Uniting our souls!! 「結束」

2017-2018年シーズン

トップチャレンジリーグ vs 九州電力キューデン ヴォルテクス

2017年11月19日(日)11:30 (駒沢陸上競技場)

  • 日野自動車 RED DOLPHINS
    日野自動車 RED DOLPHINS
  • ヴォルテクス
    九州電力キューデン ヴォルテクス

:

28 トライ数4 ゴール数4 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
前半
14 トライ数2 ゴール数2 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
14 トライ数2 ゴール数2 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
後半
19 トライ数3 ゴール数2 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
RED DOLPHINS出場選手ヴォルテクス
長野 正和1 PR徳永一斗
崩 光瑠2 HO佐藤孝樹
廣瀬 賢一3 PR廣畑光太朗
笠原 雄太4 LO浦真人
Joel Everson5 LO園中良寛
藤田 哲啓6 FL小原渉
小野 雄貴7 LF高井迪郎
千布 亮輔8 No.8平田一真
古川 浩太郎9 SH児玉大輔
染山 茂範10 SO荒牧佑輔
田邊 秀樹11 WTB磯田泰成
林 泰基12 CTB中づる憲章
Mosese Tonga13 CTB島拓也
小澤 和人14 WTB早田健二
Gillies Kaka15 FB吉田克也
久富 雄一
廣川 三鶴
金 光植
村田 毅
リッチースケルトン
田川 明洋
ヘイデン クリップス
松井 佑太
リザーブ 小野田寛文
大山貴弘
山田有樹
井上敬浩
中尾康太郎
末藤雅宣
正海智大
得点選手トライ (T/5点)前半:田邊、千布(2)、モセセ 後半:千布、田邊
ゴール (G/2点)前半:染山(4) 後半:染山、クリップス
ペナルティゴール (PG/3点) 
ドロップゴール (DG/3点) 

試合終了間際。日野自動車は敵陣の深い位置からじり、じりと攻め込まれる。

防御の網目のわずかな広がりを見逃してはくれず、やがて、自陣の深い位置まで押し込まれてしまう。対する九州電力は、海外出身者がゼロという陣容ながら懸命さ、運動量、連続攻撃へのこだわりでラグビー通の心を掴んでいた。

24歳で「経理部」の小野雄貴は、故障したサントリー出身の佐々木隆道に代わってオープンサイドフランカーに入っていた。終始ファイトして存在感を示したが、最後の局面では小さな判断ミスを犯したという。

攻め続けられた先の自陣22メートル線付近左端で、右側の味方のケアをし過ぎるあまり、目の前のランナーにタッチライン際を破られたのだ。いよいよ、危なくなった。

すでに42―33と9点リードを保っていたため、ここでトライを取られても逆転負けはほぼない。ただ、日野自動車は守りを売りにしてきたチームだ。最後のピンチをしのぐことで、プライドを示したかった。

その願いは、何とか、果たされる。そこまで持ち前の危機察知能力で試合を締めてきたインサイドセンターの林泰基が、インゴールの前に現れて迫る相手を掴む。進撃を阻止する。これ以上のスコアを許さずに逃げ切り、今季新設トップチャレンジリーグの開幕6連勝を決めたのだった。



試合は11月19日、東京は駒沢陸上競技場でキックオフされた。まず日野自動車が流れを引き寄せたのは、7-7で迎えた前半21分のことだ。

敵陣中盤右での空中戦のラインアウトから、立ったボール保持者を複数人が囲むモールという塊を形成する。さながら赤いトラックが前に進むなか、九州電力が球の位置より日野自動車側の位置でプレーを妨害した。

ここで日野自動車はペナルティーキックを得て、右タッチライン際前方へ蹴る。ゴール前でのラインアウトから、またもモールを組む。ナンバーエイトの千布亮輔がトライを決めるなどし、14―7と勝ち越した。

勢いに乗りタクトを振ったのは、スタンドオフの染山茂範である。

続く22分ごろだ。味方が自陣深い位置から中盤まで駆け上がるや、その地点から少し離れたところで待機する。パスをもらうと、競り上がる相手防御の裏へ大きなキックを放つ。向こう側の人の並び方を見定め、着実に敵陣に進んだ。

そして27分には、自陣中盤左中間での攻守逆転からパスを得る。相手の防御が揃いきっていないのを見定め、右大外へ展開。一番、隅にいた笠原が、一気に抜け出す。染山の判断が、追加点のチャンスを生んだ。

続けてフォワード陣が地道に身体をぶつけ、九州電力の防御が乱れるや、改めて染山がパスコースへ走る。九州電力防御の凸凹を突き、アウトサイドセンターのモセセ・トンガらの追加点を演出した。21―7。

27歳で「トヨタ部」に入社したての染山は、同じスタンドオフのポジションでニュージーランド人のヘイデン・クリップスと競争中。この日はそのクリップスが、国際リーグのスーパーラグビーでの故障から戻ってベンチ入りしていた。心中に危機感を募らせる染山は、「(レギュラー選びを)迷わせる」と意気込んでいた。

