Uniting our souls!! 「結束」

2016-2017年シーズン

その他 vs 九州電力キューデン ヴォルテクス

2017年01月15日(日)12:00 花園ラグビー場()

  • 日野自動車 RED DOLPHINS
    日野自動車 RED DOLPHINS
  • ヴォルテクス
    九州電力キューデン ヴォルテクス

:

14 トライ数2 ゴール数2 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
前半
0 トライ数0 ゴール数0 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
17 トライ数3 ゴール数1 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
後半
0 トライ数0 ゴール数0 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
RED DOLPHINS出場選手ヴォルテクス
長野 正和1 PR
崩 光瑠2 HO
村上 玲央3 PR
庄司 壽之4 LO
Joel Everson5 LO
西村 雄大6 FL
佐々木 隆道7 LF
千布 亮輔8 No.8
田川 明洋9 SH
山道 翔10 SO
篠田 正悟11 WTB
Brett Gillespie12 CTB
片岡 将13 CTB
Marc Le14 WTB
Gillies Kaka15 FB
リザーブ
得点選手トライ (T/5点)佐々木(1)篠田(1)ジョエル(1)マーク(1)
ゴール (G/2点) 
ペナルティゴール (PG/3点) 
ドロップゴール (DG/3点) 

東日本地域のトップイーストDiv.1で徐々に順位を上げていた日野自動車が、またしても新しい栄誉を掴んだ。次に繋がる、成功体験を積んだ。

2017年1月15日、大阪の東大阪市花園ラグビー場。フォワードが2トントラックのように進むモール、要所での連携攻撃、何より持ち味の組織防御で魅せる。トップキュウシュウの九州電力を、31―0とシャットアウトした。

国内最高峰トップリーグへの昇格をかけたトップチャレンジ1で、史上初の白星を掴んだのである。

 細谷直監督は言う。

「歴史に名を刻もう。それを皆の合言葉としてやってきました。ディフェンスでゼロに抑えたことは、大きな自信になります」

今季はトップイーストDiv.1を2位で通過。2番手集団のトップチャレンジ2から、トップチャレンジ1に這い上がってきた。各地域の首位3チームのひしめくトップチャレンジ1での戦績を、1勝2敗、総勝ち点5の3位で終えた。

この先も、未知のバトルを見据える。トップリーグのクラブとの入替戦だ。28日、福岡のレベルファイブスタジアムで待ち構えるのは、14位のコカ・コーラである。



対する九州電力は、4季ぶりのトップリーグ復帰を狙っていた。外国出身選手がひとりもいないなか、統制の取れた攻防でファンを魅了する。

今度のトップチャレンジ1でも1月3日、東京の秩父宮ラグビー場で活劇を演じる。帰化選手を含め海外出身者を8名並べたトップイーストDiv.1・1位の三菱重工相模原を、19―12で破った。

 決戦当日。ここまで2連敗中だった日野自動車にとっては、ラストゲームでしぶとい難敵とぶつかる格好だった。前半5分、ただただ自分たちの問題でピンチを迎える。

アウトサイドセンターの片岡将が、負傷のため退いたのだ。豊富な運動量で防御の穴を埋める29歳の主軸が、突然の交代。影響が懸念された。

しかし、それは杞憂に終わる。

片岡の代役としてグラウンドへ飛び出したのは、本来はスクラムハーフの小沢翔平だった。不慣れな職場への緊急配置に対し、「調達企画部」の27歳は再三の好ランで応える。

 トップリーグのサントリーから移籍1年目の佐々木隆道は、クラブ有数の強豪チーム出身者として規範を示してきた。ジムワークを欠かさず、試合中の有事にも動じない。この午後のアクシデントを前にしても、毅然とした態度を貫ける。

「確かに片岡はいい選手ですけど、(起こってしまったことは)しょうがない。小沢もいいディフェンダーで、自分のやるべきことがわかっている選手。2~3プレー観て、イケるなと思いました」



 日野自動車は、九州電力の勤勉さを上回らんとした。コンタクトシーンで前に出て、次のプレーエリアを探索。動き回った。

先制したのは10分だ。敵陣22メートル付近左でラインアウトの機会を得ると、首尾よく球を空中で保持。ここから周囲のフォワード陣が1人、2人と寄り集まる。立った選手を軸に固まる、モールというプレーが始まった。

 佐々木はそのフォワードの一角、オープンサイドフランカーに入っていた。モールには、あるマイナーチェンジを加えていたのだと話す。

「前がファイトできるように…」

 ラインアウトのボールを確保した選手を両脇で防護する2人、つまりはモールの「前」に入る選手が相手に倒されぬよう、それぞれの姿勢などを修正したのだ。

「前がファイト」している後ろでは、他の選手たちが次々と縦長に並び、バケツリレーのような形で最後尾の人へと楕円の宝を手渡しする。ラグビーでは、接点への横入りが許されない。そのため守る側にとって、堅いモールから球を獲るのは難しい。

