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「経験を活かすチャンスが来るかも」
新開催地に波乱の展開を読む菅原照仁

チーム新代表というもうひとつの顔

照仁は今季、父親である義正のダカール・ラリー引退により「日野チームスガワラ」の新代表に就任。1号車のドライバーとしてだけでなく、チーム全体を率いる立場にもある。しかしそこに、不安は一切ない。肩書きこそ昨年とは違うが、これまでもチームの中枢で戦ってきた。義正は退いたが、頼れるドライバーが2号車を駆る。塙郁夫だ。

「塙選手のことは、彼がチームに加入するよりもずっと前からよく知っています。数々のオフロードレースで輝かしい戦歴を残し、ラリーレイドの経験もあります。新型となる2号車にはオートマチックトランスミッションが採用されていますが、塙選手はこれまでずっとオートマでレースをしてきて経験豊富。非常に信頼しています」

塙は、ダカール・ラリーの舞台となるような本格的な砂丘でのレース経験は少ない。しかし照仁は、これに関してもまったく不安視していない。

「ひと昔前のダカール・ラリーでは、砂丘が得意なドライバーが上位にずらりと並んでいました。しかしダカールがスプリントレース化した現在では、彼らがトップ10にすら食い込んでこれないことが多々あります。ですから、砂丘でのレース経験についてはまるで心配しておらず、むしろ塙選手のスピードが大きな武器になると信じています」

菅原照仁が信頼をおく2号車ドライバー塙選手(右)

リスクを許容しながら上位を狙える新体制

塙が持つ“スピード”という武器は、2号車だけでなくチームとして、あるいは照仁が駆る1号車にとっても、大きなアドバンテージになる。

「現在のダカール・ラリーでは、同じチームのクルマが近い場所で走り続けることが、上位進出するためには非常に重要。ハイスピード化はどうしてもリスクが増えてしまいますが、どちらかの1台にアクシデントが発生したときに、バックアップできるような位置にもう1台がいれば、お互いをサポートしながら上位を狙うことも可能だからです。塙選手と協力しながら、2台のマシンで攻めの走りを狙いたいと思います」

現時点で、いわゆるチームオーダーや役割分担はない。とはいえ本番のステージを重ねた結果、状況を見ながら臨機応変に戦略を練ることはあるかもしれない。そこでも、照仁に判断力と統率力が求められる。しかし照仁は、「新代表という立場にはなりましたけど、やっていることは何も変わっていませんから」と素っ気ない。

「アフリカから南米にダカール・ラリーの舞台が移ったときに、いろんな変化があったように、サウジアラビアで初開催される今大会は、いろんな変化があるかもしれないという意識はあります。でも、根底はこれまでと同じ。昔からやり続けてきたことの上に成り立っているんだと思います。そういう意味では、アフリカから南米への開催地の変更を経験しているというのは大きいのかも。あのときも波乱続きでしたが、ほとんどの選手にとって未知の世界となるサウジアラビアですから、荒れた展開になるかもしれません。最初からあまり前のめりになりすぎず、ライバルにとっての波乱を自分たちのチャンスにしていきたいと思います」

「日野チームスガワラ」メンバーが見守るなかテスト走行する1,2号車
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MOVIE DATA

  • time : 02'55"