HINO

「経験を活かすチャンスが来るかも」
新開催地に波乱の展開を読む菅原照仁

熟成型の1号車は“踏めて、速い”

ダカール・ラリー2020に向けた日本での最終テスト走行を終えて、「日野チームスガワラ」の1号車をドライビングする菅原照仁は、たしかな手ごたえを感じていた。

「今度の大会では2号車がブランニューモデルとなるのに対して、1号車はダカール2年目。戦闘力では2号車が優れている部分も多くありますが、熟成ということでは1号車のほうが進んでいます。ダカール・ラリー2020に向けて、1号車はそれほど大きな変更をする必要性はないという判断から、細かな部分のアップデートに時間をかけました」

すでに多くのデータを持つ1号車。本番に向けての改良は、ドライバーである照仁がラリーの現場で得たインプレッションも十分に反映してある。例えば、ターボチャージャーの小径化。多少のパワーを犠牲にしても、ドライバビリティを優先した。

「新型導入初年度となった2019年は、馬力重視の仕様で臨みましたが、実戦を走ってみると、必ずしもそのポテンシャルを発揮しきれるシーンばかりではありませんでした。そこでダカール・ラリー2020に向けてターボのセッティングを見直し、必要なときにしっかり加速させられる仕様に改良してあります。“扱いやすくて、結果的に速いクルマ”というのが狙いです」

テストコースを疾走する1号車

砂丘と波乱を味方に、総合トップ5を狙う

近年のダカール・ラリーは、ハイスピード化が進んでいる。その中で「日野チームスガワラ」は、トラック部門の排気量10リットル未満クラスに参戦を続けて、2019年には10連覇を達成。しかし将来的に狙うのは、トラック部門総合順位での上位入賞である。その夢に向けて、大型車との馬力差を埋める戦略ではなく、中型車のアドバンテージがより活きるエンジン特性を選択。ここにも、長年にわたりダカール・ラリーで活躍を続けてきた照仁の経験が光る。

「我々の実力は、“がっぷりよつ”で組んで総合優勝を獲得できるレベルにはまだ達していないと感じています。ただしマシン性能という点では、大型と中型ではどちらにも長所があり、マシンによる差はそれほど大きくないという認識。サウジアラビアでダカール・ラリーが開催されるのは2020年が初めてですが、ドラマが起きやすい砂丘や未知の土地ということに起因して波乱の展開となったステージで、我々が中型ならではの優れた運動性能を発揮することができれば、総合上位のチャンスはあるはずです。まずは総合トップ5。これを実現できると、将来的な表彰台登壇が見えてくると思います」

目指すは総合トップ5と決意を語る