Uniting our souls!! 「結束」

2016-2017年シーズン

その他 vs 三菱重工相模原 DYNABOARS

2017年01月09日(月)11:30 レベルファイブスタジアム()

  • 日野自動車 RED DOLPHINS
    日野自動車 RED DOLPHINS
  • DYNABOARS
    三菱重工相模原 DYNABOARS

:

0 トライ数0 ゴール数0 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
前半
5 トライ数1 ゴール数0 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
7 トライ数1 ゴール数1 ペナルティゴール数0 ドロップゴール数0
後半
24 トライ数3 ゴール数3 ペナルティゴール数1 ドロップゴール数0
RED DOLPHINS出場選手DYNABOARS
長野 正和1 PR佐々木 駿
崩 光瑠2 HO安江 祥光
金 光植3 PR藤田 幸仁
佐々木 隆道4 LO徳田 亮真
庄司 壽之5 LOトーマス優 デーリックデニイ
536 FLHrishikesh Pendse
西村 雄大7 LF比果 義稀
千布 亮輔8 No.8Faifile Levave
田川 明洋9 SH柴本 裕吏
山道 翔10 SOHamish Gard
篠田 正悟11 WTBRodney Davies
Brett Gillespie12 CTBニコラス ライアン
苫谷 直樹13 CTB安井 慎太郎
片岡 将14 WTB椚 露輝
Gillies Kaka15 FB大和田 祐司
植村 健太郎
廣川 三鶴
村上 玲央
土屋 眞
Everson Joel
調 建造
Tonga Mosese
小沢 翔平
リザーブ 安藤 悠稀
村上 卓史
Albert Anae
井坂 健人
中村 拓樹
西舘 健太
渡邉 夏燦
ロコツイ シュウベリ
得点選手トライ (T/5点)調(後半1)
ゴール (G/2点)調(後半1)
ペナルティゴール (PG/3点) 
ドロップゴール (DG/3点) 

 意地があった。執念があった。反骨心があった。

日野自動車はトップチャレンジ1に挑んでいた。国内最高峰トップリーグへの昇格をかけた、各地域上位陣4チームによる争いだ。

2017年1月9日、福岡はレベルファイブスタジアム。2戦目のラストワンプレー。33歳の佐々木隆道は心で誓った。

最後は止めを刺す、と。

 ハーフ線付近左。香港出身の32歳、調建造からパスをもらうと、目の前のスペースへキックを放つ。

身体をぶつけ合うフォワードの選手にあっては、珍しい選択にも映る。もっとも「高い精度で蹴れればチームにプラスになる」と、このチョイスを首脳陣にも認められていた。

 弾道を追う。捕球した相手を、掴む。

味方も束になって連なり、攻守逆転が決まった。

ここから日野自動車は、フェーズを重ねる。ゴールポストの真下へ侵入する。フォワード陣がクラッシュ、またクラッシュ。「ヒーノ! ヒーノ!」。応援団の熱気を背に受ける。

我慢比べを、制した。最後は、右側にできたスペースを調が駆ける。チーム最初のトライが決まった。

ノーサイド。スコアは7―29。

 勝ったのは、対する三菱重工相模原の方だった。



 初戦も落としていた。1月3日、東京の秩父宮ラグビー場で、トップウェストAで1位だったNTTドコモに12―68と屈した。また、2試合目で戦う三菱重工相模原には、所属するトップイーストDiv.1の対戦時にも完封負けしていた。

 日野自動車の細谷直監督は、ふたつのゲームでのフィジカルバトルに課題に覚えた。トップチャレンジ1初勝利を目指し、先発要員の入れ替えを断行した。

 普段はフォワード最後列側面のフランカーを務める佐々木は、プロ生活で初めて2列目のロックへ移動。もう一方のロックには「グローバル生産・補給物流部」で25歳の庄司壽之が、佐々木の本来の働き場であるフランカーには「人事部」で25歳の西村雄太がそれぞれ入った。

「先週は前半から、びびったようなタックルで崩れたのを目の前で観ていた…。僕の持ち味はワークレート(仕事量)。何回でも起き上がる」

 こう語るのは、初戦で後半から登場した庄司である。攻守を問わず、敵の居並ぶ最前線に身体を当てる。当て続ける。意を決して、背番号「5」のジャージィをまとった。

「そういうことをやらないと、僕は試合に出られないので」

 そんな思いを皆が共有してか、日野自動車の防御網は立ち上がりからぐいぐいとせり上がる。先発に海外出身者を6名(日野自動車は4名)も並べる三菱重工相模原は、ボール継続のプロセスなどでたまらずミスを犯す。

日野自動車は攻めに転じれば、その場の激しさと用意されたプランのカクテルで魅せる。慣れないロックに入った佐々木らが、相手防御の懐に腕や頭をねじ込んで味方の球を確保。皆でいくつか左右にボールを散らしてから、司令塔のスタンドオフに入った山道翔らが「攻め過ぎない」という思いで相手の背後へキックする。

競技の見どころのひとつであるエリア獲得合戦を優位に進めながら、激しいコンタクトでファンを魅了していたのだ。



主導権を握ったかに映る日野自動車だが、しかし、前半は無得点に終わった。痛かったシーンは、ふたつ。

ひとつめは9分頃。敵陣中盤まで攻め上がりながら、山道が芝に足を滑らせてキックミスを犯す。それを拾った三菱重工相模原は1本、2本、3本、4本とパスを繋ぎ、一気に先制点を奪ってしまった。0―5。「TS支援企画部」に在籍する26歳の司令塔は、「キックをする選択自体は間違いではないですけど…」と悔やむほかなかった。