 28―14のスコアで臨む後半は、とどめを刺しにかかった。ハイライトのひとつは、12分までの数分間の流れだった。

 九州電力が敵陣22メートルエリアでのフリーキックから攻めようとするところへ、「品質保証部」所属でウイングとして途中出場の松井佑太がプレッシャーをかける。さらに林がタックルし、向こうの球を落とした。

 ここから日野自動車のフォワード陣が、8対8で組むスクラムで相手のペナルティーを誘発。勝ち越し時のように右側でのラインアウトを選び、モールで点を取りに行った。

「トントン、トントン、ヒノノニトン!」

 スタンドからの掛け声を背に受け、九州電力の反則を挟みながら再び同じ位置でのラインアウトからモールを固める。

相手の必死の対抗にも互いの身体は離さず、向かって右側へ一気に縦長の列を進める。「調達企画部」のフランカー、藤田哲啓が楕円球をグラウンディングし、直後のゴール成功で得点板に「35―14」と刻んだ。

 モールは力づくの動きにも映るが、実際にその成否を分けるのは細やかさである。

参加者同士での密着度合い、全員で相手のいないエリアへ進路を取る物言わぬ連携などが肝となるだけに、実際に組む人たち同士の反復練習は必須。一朝一夕では完成できないモールを真の得点源にできれば、スコアするごとにそれまでのトレーニングへの自信を深めることとなる。格上を倒すのに必要な、心のよりどころができそうだ。

 九州電力戦でモール内のボールを守ってきた小野(雄)は、「前後と横のパック(掴み合い)をしっかり締めていこうと話していた。そこは、しっかりできたと思っています」と振り返った。



とどめを刺すという後半のミッションは、果たされなかったか。

ライバルの心を折る連続得点は叶わず、逆に16分には九州電力にインゴールを割られる。続く31分には攻め込んだ先での被インターセプトから35―28と差を詰められ、42-33と大味な結果を残した。この日に当事者が得たものには、反省材料のほうが多そうだった。
 
例えば、最後の局面などで看板の防御が崩れたわけを聞かれ、フッカーとして途中出場の「生産管理部」所属の32歳、廣川三鶴主将はこう話していた。

「相手よりも攻守の切り替えが遅いなど、小さなことが失点に繋がってしまった。疲れはなかったと思いますが、確かに動きはそこまでよくはなかったです。個人、個人がレビューして、次に繋げたいです」

 今回の80分間を苦笑とともに語るのは、移籍加入の林だった。一昨季までにトップリーグの3連覇を果たしたパナソニックのレギュラーだった32歳の林は、怪我を治して臨んだトップチャレンジリーグ第4節から新天地のジャージィをまとっている。 

この日のいくつかの好カバーを「自分はそれをするために呼ばれている」とのみ振り返り、クラブの立ち位置をこう総括する。

「運動量も、精度も上げないといけない。こうと決めたことをやり切る部分はよくなっていますけど、その先の個人の判断、実際の相手を見て動く、ということがまだ足りないですね」

 トップリーグ行きを争うトップチャレンジリーグは、ここから本格化する。日野自動車は続く25日、愛知・パロマ瑞穂ラグビー場でホンダとのファーストステージ最終戦に挑む。ここでファーストステージの順位が決まる。

そして12月からは、4強勢によるセカンドステージAグループがある。1位チームが自動昇格できる、サバイバルレースだ。

すでにファーストステージ2位以上を確定させ悲願の初昇格を狙う日野自動車は、この舞台で目下首位を争うホンダ、このほど苦しめられた九州電力、今季雨中のグラウンドで辛勝できた三菱重工相模原と対峙。ライバルはいずれもトップリーグ経験者とあって、難関が待っているのは確かだ。

 だから、この午後の勝者陣営が「勝ったことだけが収穫」と言うのは自然だった。先発フッカーで「技術管理部」の26歳、崩光瑠は、決意を新たにする。

「どの試合でもそうですが、僕らはずっとチャレンジャーの立場。(これからの相手に)勝てないわけではないと思うので、自分たちのやるべきことを徹底していきたいです」

注目のクリップスもデビューするなど各ポジションの選手層で厚みを作り、モールという武器も再確認できた。以前いた常勝集団と新天地の差を如実に語る林も、「皆も何が悪かったのかを分かっているだろうし、去年だったらこういうゲームは負けていたんだろうとも思います」と、仲間の成長を感じてもいる。

ポジティブな要素も忘れず、緊張感を保って冬を迎えたい。

【細谷監督】
ブレイクダウン(ボール争奪局面)に入る2人目の選手が球の上を越えられなかった場面がたくさんあった。あとはタックル。前に出てタックルすれば相手もミスをするはずですが、その状況に持って行けなかった。いまの2点を修正しないとこの先は厳しい戦いになる。次戦への練習を内容の濃いものにしたいです。


【廣川主将】
強いて言うなら、『(苦しみながらも)勝ってよかった』。きょうのようなディフェンスをしていると、次の試合は本当に厳しくなる。やるべきことは明確です。トップリーグを目指すにふさわしいチームとなるべく、修正したいです。




【プロフィール】

Text by 向風見也 
1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライ
ターとなり、主にラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポー
ツナビ」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行
う。「現場での凝視と取材をもとに、人に嘘を伝えないようにする」を信条とす
る。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。共著に
『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。
 

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