日野チームスガワラが、ダカールラリー2013「クラス4連覇」を報告

2013年2月27日

"リトルモンスター"日野レンジャーの激戦振り返り、さらなる飛躍誓う

ダカールラリー2013で「トラック部門・排気量10リッター未満クラス4連覇」と、1991年に参戦して以来の「22回連続完走」という快挙を成し遂げた日野チームスガワラの報告会が、2月25日、日野自動車本社1号館大ホールで開催された。報告会には、日野チームスガワラのチーム代表兼1号車ドライバーの菅原義正、ナビゲーターの羽村勝美、2号車ドライバーの菅原照仁、ナビゲーターの杉浦博之、メカニックの鈴木誠一、浦辺満広(香川日野自動車)、菊池孝泰(北海道日野自動車)、小磯武士(横浜日野自動車)、酒井芳明(徳島日野自動車)、日野自動車からは本年初めて現地でチームを応援した岡本一雄会長が出席した。

まず岡本会長がチームの栄光を称え、協賛企業などからいただいたこれまでの支援に対して感謝を述べた後、初めて現地で目の当たりにしたダカールラリーの感想や、今後に向けた熱い期待を表明。続いて、菅原照仁が2013年大会のコースの特徴や日野チームスガワラの戦いぶりを解説、報告した。続いて、2回目の参戦となった香川日野の浦辺満広がメカニックを代表してコメント。

最後に、自身の大会連続出場記録を31回に更新した“ダカールの鉄人”菅原義正が、現地でのラリーの盛り上がりの様子を交えながら、2013年大会で初めて電子制御式エンジンンを搭載した1号車の評価や今大会で得られた収穫、さらに来年以降のレースに向けた抱負と決意を述べ、報告会を終了した。 会場には、昼休みを利用して日野の役員や社員、総勢約200人が出席。日野チームスガワラの奮闘の報告と今後に向けた決意表明に対し、祝福と励ましの惜しみない拍手を送っていた。また、日野チームスガワラの16日間の闘いをまとめた映像※も上映され、出席者は、厳しい条件の下、大排気量車の中で奮闘する“リトルモンスター”日野レンジャーと日野チームスガワラを追いかけた迫力あるシーンに見入っていた。

以下、報告会でいただいた各氏からのご挨拶の一部をご紹介する。

※映像は、日野自動車のウェブサイト(https://www.hino.co.jp/corp/dakar/)でご覧いただけます。

日野自動車・岡本会長
“鉄人レース”実感。
もっといい車を作り、総合上位狙いたい

日野がダカールラリーを22年間も続けて来られたのは、大変素晴らしいことだと思う。チームスガワラや協賛いただいている企業の皆さんのお陰であり、改めて感謝したい。勿論、販売会社から派遣していただくメカニックの力や日野社員の盛り上がりも大事だ。今回初めて現地でダカールラリーを応援させてもらったが、自分がこれまで長年関わってきたモータースポーツとは、かなり様子が異なっていた。クローズドの場所で、お金を払った人だけが観戦できるモータースポーツと異なり、ダカールラリーはオープンな場所で、例えば大統領府の前で表彰式を行うなど、これまで経験したことのない世界であり、一般の人達がたくさん集まって来て、アットホームな雰囲気の中で、大変盛り上がりのあるイベントだった。

表彰式では、特別にナビゲーター用の助手席に座らせてもらい、表彰台に立たせてもらったが、過酷な砂漠のレースを完走した者だけが称えられる、まさに“鉄人レース”だということを実感した。日野は、この競技ではかなりリスペクトされているということも聞いたが、やはりレースである以上、勝ちたい。排気量10リッター未満クラスという、特別なクラスの中だけで満足することなく、菅原さん達の努力に報いるためにも皆で一生懸命知恵を出して、総合でトップに伍することのできる様な、「もっともっといい車を作っていきたい」と思った。

菅原照仁
スプリントレース化するダカールラリー。
新型車の性能に確かな手ごたえ

2013年のダカールは、ペルーのリマをスタートし、昨年初めて走ったアタカマ砂漠の難所を抜け、6000メートル級のアンデス山脈を越えてアルゼンチンに入り、再びアンデス山脈を越えてチリに入り、サンティアゴにゴールする全長約8000キロメートルのコースで、16日間に亘って行われた。

このうちの競技区間は例年よりさらに短く3000キロメートルちょっとで、近年ダカールラリーが、従来の冒険型から世界が注目する最も過酷なスプリントレースへと変化していることを象徴するコースだった。日野チームスガワラの2台は、総合では19位、31位とこれまでにない低位置に留まったが、これは2009年にダカールラリーが南米に舞台を移して以降5年目となり、新たに参戦した競合メーカーやドライバー、メカニックが、チームとして熟成され、完成度が高くなってきた結果ともいえる。トラックの完走率が高まり、今年は約80%だったことでもわかる。

日野チームスガワラとしても、2012年から3年計画で新型レース車の開発に着手しており、2年目にあたる今年は日野として初めて電子制御式エンジンを1号車に搭載するなど全面的な改良を加え、レースに臨んだ。結果として電子制御による燃料や埃や振動に対する性能面では全く問題なく、懸念は払拭できたと思っている。

一方で、水温上昇というトラブルがあり、あれこれと対策を試みたが、最終的にはラジエーターを交換して解決するという大変単純なトラブルだったことが判明。その他は、2014年大会に向けて、非常に良いデータ収集ができたと思っている。チームとしても、総合上位を意識したレース車の開発を目指しており、ここ2~3年の大会でそれが見えるようになってきたところなので、引き続きご支援をお願いしたい。

