HINO

「知らないことを不安がっても仕方がない」
楽しむことをパワーに変える塙郁夫

ATの実戦開発を担うスペシャリスト

「一番のポイントはボンネットタイプでカッコいいところ……なんていうのは置いておいて、2号車はブランニューモデルで、私を含めた3名はいずれも、乗員として初めてダカール・ラリーに初挑戦。着実に走り切るという目標に対しては、初めて尽くしで変に欲張ろうとしないぶん、ちょうどよいのかもしれません」

2019年にドライバーとして「日野チームスガワラ」に加入して、新型となる2号車をドライビングする塙郁夫は、いつもどおりの柔和な表情と口調で、ダカール・ラリー2020に向けた抱負を語った。10月中旬、日本でのマシン最終テストが終了。「テストと実戦で少しずつ改良を進めてきました」と塙が語る2号車は、ボンネットタイプキャブやオートマチック・トランスミッション(AT)を採用する。一方で塙は、20年以上もAT車でオフロードレースを続けてきた実績を持つ。

「僕の場合は、ATとMTのどちらかを選べと言われたら、間違いなくATを選ぶというようなドライバー。自分がこのチームから与えられた役割は、ダカール・ラリーという過酷な舞台に挑戦しながら、ATを仕上げていくことだと認識しています」

悪路走行でATをテストする2号車

砂丘におけるATの優位性

これまでの豊富なオフロードレース経験で、ATの利点は当然ながら知り尽くしているが、「日野チームスガワラ」に加入してから約半年間のテストや実戦で、ダカール・ラリーを戦うトラックとの相性も再確認できた。

「ATの長所は、トラクションが途切れないということ。MTの場合、変速時にどうしてもクラッチを切る必要があり、ダカール・ラリーのステージとなる砂丘などでは、その瞬間に加速が途切れて車体の姿勢を崩す要因となります。安定してトラクションが稼げるというのは、ダカール・ラリーにおいても強力な武器になると感じています」

とはいえ、塙にとっては今回が初めてのダカール・ラリー参戦。「不安がないと言えば、それは嘘になる」と自身も認める。それでも、これまでに培ってきた豊富な経験は、本番を目前に控えた塙に冷静さを保たせる。

「伝統あるダカール・ラリーではありますが、サウジアラビアで開催されるのは今回が初めて。僕は今回が初めてのダカール・ラリーですが、他のドライバーやチームもサウジアラビアでの経験はほとんどないはずなので、それを思ったら、スタートする前からあれこれ考えすぎても仕方がないかと……。いつも明るく元気に、最後まで走り続けるということだけ考えていきたいと思います」

スタッフと仕上がりを確認する塙選手