ふたつめは、20分頃。この時は敵陣ゴール前右で、複数あるうち好きなプレーを選べるペナルティーキックを獲得。「開発管理部」の25歳である崩光瑠ゲーム主将は、スクラムをチョイスした。それまで最前列中央のフッカーとして組み合った感触から、押し切れると思ったためだ。

事実、ここでも塊は機能した。三菱重工相模原は故意に崩し、ペナルティーが下される。トップチャレンジ初先発となった日野自動車の右プロップ、金光植は、どんな横やりを入れられても姿勢を崩さなかった。

ところが、である。日野自動車は再び選んだスクラムで、ターンオーバーを喫してしまう。押されたからではない。自分たちのスクラムを組めなかったからだ。

韓国代表経験者である金の強さは、隣同士となる崩ゲーム主将も認めるところ。ただ、組み合った経験が限られるだけに、お互いの連携は発展途上だった。ここでは互いの足が絡まり、それを解く間もなく向こうの圧力にあおられた。

 佐々木は2人の資質を認めたうえで、後に「あそこが全て。押せなかった日野自動車が負けて、守り切った三菱重工相模原が勝った」と断じる。



 ぶつかり合いで好感触を得ながら、肝心のチャンスは掴めない。そんな流れは後半も続き、自陣ゴール前に閉じ込められた11、20分には痛恨の追加点を与えてしまう。

山道が「もどかしい」と感じていたこの時間帯。顔にあざを作った庄司は、どんな思いを抱えていたか。

「焦りはなかった」ものの、どこか不思議な心境だったという。

「負けている気は、しなかったです。ただ、勝手に時間が過ぎて行っていて…」

もし流れが悪い場合、打開策の方法にメンバーチェンジがある。ところが細谷監督は、切り札の調を19点差がつく20分までベンチに置いていた。

スタンドオフを先発の山道から調にスイッチするタイミングについて、指揮官は苦しい胸の内を明かした。

「山道はディフェンスでは機能していました。そして試合展開はロースコアである、と。それで後半20分まで引っ張ってしまった。結果的に負けてしまったことに対しては、上手い起用ができなかった、と、感じています…」

 調が得点板を動かしたのは、我慢比べで泣いて29失点してからだった。



 天理大から入社して2年目の庄司は、移籍1年目の佐々木が空いた時間でウェイトトレーニングに励むのを見て「これくらいやらないとだめなんだ…」と感じたという。

佐々木や崩ら他クラブからの新加入組は、1つひとつの練習で「勝つために必要なことを細かく問いかけながらやっている」ように映った。一緒にいるだけで、新たな地平に引き上げられた。一般業務の傍ら、全体練習の前後にジムワークの時間を自主的に設定。「95キロだった体重が99キロに上がって、それでも重さを感じない」。2016年度の成長を明かした。

 裏を返せば、日野自動車は伸びしろの多いクラブだ。初挑戦となるトップチャレンジ1を通じ、日本代表になったことのある佐々木は再確認した。

「経験不足というか、何というか…。このレベルでやるのが初めて、という感じがすごく、しました。

そう。日野自動車にとって目下のステージは勝負の場であり、プレッシャー下での経験値を積む貴重な場でもある。

15日、大阪の花園ラグビー場で第3戦に挑む。対峙するトップキュウシュウ1位の九州電力は、今回のコンペティションで三菱重工相模原に19―12で勝っている。タックル、エリア獲得、組織力で白星を得た。

それを知ったうえで、山道は爪痕を残したいという。

「九州電力は、僕らがやらなきゃいけないようなラグビーをしていた。そこに、勝ちたいです」

 佐々木もこうだ。

「きょうはフィジカルで戦えるようになった。そこは継続する。九州電力はいいチームですが、アタックして取り切るところを見せたいです」

 28日に参入が決まったトップリーグ下位との入替戦を含め、2016年度は残すところあと2試合。これらを、2017年度のジャンプアップへのきっかけとしたい。

【細谷監督】
前節は接点で劣勢を強いられ、完敗を喫した。その反省を踏まえ、コンタクトエリアでプレッシャーをかけようと思いました。前半は、相手陣に入ってもスコアができなかった。後半は相手のエリアマネジメントと縦への脅威でこちらがプレッシャーを感じた。また、焦りからかミスをさせられてしまった。ただ、終了間際に意地のトライを決めてくれたことは、次なる戦いに繋がります。

【廣川主将】
試合開始10分をどう戦うかにフォーカスし、1人ひとりが身体を張ってくれた。しかし、スコアを取るべきところで取れなかった。また、ハンドリングエラーを犯してしまった。小さなことが、大きな形になって返ってきました。トップチャレンジへはただ参加しに来ただけでなく、結果を残すために準備してきました。次戦は必ず勝って東京に帰りたいです。

【プロフィール】

Text by 向風見也 
1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライ
ターとなり、主にラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポー
ツナビ」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行
う。「現場での凝視と取材をもとに、人に嘘を伝えないようにする」を信条とす
る。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。共著に
『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

ページトップ