香川日野・浦辺満広
家族や仲間の励ましと
ホームページの応援メッセージに感謝

2009年以来、2回目の参戦ということになる。前回は南米開催初年度ということもあり、車のトラブルもありで、バタバタしているうちに終わってしまった感じで、もう一度挑戦してみたいという気持ちがあったが、今回は、会社から声を掛けてもらい、家族からも後押しされて、メカニックリーダーとしての出場となった。4年前と比べると、トラックのリタイア率が大きく下がり各チームも南米での戦いに慣れて来たこと、サポートチームもキャンピングカーを持ち込んだり、主催者側もトイレや食事の面ではずいぶんと改善を行い、その分、競技や整備に集中することが出来るようになるなど、大きく変わったという印象を受けた。一方、現地の皆さんの沿道からの声援や熱狂ぶり、盛り上がりは全く変わっていないと感じた。

レースに関しては、1号車がオーバーヒートに悩まされ、2号車がパンクなどのトラブルに見舞われ、持ち時間が限られた中で瞬時の判断が求められる状況が続き、移動中のサポートカーの中で仮眠をとるなどプレッシャーもあったが、そんな時、家族や会社の仲間の励まし、ホームページ上にいただいた応援メッセージが力になり、完走できたと感謝している。帰国後に出社したら、自分の名前と顔写真が入った横断幕が掲げてあってびっくりしたが、それを見たお客様からダカールの話が聞きたいと声を掛けていただいたり、車の整備に来て欲しいと呼ばれたりすることもある。この経験を、今後会社やお客様の間に展開し、皆さんに恩返ししていきたい。

菅原義正
「成功の反対は失敗ではなく、何もしないこと」。
だから、挑戦続ける

2013年大会も現地では、日野関係者の皆様に大変お世話になった。感謝申し上げたい。ペルーでは、日野車の販売代理店であるトヨタペルーのディーラーであるグルーポ・パナ社の営業所の一角に車両整備のためのブースを作って提供していただいた。ブースの内部にも装飾を凝らし、表通りに面したショールームにもサインを出して応援してくれた。また、12月27日には、同社のショールームで、展示車を全て撤去して、参戦の記者発表を行った。実はこの時点ではレース車を輸送する主催者の船がペルーに到着しておらず、ペルーに陸揚げされたレーストラックは、日本から直送した日野レンジャーだけということもあり、現地のメディアが多数集まってくれた。

グルーポ・パナ社に設営された整備ブース
グルーポ・パナ社に設営された整備ブース
多数の現地メディアが集まった記者会見
多数の現地メディアが集まった記者会見
ウマラ大統領夫妻とテープカット
ウマラ大統領夫妻とテープカット

1月5日のスタートセレモニーでは、ウマラ大統領ご夫妻のテープカットに、ドライバーでは我々二人だけが招かれるという栄誉にも浴した。この模様は、TVで同時中継され、全国に流れたようだった。南北アメリカ大陸を結ぶパン・アメリカン・ハイウェイと呼ばれる道路の沿道には、「HINO 500 Series(日野レンジャーの輸出名)、ただいまダカールラリーに挑戦中」という大看板が建てられており、後から聞くと、この大看板は全部で3箇所にあったようだが、これを遠くから見つけた時は、自分の車が向かって来るようで、さすがにドキッとしたが、それだけ、現地ではダカールラリーへの注目が高く、日野車の優秀さを宣伝するために使っていただいているということであり、うれしかった。この大看板は競技区間を結ぶ連絡道路沿いにあったので、恐らく全競技車両が、これを見ながら通過して行ったと思う。

協賛会社の皆さんに謝らなければならないことが一つあった。それは、私の運転する1号車が、競合車と接触して、幌の一部を破損したため、整備時に地面に敷くシートで応急処置として代用した結果、スポンサー名が片側は無くなってしまった。完走するためには止むを得なかった。

レース車両に関しては、既にお伝えしてあるとおり、より広いエンジン回転域で高トルクを発生する電子制御式エンジンンを1号車に初めて搭載したのをはじめ、足回りは、最低地上高を確保し走破性を向上するためにハブリダクション付きの新アクスルを採用。

このアクスルにはディスクブレーキを装着し制動力・操作性の向上を図った。今までのパワーラインとは異なるシステムを持つ車両は、レース本番で予想できないトラブルが発生するリスクもあるが、我々は更なる高みをめざすためにも果敢に挑戦することを選んだ。その結果、エンジンは、電子制御のお陰で中速域でもトルクが体感できるようになり、大変運転しやすかった。また、これまでのワイヤ式から電子式になったアクセルペダルも良かった。今回、いい所がいっぱい出てきたので、これを煮詰めて次回の2号車とする予定。レース中にタイロッドが曲がってしまうというトラブルもあったが、このお陰で弱点が発見でき、来年の改善点が明らかになった。これが、「挑戦」を続けることの意味だと思う。ある人の言葉だが、「成功の反対は失敗ではなく、何もしないことだ」という。

岡本会長からも、「総合上位を狙える車を」と発破をかけていただいたので、私の乗る1号車は来年も、もっと改造することになると思う。詳細はこれからなので、「乞うご期待」とだけ申し上げておきたい。

日野自動車のウェブサイトに、連日のレースの様子を詳細に伝える「デイリーレースレポート」を掲載しています。
URL: https://www.hino.co.jp/corp/dakar/

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