HINO

日野チームスガワラは
またひとつ、栄光をつかみ取った

日野チームスガワラはクラス11連覇を達成

前年までの南米から舞台を移して、中東のサウジアラビアにて初開催されたダカール・ラリー2020。そのトラック部門に、「日野チームスガワラ」は2台体制で参戦した。菅原照仁/染宮弘和/望月裕司組(日野レンジャー/HINO500シリーズ)の1号車は、初日とステージ2で2日連続のパンクを喫したこともあり、競技序盤は我慢の展開となったが、それでも前半のステージ6を終えてトラック部門の総合11番手。そのハンドルを握る菅原は、ステージ7以降でのジャンプアップに向けて自信をのぞかせていた。

「山場は後半戦。チャンスはあると思っています」

百戦錬磨の菅原。その予想はやはり的中した。1号車は、後半戦に入ったばかりのステージ7で総合10番手に浮上。翌ステージ8ではSSを総合7位のタイムで駆け抜けて、累計の総合成績では9番手まで僅か2分11秒差に迫った。その後、ビッグチャンスの到来こそなかったが、1号車は最終のステージ12までこの総合順位をキープ。総合10位でクラス11連覇を達成した。

「サウジアラビアでの初開催でしたが、事前に予想していたよりもコースの難易度が低く、中型車で大型車に挑んでいる我々にとっては、チャンスが少なかったと感じています。とはいえ、そういう状況でもしっかり全ステージを走破して、総合トップ10入り。クラス連覇の記録も更新できたので、まずは良かったと思います」

ゴール後、チームメンバーと喜びを分かち合った菅原は、笑顔を浮かべながらも冷静に、クラス優勝の感想を語った。

チーム代表 菅原照仁
クラス連覇を達成した1号車

“初”尽くしの中で奮闘した2号車

栄冠に輝いた1号車の一方で、新型車両で臨んだ2号車の塙郁夫/塙雄大/毛塚麻由美組(北米専用車/HINO600シリーズ)にとってのダカール・ラリーは、厳しいものとなった。序盤のステージ2で、走行中に車両のリアボディが破損するトラブル。ステージ4以降、競技順位がつかない賞典外としてコースに復帰したが、ステージ9でキャブ内のロールバーに亀裂が発生し、乗員の安全が確保できないと判断して競技続行を断念した。

「2号車は今回新たに開発した車両。試行錯誤やトラブルはつきもので、実際に競技を走ってみないとわからない課題も多いものです。私にとっては初めてとなる、トラックでのラリー参戦。走るのがだんだん楽しくなってきたところでリタイアだったので、とても残念でしたが、本当に良い経験をさせてもらいました」

ドライバーを務めた塙郁夫は、厳しい奮闘の時間を終えて、静かに感想を述べた。同じくダカール・ラリー初挑戦となった息子の雄大と、前年までのサポートメンバーから今季はナビゲーターを務めることになった毛塚とともに駆けたサウジアラビア。完走というリザルトは残せなかったが、参戦を通じて車両データの収集という大きな役割も果たした。一方でこの初挑戦を通じて得た経験は、3名のクルーはもちろん、2号車に関わったすべての人たちに大きな財産として残る。

サウジの悪路で奮闘した2号車
2号車のメンバー

29回連続完走、トラック部門総合で4年連続トップ10圏内

日野チームスガワラにとって、排気量10リットル未満クラス優勝は11年連続。同時に、トラック部門総合トップ10入りは4年連続となった。さらに日野自動車としては、競技完走が29回連続という快挙も成し遂げた。初めてのサウジアラビアでも数々の記録を更新することができた要因の一部を、菅原はこう分析する。

「今回から乗員を1人増やして3人乗車体制にしましたが、ナビゲーターが増えたことでドライバーとしては助かりました。従来は20分ほどかかっていたタイヤのパンクに対する処理も、人数が増えたことでロスする時間を半分ほどに削減でき、これも大きなプラス要素になりました」

競技がスタートする段階で、チーム代表も務める菅原が掲げた目標は総合トップ5。1号車、2号車とも今回は届かなかったが、それでも十分な手応えはあった。

「新開発した2号車は早い段階でトラブルに見舞われてしまいましたが、メカニックたちの頑張りによって幸いにもステージ9まで賞典外で走ることができました。タイプの違う車両でのデータ収集も有益で、メンバーたちの経験値もかなり積むことができたので、今後につなげられることができたと思います。私がハンドルを握った1号車は、改良を重ねてきたことで車両の性能を引き出せていると強く感じました。トップとのタイム差が昨年に比べて約半分に縮まったことを考えたら、狙いどおりのところにあるのだと思います」と菅原は力強く語った。

喜びを分かち合う日野チームスガワラ