ダカールラリー

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2014年2月25日

選手たちが振り返るダカールラリー2014

―日野チームスガワラ、インタビュー特集―
 

 今年も南米大陸で迫力ある戦いが展開された、ダカールラリー2014。日野チームスガワラは、自慢のチームワークで世界のライバルトラックと戦い、排気量10リッター未満クラスで5連覇するとともに、初参戦以来連続23回目の完走も成し遂げました。日本への帰国後、菅原義正さんと菅原照仁さんの両ドライバー、およびメカニックの皆さんにインタビューを行い、あらためて熱戦の様子について語っていただきました。


クラス首位を独走する日野レンジャー2号車

 

●菅原義正・照仁ドライバーへのインタビュー

 

日野レンジャーのポテンシャル向上に手応え


― はじめに、2014年のレースの印象をお願いします。

菅原照仁さん(以下、照仁): 僕の2号車は2012年大会から始まった3年計画の集大成の年を迎え、エンジンの馬力、トルクともにアップし速く走れるマシンに仕上がりました。“こんな砂丘、上れるわけないだろう”とか“こんな坂、下りるのは無理”と思うような派手なコースも余裕を持って走れました。アフリカでは道なき道を一日中走っていましたが、今回はそれに近い所があって、参加したドライバーたちはここ数年で一番難しいと話していました。 でも、厳しいコースの中で余裕を持って走れたのは、僕たちの実力が十分発揮できたということ。大きなトラブルもなく、充実した大会でした。1号車に搭載したA09Cエンジンも快調で、来年以降はもっと期待が持てそうです。

菅原義正さん(以下、義正): 1号車のエンジンパワーははっきり感じました。ただ、完成したばかりだったので、もう少し熟成する時間が欲しかったというのが正直なところです。クルマというのは、バランスが大切。いくら心臓が強くても、赤ちゃんの足では速く進めませんよね。クルマも同じで、足回りに関してはドライバーが毎日メカニックに細かい注文を出しながら改良していきました。日野のメカニックのみなさんが不眠不休でがんばってくれたおかげで、満足のいく結果につながりました。


明け方まで行われた車両整備

― 今回もタフなレースでしたね。

義正: 全部門の完走率は47%。ここ数年は、約70台の出場車の内、リタイアは10台ちょっと。今回は20台を超えました。この数字からも、厳しさがお分かりいただけると思います。トラック部門の場合、時速140キロを超えてはいけないのですが、ストレートなコースではもっと速く走れるポテンシャルがあるだけに、少々欲求不満気味になる時もありました。今回は日野の本社のエンジン設計部からエンジニアが同行し、エンジンコンピューターのチューニングをつねに実施。休息日には、日本から来た日野の開発部門のエンジニアたちが現場やライバルを視察してきました。こうした行動は財産になり、今後の市販車づくりに活かされると思います。


選手たちを苦しめた広大な南米の大地

レース中はレーシングスーツがパジャマ代わり


― 目標であったワン・ツー・フィニッシュも果たしました。

義正: 去年はずっと3位で走っていたのに、僕の不注意で最終日になって54秒差で4位に落ちてしまった。だから今年はレース中つねに3位のマシンをマーク。その結果、3位に10時間以上の差をつけてゴールし、去年の54秒差を10時間の貯金にしてリベンジしました。私たちは2台しか出場していないのに、ワン・ツー・フィニッシュを達成したこのチーム力は本当に誇れます。

― 南米が舞台になって6年目になりますが、現地ではすっかり定着したのでしょうか?

照仁: 選手は南米出身者が多いし、応援する人も楽しみ方を知っています。

義正: 家族連れが多いのも特徴ですね。山の中にキャンピングカーを止めて、みんなで朝から晩まで観戦しています。日野のトラックは現地で数多く見かけますが、ダカールラリーの影響も大きいと思います。


熱狂的な応援を送る地元住民

― レース中、食事はどのようにとられていましたか?

照仁: 基本的に朝のスタート前はパンやフルーツ、ジュースなどで、昼は移動区間のリエゾンでお菓子や軽食をとったりする程度。競技区間であるSSにおいては、食事はもちろんなし。ゴール後はケータリングのレストランに行く選手もいますが、僕たちはスタッフがご飯を炊いて到着を待ってくれています。レース中は“日本に帰ったらおいしいものを食べたい”、とよく思っていました(笑)。

― お風呂やシャワーなどは、どうされていたのでしょう。

照仁: 夜になると急速に気温が下がるので、僕の場合はゴールしたら早めにシャワーを浴びていました。キャンプ地によっては水しか出ないところもありますが、貯水タンクに日中太陽光が当たっているのでお湯になっていますね。

