Uniting our souls!! 「結束」

2017-2018年シーズン

トップチャレンジリーグ vs 中部電力 ラグビー部

2017年09月16日(土)15:00 (秩父宮ラグビー場)

  • 日野自動車 RED DOLPHINS
    日野自動車 RED DOLPHINS
  • ラグビー部
    中部電力 ラグビー部

:

22 トライ数4 ゴール数1 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
前半
7 トライ数1 ゴール数1 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
33 トライ数5 ゴール数4 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
後半
0 トライ数0 ゴール数0 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
RED DOLPHINS出場選手ラグビー部
加藤 凌悠1 PR齋藤 健
廣川 三鶴2 HO山森 裕之
村上 玲央3 PR本間 優
笠原 雄太4 LO近藤 貴敬
Joel Everson5 LO廣佐古 大典
村田 毅6 FL永井 若輝
佐々木 隆道7 LF長尾 恵太
Skelton Richard8 No.8高田 将侑
古川 浩太郎9 SH兵頭 水軍
染山 茂範10 SO浅川 健太
田邊 秀樹11 WTB紀伊 皓太
坂本 椋矢12 CTBジャスティン コベニー
片岡 将13 CTB柳 佳貴
小澤 和人14 WTB高木 智司
Gillies Kaka15 FB犬飼 涼二
長野 正和
郷 雄貴
廣瀬 賢一
木村 勇大
千布 亮輔
山道 翔
篠田 正悟
小沢 翔平
リザーブ 服部 光
山森 達也
鈴木 天良
宮田 脩平
菰田 好輝
東郷 幹也
下嶋 智也
村瀬 謙介
得点選手トライ (T/5点)前半:片岡、田邊、リチャード、小澤 後半:リチャード(2)、小澤、廣瀬、佐々木
ゴール (G/2点)前半:染山 後半:染山(2)、山道(2)
ペナルティゴール (PG/3点) 
ドロップゴール (DG/3点) 

鉛色の空からしずくが落ちる東京・秩父宮ラグビー場のスタンドで、「トン、トン、トン、トン…」の掛け声が響く。

自社のテレビコマーシャルでも用いられるフレーズで、日野自動車のフィフティーンを応援するのだ。

「…ヒノノニトーン!」

正門からやや遠いバックスタンドでは水色のベンチが目立つものの、メインスタンド前方では選手と同じ赤いジャージィを着た応援隊が陣取る。

 9月16日。日本最高峰のトップリーグを目指すトップチャレンジリーグは第2節を迎え、日野自動車は中部電力とぶつかる。

 今季新設のこのリーグにトップイーストから参入した日野自動車は、昨年12月11日、トップウエスト出身の中部電力と対戦している。当時のシーズン終盤戦にあったトップチャレンジ2で、各地域リーグ2位同士として激突。日野自動車が64―0で完勝していた。

そのままトップリーグ進出をかけた入替戦へ出た日野自動車は、いま、勝敗とは別な内なる基準と向き合っている。トップキュウシュウ発の中国電力を35点差で下した9月9日の開幕節にも、決して満足していない。今度のゲームでも、結果と内容をシビアに問いそうだった。


 試合が始まってからというものの、司令塔のスタンドオフに入った染山茂範はしばらく頭を悩ませていた。5―7と2点リードを許して迎えた前半の中頃、攻めても点が取れなかったのだ。

中国電力から日野自動車の「トヨタ部」に転職したばかりの26歳は、「まずは近場(密集の周り)を攻めよう」とイメージ。密集脇へ立ち並ぶフォワード陣に突っ込ませながら、大外にスペースができるのを待った。

ところが、その「近場」を攻めた後に外へ振ろうにも、相手の懸命なタックラーにその先を塞がれてしまう。ボールを持ったまま攻めあぐねた。
いくつかのスキルエラーも重なり、染山は首をひねる。

「フォワードとうまく連携が取れず、バックスのサポートも遅く…。細かいミスが出てしまってテンポのあるアタックができなかった」

 問題の根っこが「近場」のプレーにあったとするのは、1人の日本代表経験者だ。

村田毅。昨季までNECの一員としてトップリーグで戦ってきた28歳だ。己の皮膚感覚をもとに、この日の「近場」についてこう話す。

「目の前にブレイクダウン(密集)があるのに、(援護へ行かず)次のプレーの方へ行ってしまう選手がいるから、ひとつひとつがかみ合わなくなって…というところがあって」

フォワードの前5人の総称は、タイトファイブと呼ばれる。主戦場はスクラムやラインアウトとされるが、それこそ「近場」での突進やサポートでも献身とインパクトが求められる。

