環境報告

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特集:自然との「共生」を目指して~生物多様性に配慮した日野自動車の取り組み~

1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境会議(地球サミット)において、地球温暖化防止と並ぶ世界的な条約として『生物多様性条約』が採択されました。
しかしながら、「生物多様性」に関する取り組みは効果を実感することが難しいこともあり、その重要性に対する認識は十分に広まってきているとは言えません。国際自然保護連合(IUCN)によると、今現在も多くの野生動植物が地球上から絶滅しており、そのスピードは7分に1種が絶滅しているとまで言われています。

人類は、自然から計り知れない恩恵を受けながら生活しています。
この恩恵を次の世代へ継続させ、我々の私生活や企業生活が50年先、100年先も存続していくためにも、「生物多様性」へのさらなる配慮が必要です。

日野自動車では、5ヶ年中期計画である『2020年 環境取り組みプラン』において個別目標を掲げており、自然との「共生」をキーワードに、今後もいっそうの取り組み強化を図ってまいります。

「生物多様性」課題明確化に向けた事業活動との関係性整理

「生物多様性」とは、様々な動植物の個性や、それらが生息することで直接的、間接的に繋がる生命の環を意味します。
地球温暖化や大気や水の汚染など、各企業の事業が「生物多様性」に与える影響は小さくないと言われており、各企業には、影響軽減に向けて取り組むことが求められます。

日野自動車は、「生物多様性」に関する課題を明確化するにあたり、事業活動がどのような影響を与えているのかについて分析することから始めました。
以下は、『企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)』が定めた「企業と生物多様性の関係性マップ」を参考に、製品ライフサイクル各段階における「恩恵」と「影響」を整理した図です。

企業と生物多様性の関係性マップ 企業と生物多様性の関係性マップ

このように、日野自動車は事業を行う中で、製品ライフサイクル全体で自然の「恩恵」を受けており、また同時に「影響」を与えています。
これらによる「生物多様性」への環境負荷を少しでも低減すること、そして事業を行う中で周辺生態系を害さないことが、今後の取り組みにおける重要なポイントとなります。

以下がその他の主な取り組み内容も含めて、日野自動車が今後注力していくポイントをまとめた図です。

日野自動車が今後注力していくポイント

「生物多様性」に配慮した取り組みの方向性

日野自動車は、製品ライフサイクル全体で「生物多様性」に配慮した取り組みを推進すべく、具体的方針を定めた「生物多様性ガイドライン」を策定しました。
そのガイドラインの中で特に注力すべき課題を、以下のような「生物多様性取り組み指針」としてまとめております。

生物多様性取り組み指針

  • 製品環境技術の更なる追及
  • 地域水資源への配慮
  • 地道な環境取り組み(CO2削減、省資源など)
    推進による生物多様性への貢献
  • 社会との連携・協力
  • 積極的な情報開示

日野自動車では、関係者間で議論を重ね、これらの指針の中でも特に「製品環境技術の更なる追及」、「地域水資源への配慮」を今後の重点課題として抽出しました。

今後は、環境配慮型製品の開発や、化学物質使用量の低減、汚水の発生を抑える工程設計、地道な節水活動などを中心に、製品ライフサイクル全体で取り組みを推進していきます。

事業所周辺の豊かな生態系を守るために

日野自動車は2015年に、各事業所周辺にて一斉に動植物調査を行いました。
その結果、「ニホンスッポン」、「トラツグミ」、「ニイニイゼミ」、「トウキョウダルマ」など、レッドリストに掲載されている希少種が数多く確認されました。

これらは事業所周辺に豊かな自然が残っている証拠であり、今後「共生」していくべき自然に他なりません。
今後、事業活動を継続する中で、これら各事業所周辺の動植物への影響を少しでも軽減しながら、企業としても成長を続け、自然と「共生」する企業を目指してまいります。

Voice

松本 郁子様
公益財団法人 地球環境戦略研究機関 自然資源・生態系サービス領域 研究員 松本 郁子様

生物多様性の取り組みとは、従来の環境への取り組みとそれほどかけ離れたものではありません。
自然資本を守り、自然から受ける恩恵を保持する方法を考えることが、生物多様性の保全に繋がります。そこで最も重要なことは、自社の事業活動が自然に対して持つ正と負の影響それぞれを、製品のライフサイクル全てにわたって包括的に把握した上で、取り組むポイントを明確にすることです

日野自動車の生物多様性に関するガイドラインは、そのような製品のライフサイクルにわたる影響の把握と、自社の事業にとって取り組むポイントの分析がきちんと行われ、そのポイントに関わる取り組み強化の方針が打ち出されていると感じます。また、生物多様性と自社の事業との関係を丁寧に説明するなど社員の理解を促すような内容となっており、社員教育も含め、概念を現場レベルに落としこむための工夫がなされているという印象を受けました。今後現場レベルでのより良い取り組みを進めていくための土台となり得ると思います。
さらに今後は表彰などのインセンティブを設ければ、取り組みの活性化や発展に繋げることもできるでしょう。さらに、モニタリング評価などを通じて吸い上げた現場の方々の声を取り組み方針に反映する仕組みを構築することで、ボトムアップの取り組みへと変わり、改善の好循環ができると考えます。

最後に、ガイドラインや生物多様性取り組み指針の中でも謳われていますが、生物多様性に関しても、情報公開と公開した情報に基づくステークホルダーとの意見交換は重要です。今後も丁寧なステークホルダーとのコミュニケーションを継続していただければ、ステークホルダーのニーズや関心などを活かした取り組みの検討が可能になると思います。
今後は是非このような取り組みを進化させ続けてほしいと思います。