義正: 私は彼より何時間か遅れて到着するので、その分早く寝なくてはいけません。だからシャワーも浴びず、レース中はレーシングスーツがパジャマ代わり。1,500人もの選手の中で、これほどずっとレーシングスーツを着ていた人間はいなかったのでは(笑)。スタッフはウエスでおしぼりをつくり、ゴール後に飲み物と一緒に渡してくれました。こんなチームは他になく、日本のチームらしい“おもてなし”は、とてもうれしかったですね。


日本の缶詰を食べながら一息つく照仁さん

人材育成に力を入れながら、さらに上位へ


― では、今後の抱負を聞かせてください。

義正: ダカールラリーに参戦しているから日野に入社した、というメカニックはたくさんいます。彼らは努力してHS-1(日野のサービスメカニック資格1級)を取って応募してくる。単にレースをするだけでなく、そうした夢を持つ人材の育成も大事ですね。また時間はかかりますが、次代を担うドライバーも育てていきたいです。

照仁: 僕は自分のためとか、称賛されたいという思いがあったらレースには参加しません。たくさんの人の協力と応援があってこそ、レースができる。感謝の気持ちを忘れずに、また来年も挑戦し総合順位のトップ10入りを目指します。


次回の戦いに向けて抱負を語る菅原義正さん(左)と照仁さん(右)親子

 

●メカニックへのインタビュー

 

舞台は世界へ。販売会社から選ばれたメカニックたち


日野ブランドを背負うメカニック

 レースで確実に結果を残すこと。それは、ドライバー・ナビゲーターの活躍に加え、メカニックのサポートがあるからこそです。全国販売会社から選抜され、完走を支えたメカニックたちに、今大会について振り返ってもらいました。

 

 

メカニックリーダー 鈴木誠一(すずき せいいち)  日本レーシングマネージメント株式会社 所属

1号車はエンジンがパワーアップして重量が増えた分、足回りのセッティングには苦労しました。メカニックリーダーとして心がけたのは、短時間でその人の得意分野を引き出すこと。効率良く仕事を行うため、メカニックの技術を見極め最適なポジションに配置していきました。ダカールラリーを目指すメカニックの皆さんは、映像を見て単に凄いと思うだけでなく、“あの速度で走ったら、どこに負担がかかるだろう”というように興味深く観察してみてください。

 

メカニックサブリーダー 末永健司(すえなが たけし)  日野自動車株式会社 車両生技部

ゴールセレモニーは最も印象的でした。みんなで乗ったルーフ上からの光景は一生忘れないでしょう。チームをまとめるために、車両製作時から意識して声を出し合い、コミュニケーションを図っていました。販売会社のメカニックと組むことで刺激を受け、特に作業の速さと正確さは見習わなければなりません。今回の経験は、できるだけ多くの同僚や後輩たちに伝えたいですね。特にラリー車両での失敗談は、今後の車両製作に直ぐに活かします。

 

田村博明(たむら ひろあき)  東北海道日野自動車株式会社 帯広支店

最終ステージでレースを見て、その迫力はインパクトありました。一番辛かったことは睡眠です。深夜整備が多く、移動時の車の中ではつねにウトウト。菅原さんは、ピリピリした雰囲気を和ませてくださいました。私も自分の子供たちと、同じ世界で同じ夢に向かう菅原親子のような関係を築きたいですね。整備未経験で入社し、今回参加できたのは自分の努力以上に、同僚や上司の指導、理解があったおかげ。レースは生涯一の勉強になりましたし、この経験を社内で活かし伝えていきます。

 

瀬沼礼代(せぬま のりしろ)  横浜日野自動車株式会社 瀬谷支店

ポディウム(表彰台)に到着した時の大きな歓声は、今でもよく覚えています。レース中苦労したのは、粉状の砂。砂地のため、普通にジャッキアップしたのでは傾きますので、つねに注意して作業しました。義正さんの印象は、レースの厳しさを前面に出す方。一方照仁さんは、沈着冷静で勝負どきには一気に攻める方でした。選考試験に挑まれる皆さんは、環境の変化に対応できるかが重要。極限状態でも普段通り実力が発揮できれば、結果はついてきます。

 

富家忠彦(ふけ ただひこ)  滋賀日野自動車株式会社 彦根支店

毎日が印象的でしたが、一番はスタートとゴールの人の多さ。南米での注目度の高さには驚きました。苦労した思い出は、本当に見落としややり忘れがないか、絶対に大丈夫だと思うまでの緊張した時間です。ゴール後には、長期間留守を受け入れてくれた会社や家族に感謝の気持ちを言葉で伝えました。レースを通じ、点検の重要性を再認識でき、初心に戻れたのは良い経験でした。レースは厳しい環境ですが、自分の力を試すには絶好の場所です。

 


メカニックの主戦場となるビバークにひしめくライバルたち