ダカールラリー

2009日野ダカールマシン

これまでにない挑戦から生み出された
新しいリトルモンスター。

海外部品・サービス部 海外サービス室 米州・オセアニアグループ係長格 中村保史氏
海外部品サービス部 企画業務室 人材開発グループ 工藤成俊氏
車両生技部 車両課 森田淳平氏

San Rafaël にて我がチームのマシンの到着を待つ日野スタッフ

入念な点検整備がベースになるからこそ、リトルモンスターは力強く大地を駆け抜ける

1/10 Valparaisoにて
フロントデフを点検・交換
いかに効率良く作業を行うか、その段取りも整備の大事な要素

リトルモンスター。ダカールラリー好きの方なら、荒野を駆け抜ける日野のマシンがそう呼ばれていることを既にご存知かもしれない。今年で18回目を数えるダカールラリー参戦において、マシントラブルによるリタイアを喫したことがない日野ダカールマシン。日野が世界に誇る耐久性を持つ日野レンジャー(HINO 500 シリーズ)をベースにしたこのマシンは、中型車でありながら大型のモンスターカミオンと熾烈な戦いを繰り広げるその勇姿から、リトルモンスターの異名でライバルたちに恐れられているのだ。

連日徹夜が続いても、疲れた表情を見せない日野スタッフたち

そのリトルモンスターの呼び名に恥じない走りをさらに強化するために、2009年ダカール用マシンには、これまでにない改造が施された。「ダカール参戦車両のレギュレーション(規定)は毎年変更され、今年は改造車部門が創設された。HINO TEAM SUGAWARAとしては新たな可能性を追求するため、ここにエントリーしない手はなかった」。2009年ダカールラリーのメカニックを担当した中村保史氏がそう言った。この取材の席には、中村氏の他に、同じく日野メカニックとして参加した工藤成俊氏と、森田淳平氏も集まってくれた。「これまでのダカールマシンと大きく違うのは、エンジンの位置。そもそも商用車であるトラックは、後ろに荷物を積載するためにエンジンは前についている。それを420mm後方へ移動し、ミッドシップ化した」と、森田氏。もちろんこれには、大きな理由がある。重量のあるエンジンを車両中心に近づけることでダカールマシンとしての前後重量バランスの最適化を図り、安定性とハンドリングを向上させるためだ。「簡単に言うと、フィーリングが良くなる」。工藤氏が言うその意味は、ドライバーの菅原照仁氏が後にテスト走行時に語った「ジャンプ後の着地や衝撃入力時には、今までのダカールマシンとまったく違う挙動となり、大きな手応えを感じた」というコメントに集約されている。しかし、エンジンを後方移動するのは、実は簡単な話ではない。森田氏は言う。「配線・配管のレイアウトはエンジン位置変更によってガラリと変わる。トランスファーなどの位置も変更し、ダカールマシン全体の安定性と姿勢の安定化を図るために、ホイールベースも延長した」。こうした大改造は、レース上での日野レンジャー(HINO 500 シリーズ)を熟知するHINO TEAM SUGAWARAのメンバーからの多くの意見とアドバイスを受け、トライ&エラーを何度となく繰り返しながら仕上げられていった。この2009年ダカールマシンは、エンジン位置変更の他に、空力性能を向上させるために、キャビンとリアボディの間にできる空気の溜まりや、後方の風の巻き込みを抑制。さらに、フロントパネル、バックゲートを無くし大幅に軽量化するなど、様々なアイディアが盛り込まれた。

1/10 Valparaisoにて 補強プレートを限られた材料で製作

結果として18年連続完走という偉業を果たしたHINO TEAM SUGAWARA。その実際のレースでのリトルモンスターは、改造により引き出されたポテンシャルをどう発揮したのだろうか。「砂漠の走破性が特に良かった。重量も含めマッチしている。砂漠が多いと日野車は強いのではないかと思う(中村氏)」。「トータルバランスはとても良いので、もっと細かいところを今後つめていけばより向上するはず(工藤氏)」。「現場で初めて気づいたことも多かった。だからこそ、次に何をすればいいのかが分かった(森田氏)」。そう語ってくれた3人の目が輝いているのがとても印象的であった。車両改造に向けられた情熱とチャレンジ精神は、マシンのポテンシャルを上げるだけにとどまらず、若い日野スタッフのモチベーションを確実に向上させている。ダカールラリーに日野が参戦し続ける理由がよく理解できた取材の席であった。

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