村田は移籍初年度となった今季初戦、タイトファイブの一角であるロックとして出場。そしてこの日は、そのひとつ後ろのブラインドサイドフランカーとして先発した。チームの攻めの構造上グラウンド中央部に立つことの多いタイトファイブの「近場」での動きについて、改めて思うところがあったという。

「役割分担上、フランカーはグラウンドの外側に入ることが多いんですけど、その引いて見る立場へ入ると、タイトファイブの運動量がまだまだ…と。自分がロックに入った時は自分で運動量を上げながら周りを鼓舞しなくちゃいけないと思いました」



 解決すべきトラブルに直面しながらも、日野自動車は応援席の期待に応えてゆく。

 21、27分には敵陣ゴール前のスクラムを押し込み、それを勝ち越し点と追加点に繋げる。前半終了直前には、7人制ニュージーランド代表でも活躍したフルバックのギリース・カカが左タッチライン際で持ち味を活かす。相手タックラーに寄りかかりながら、片手でパス。懐の広いプレーで、さらに左にいた「生産管理部」のウイング小澤和人の得点を促した。日野自動車は22―7のスコアでハーフタイムを迎えた。

 後半は、大きく揺さぶる攻めを機能させた。オープンサイドフランカーの佐々木隆道によれば、ハーフタイムにタイトファイブらの役割を改めて共有。その延長で、中部電力の防御にひずみを作った。

佐々木がインゴールを割った試合終了間際の得点場面は、その象徴だった。

グラウンド中盤で右端から左へ球を回すなか、中央あたりで村田が佐々木へパス。突破。フェーズは、敵陣22メートルエリア左端へと重なる。ここから日野自動車は右へ展開し、最後は中央付近で村田、佐々木のホットラインが向こうの防御を破った。

この後半のチーム通算9トライ目をマークし、佐々木は「外から相手のディフェンスに関する情報が入っていた。コミュニケーションのなかでこういうプレーを選択できたのは良かった」と喜んだ。

他には、改善されたラインアウトからモールという塊を作っての得点が2度あった。守っては担当レフリーとのルール解釈の祖語から反則を連発も、無失点で切り抜けた。トラックのごときモールやスクラムの推進力、切れ目のない防御も、日野自動車の打ち出す強みのひとつだ。

 ノーサイド。55―7。トップリーグで優勝経験のあるサントリーから加入して2年目の佐々木は、この80分をかように総括する。

「前半は日野自動車のアタックの形を、皆で崩してしまった。少しフォワードが、好き勝手に動いちゃったなと。後半はそこを修正して、それぞれの役割を当てはめて…。すると日野自動車のアタックができるようになった」

見守る人々を安心させながら、反省する。いまの日野自動車の、それが立ち位置だった。



「見てください、これ」

 陽が落ちた秩父宮の正門付近。村田が目を向けた先には、選手を乗せるバスがあった。

紫や水色があしらわれた車体に、オレンジ色のロゴやチーム名が大きく描かれていた。これが都内を走ればインパクトは十分だ。日野自動車に請われる村田は、そのバスを見て「どこにもない強みです」。バックアップを心強く思う。

 チームは9月24日、山口県のきらら博記念公園でトップキュウシュウのマツダに挑む。以後は東日本大震災後から復興のシンボルとして注目される釜石、前年度トップイースト1位の三菱重工相模原、トップキュウシュウ王者の九州電力、昨季までトップリーグにいたホンダと、手ごたえのあるライバルがひしめく。
 
悲願のトップリーグ昇格に向け、いま、何が必要か。

33歳とシニアの域も運動量抜群の佐々木が、こう即答する。

「フィニッシュまでの絵を理解し合って、自分たちの形をやりきること。それとコンタクトエリアでの正確性…。ですかね」

 裏を返せば、これらを今後の注目ポイントとしてゆくつもりだろう。ひとつの「近場」、ひとつのオフロードパス、ひとつのモールでひとりひとりを魅了し、会場を少しずつ真っ赤に染めたい。

【細谷監督】
前半のブレイクダウン(密集)は非常にルーズで、特に2人目の寄りが遅くてボールを絡まれる部分があった。後半はそこを修正できましたが、自陣でいらないペナルティーを犯してしまうことがありました。これを上位チームとやると失点する。課題を共有して、次のマツダ戦に挑みたいです。

【廣川主将】
やりたいことをなかなかできないところもありましたが、初戦で受けてしまったコンタクトの部分では身体が当てられたと思います。最初からやりたいプレーを思い切りできるよう、また1週間準備したいです。




【プロフィール】

Text by 向風見也 
1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライ
ターとなり、主にラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポー
ツナビ」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行
う。「現場での凝視と取材をもとに、人に嘘を伝えないようにする」を信条とす
る。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。共著に
『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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