンはハイスピード化に対応

ダカール・ラリー2020を戦ううえで、マシンに関しても大きな変化があった。チーフエンジニアを務める榎本満は、新型となる2号車が持つアドバンテージをこう語る。

「2号車はボンネットタイプの車体としていますが、これを導入した一番の目的は、ドライバーに振動や衝撃などを低減するためです。これにより、高い車速を維持した走りを狙っています。テストおよび実戦で、数々のデータを取得することで、狙いどおりの効果があることも実証できています。近年のダカール・ラリーはハイスピード化が顕著ですが、ニューマシンはこれに対応できるポテンシャルを備えていると自負しています」

2号車に導入されたもうひとつの注目技術はオートマチック・トランスミッション(AT)。榎本は、これがもたらす恩恵も大きいと考えている。

「ATの利点は、エンジン回転数が高めの状態をキープして、トルクやパワーが稼げる領域をうまく使って走れること。つまりこれも、速いスピードを維持することにつながります」

一方、ダカール・ラリーへの導入が2年目となる1号車についても、ポテンシャルアップに抜かりはない。ボンネットタイプでATの2号車を導入したことで、1号車に関しても、これまで持っていた長所を残したまま、より改良すべきポイントが明確になった。

「1号車は、エンジンとサスペンションを中心に熟成を進めました。エンジンに関しては、低回転域からうまくトルクを発生させるような仕様とすることで、マニュアル・トランスミッションのままでも、これまで以上に速く走れるような特性としています。一方で、これまで以上に高いスピードをキープできるようになると、ドライバーへの負担が増えるので、サスペンションの仕様変更で振動などを減らす改良を施してあります」

榎本満チーフエンジニア
細部にわたり調整を続けるメカニック

成長を遂げた4名の販売会社メカニック

もちろん、進化しているのはマシンばかりではない。チームの体制、そしてメンバーも、本番に向けて成長を続けている。榎本がとくに着目しているのは、チームに加わっている4名の販売会社メカニックたちだ。

「彼らは、もともと超一流の整備技術を持つメカニックですが、チームに合流した直後は、これまで扱ってきた車両との違いだけでなく、レースという特殊な環境ということもあり、かなり戸惑いもあったようです。しかしテストと実戦を経験したことで、次に自分が何をすべきか、瞬時に判断して的確な作業ができるようになっています」

もちろん、販社メカ以外のメンバーも、着実にスキルアップしている。榎本は「あとはチームとして、現場での作業に向けたシミュレーションを重ねるだけ」と話す。ダカール・ラリーは1人では戦えない。チームとして、上位を狙う。

一段と頼もしくなった販売会社メカニック