HINO

社員ナビゲーターを突き動かすのは
抱える無念、広がる夢と使命感

ナビゲーター望月 裕司日野自動車(株)
渉外広報部

つい考えてしまう、昨年の悔しい状況

自分やチームを過信しているわけではない。レースに“たら・れば”がないことなど十分に理解している。それでも望月裕司は、今年1月のダカール・ラリー2019で大会2日目に菅原義正(当時の1号車ドライバーで「日野チームスガワラ」の元代表)がリタイアした状況に、未練を感じ続けてきた。

望月は、2003年に日野自動車へ入社。パワートレーン実験部に配属されて、主にエンジン開発の実験に携わってきた。2018年に渉外広報部へ異動し、「日野チームスガワラ」のメカニックとしてダカール・ラリー2019では現地に赴いた。

「菅原義正の車両にステアリングトラブルが発生したとき、メカニックがもしも、その場にいて、適切な対処ができていれば、リタイアにならなかったかもしれない。そうと思うと、いまでも悔しくてたまらないんです。当時の僕らは、ビバークにマシンがたどり着くことを、ただ祈りながら待つことしかできなかったわけですから」

そんな悔しさがいまも心に強く残っている望月にとって、「日野チームスガワラ」がダカール・ラリー2020に向けて導入する新たな取り組みは、自身の望みそのものでもあった。

ダカール・ラリー2019ではメカニックとして参戦した

待ち続けるメカニックから、同乗する選手へ

「日野チームスガワラ」は、ダカール・ラリー2020に向けた新たな戦略として、メカニック経験が豊富な乗員を第3の選手として追加同乗させる。これは、トラブル発生時の対応力向上を図り、総合上位を目指した攻めの走りを実現することが狙い。そして望月は、約20年ぶりとなる日野自動車の社員選手としてナビゲーターを務める。7月のシルクウェイラリー2019では、菅原照仁がドライビングする1号車に同乗。そのための準備を急ピッチで進めてきた。

「ナビとしてラリーに参戦するには、国内で開かれるレースに参戦してライセンスを取得する必要があります。シルクウェイラリー2019までにこれを実現するため、タイトスケジュールを縫ってドライバーとしてレースに挑み、ライセンスを獲得しました」

現地メカニックとして経験を積んだ後に、ナビとしてダカール・ラリーを闘う。これが実現されれば望月は、ダカール・ラリーのトラック部門「排気量10リットル未満クラス」で現在10連覇を達成している照仁と、まずは同じ道をたどることになる。

ライセンス取得のため逆輸入した愛車でレースに挑む