HINO

社員ナビゲーターを突き動かすのは
抱える無念、広がる夢と使命感

10連覇の照仁も信頼する“メカニックとしての力”

「昨年の悔しさがあるからこそ、いまはとにかく使命感に燃えています。ナビの負担が非常に多いことも現場で感じていたので、3人目の選手を同乗させることは必要な流れだと思うし、自分がそれに選ばれて光栄です。昨年に続いて、今年も車両製作の段階から携わってきたので、自分がナビを務めるマシンの隅々まで把握しているつもり。ラリー中にトラブルが発生しても、迅速かつ冷静に対応して、仲間たちが待つビバークに必ずマシンを帰還させます」

望月は、すでに気合十分。しかしその熱意だけで、第3の選手に“合格”したわけではない。ダカール・ラリー2019で照仁が運転するマシンのメカニックを担当した望月は、2019年7月に行われるシルクウェイラリー2019でナビゲーターとして照仁のマシンに同乗する。昨年から望月の姿を見てきた照仁も、彼の能力に太鼓判を押す。

「昨年のダカール・ラリーで、彼の力量は理解したつもり。安心してナビを任せられる存在だと思っています」

第3の選手である望月が乗るのは、キャブの中央席。メカニックとして得た経験を活用しながら、まさに真横で照仁を支える存在となる。

ダカール・ラリー2019 ゴール地にて

“仲間”への感謝を忘れないナイスガイ

2018年に日野自動車の社内でダカール・ラリーのメカニックを募集したとき、真っ先に名乗りを上げたひとりが望月だった。しかし望月は、「それが実現できたのは仕事仲間のおかげ」と感じている。

「あのとき快く送り出してくれた、パワートレーン実験部の同僚や上司には、とにかく感謝しています。彼らの後押しがなければ、こうやって選手という新たな道を歩もうとする自分は存在しません」

同時に望月は、自分を取り巻く現在の環境にも感謝の言葉を口にする。

「2018年に渉外広報部へ異動してからは、ラリーへの参戦活動に没頭できる環境で仕事ができています。僕がこうして夢にチャレンジできるのも、会社やチームが築き上げてくれた環境のおかげです」

生来の明るく竹を割ったような性格から、メカニック陣を鼓舞してモチベーションを維持させるなど、現在ではチームに欠かせない存在となった望月。一方で、趣味のカメラでは数々のコンテストに入賞してきた経歴があり、その作品には望月の繊細な一面も表れている。

爽やかで清々しいだけでも、細やかなだけでもない。製作の段階からマシンに携わり、海外ラリーでの現地メカニック経験もあり、ライセンス取得によりドライバーとしての気持ちも知った。コンソールボックスならぬ“引き出し”の多さを武器に、いま望月は新たなシートに着く。

写真:(中央)望月ナビゲーター、(右)菅原チーム代表兼ドライバー、(左)染宮ナビケーター