じり、じりと、日野自動車は九州電力を後退させる。最後は尻尾の位置から飛び出した佐々木が、インゴールを割った。ゴール成功もあり、スコアは7―0となった。

日野自動車はさらにエンジンをふかす。防御網への果敢な仕掛けと素早いサポートを徹底しつつ、左右いっぱいに楕円球を回した。

7人制ニュージーランド代表でもあるフルバックのギリース・カカは、鋭利なステップを踏みながら向こうのひずみへ突入する。ここで複数人の相手を引きつけたら、タックルされながらボールを繋ぐ「オフロードパス」を繰り出す。

「ウチには、ギリース・カカという選手がいる」

 こう語るのは、左ウイングで先発した篠田正悟だ。身長170センチと決して大柄ではない25歳が、続く21分、貴重な追加点を奪う。

敵陣ゴール前左で大きくブレイクしたカカを、さらに左のタッチライン際から追いかける。ラストパスを受け、狭い区画を一気に突っ切る。トライ。ゴール成功と相まって、得点板は「14―0」と光る。篠田は続けた。

「そこに(マークは)集中すると予測はされたのですが、(カカは)それをどうにかしてくれる…。(ラストパスをもらって)取り切る、ということだけに集中していました」

 後半8分、モールからニュージーランド人ロックのジョエル・エバーソンが、続21分、カカのランからマレーシア出身のウイングであるマーク・リーが、それぞれ、フィニッシュする。日野自動車のペースは続く。

守りでも先手を取った。大外からせり上がったり、接点近くの人が極端に飛び出したり。防御ラインが相手にかける圧力は、バリエーションに富んだ。
 
 26―0のスコアで迎えた後半35分、グラウンド中盤。

 九州電力の猛攻を前に、日野自動車が赤いジャージィのじゅうたんを敷く。

 その真ん中あたりにいた佐々木が、強烈なタックルをぶちかます。落球を誘った。

 本人が「そんなことありましたっけ?」と忘れてしまうほど「当たり前」になりつつある貴重なワンプレーが、この午後の日野自動車を象徴していた。



 トップチャレンジ1で2位以下となった全3チームが入替戦に進むことは、あらかじめ決まっていた。それぞれの順位の上下動で変わるのは、当日の対戦カードだけ。最後の関門の先にトップリーグが待っているのは、どの位置に入っても同じである。

とはいっても、試合をするのは人間だ。トップチャレンジ1最終戦で勝った後の方が、以後の大一番への弾みがつくだろう。それだけにリーダー格の佐々木は、九州電力戦勝利の効果は大きいとつぶやく。

「より、ここから皆を頑張らせられるようになりました! きょうも意思疎通のないプレーがたくさん、見受けられた。次に勝つためには、そういうところもなくしていかないと」

 フッカーの廣川三鶴主将は「佐々木さんは、私生活を含めお手本になる人です」と実直に語り、こうも続ける。

「我々は次の試合で勝つためだけに、1月18日からシーズンを過ごしてきました。ここから僕ができるのは、技術的なことよりもマインドセットのところです」

31歳。職場では「生産管理部」に所属する。人事、工場、営業など複数のエキスパートたちの意見を取りまとめ、スムーズな生産活動を促している。ラグビー部では首脳陣と選手のパイプ役を担っているが、「普段も似たような仕事をしているので」とほほ笑む。

 カカのアシストでインゴールを割った篠田は、後半37分後にも自身2トライ目を奪っていた。こちらは「調達企画部」に所属。入替戦への意気込みを述べるなか、観客席を埋める社員の顔を想起する。

「積み上げてきたものを発揮できるようにしていきたい。周りの人からは大変だねと言われますが、それが普通になっています。むしろ、プラスですよね。我々がフルタイムで働いていないと、ここまで応援してもらえない。身体がきつい時はありますけど、もらえる財産も大きいです」

 泣いても笑っても、次戦が日野自動車にとっての今季ラストゲームとなる。

働くラグビーマンたちが紡ぐ2016年度のドラマは、どんなエピローグを迎えるのだろうか。


【細谷監督】
九州電力はワークレート(仕事量や質)の高いチーム。ただ、我々はそのワークレートの部分で上回ろうとしていた。入替戦でも今日のようにディフェンスを固めて、接点で絶対に引かない。相手より速くセットする…。それをチャレンジャーとしてやれれば勝負になるし、できなければ洗礼を浴びる。選手たちが(力を)証明するチャンスです。

【廣川主将】
結果を残せたことは会社にもいいアピールになったと思いますし、チームにとって非常に大きいものです。選手は、いい顔をしていました。ディフェンスがしっかりと機能していた。我慢して、我慢して、最後まで崩れなかった。それが一番です。入替戦では相手どうこうというより、1年間積み上げてきたものを出せるようにチームをリードしたいです。


【プロフィール】

Text by 向風見也 
1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライ
ターとなり、主にラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポー
ツナビ」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行
う。「現場での凝視と取材をもとに、人に嘘を伝えないようにする」を信条とす
る。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。共著に
『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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